3-5 宝箱の狂詩曲《ラプソディ》
「ピア、あなたすごいわね!」
「ひぐ、ひぐ……ご、ごめんなさい……」
「な、なんで謝るの!?」
スライムをあっさりと倒したピアを誉めるクゥだったが、ピアは泣きながら謝るため困惑していた。。
「だ、だって……あ、あたし……うわあぁぁぁぁん!!」
ピアはどういうわけかまた泣き出してしまい、それにはクゥはどうしたしたらいいのかわからず、あたふたしてしまう。
「ピアちゃん、悲しい時は歌うといいじゃん♪」
「橙、黙って」
「ええー」
ピアを励まそうとギターを鳴らす橙であったが、クゥに一蹴されてしまう。
《でも、どうしたんだろう?》
《うーん、どうだろう。でも、思い当たる理由はなんとなくだけどわかるかな。ま、今は気にしても仕方ないよ》
《そうなの?》
ピアが泣いていた理由は気になるものの、とりあえずはクゥやアーシェがピアを泣き止ませ、ダンジョンを先へと進むことにする。
「白はまーじめな魔法使い♪ 光の魔法でピッカピカ♪ 赤はねっけつ勇者さーまー♪ 炎の剣はメーラメラ♪」
そしてまた歌い始める橙。歌いながら、黒に言われた『フィオのうた』に新しく書き加える歌詞を考えていた。
「うーん、黒の部分をどうするかが問題だなあ」
「橙、真面目にやってよ」
「オイラはいつでも真面目じゃん♪ オイラは吟遊詩人。真面目な話、オイラは歌うことが仕事じゃんよ♪」
「だからって」
「それより敵じゃん」
歌いながらもちゃんと【魔力感知】は行っており、しっかりと次の敵の接近を感じ取っていた。
「って、何もいないじゃない」
「お、宝箱だ!」
通路を抜けると広いフロアに出る。魔物の姿はなく、部屋の四隅には立派な石像が置かれ、真ん中には宝箱が出現していた。
これが魔物同様に自動生成されるアイテムである。箱の中身はこのレベルのダンジョンだと回復薬や弱めの武具などであるため慣れた者なら無視するのだが、初めて宝箱を見つけたアルバートはテンションが上がったようで思わず駆け寄っていく。
「はい、ストップじゃん」
「フィオさん?」
そんなアルバートを橙は制止させる。
「あんなあからさまに怪しい宝箱はミミックとかの可能性もあるから、慎重に動くじゃんよ」
「じゃあ、あれはミミック?」
「いいや、あれはただの宝箱じゃん」
【ミミック】という宝箱に擬態する魔物がいる。宝箱の振りをして開けた冒険者を食い殺す非常に厄介な魔物だ。
だが、ミミックはこの初心者用のダンジョンには出現しない。
しかし、擬態する魔物は何もミミックだけではない。
「本命は……あっちじゃん!」
部屋の四隅に配置された羽の生えた魔獣の石像。それらは部屋の中心の宝箱に冒険者が集まった時に動き出す石像に擬態した魔物【ガーゴイル】であった。
ガーゴイルはフィオたちが宝箱に注目しているのを確認すると一斉に動き出す。
「ガーゴイル!?」
このガーゴイルという魔物がおそらくはこの初心者用ダンジョンではボスを除けば一番強い魔物であろう。
「大地の歌・巨人の盾」
ガーゴイルが一斉に放った火球に対し、橙はとっさに【大地の歌・巨人の盾】を発動させる。
吟遊詩人である橙は呪文詠唱の代わりに音楽を奏でることで魔法を発動でき、彼のかき鳴らすギターの音色に魔力が宿り、大地を動かす。
一行の四方には一瞬で巨大な壁がせり上がり、ガーゴイルの火球を完全に防ぎきる。
「す、すごい……」
「んじゃ、オイラのサービスはここまでじゃん。そうだなあ……とりあえずガーゴイルは四匹いるから一人一匹倒してみるじゃん」
「ガ、ガーゴイルかあ……」
「おっしゃ! やってやるぞ!」
「……実戦か」
「わ、私一人で出来るかなあ」
「あ、ピアちゃんはさっきスライム倒したから今回はお休みね。もし、みんなが危なくなったら、その時は助けてあげるといいじゃん♪」
「う、うん……」
これはあくまで新人研修。橙はそれ以上の手助けをするつもりはなく、ガーゴイルの相手をピア以外の四人に任せることにする。
橙は先ほど防御用に作った壁の上へと登り、高い所からそれぞれを俯瞰しながら戦闘を見守ることにする。
《だ、橙……あまり高い所には……の、登らないでいただきたいのですが》
《あれ? 青はもしかして》
《こ、高所恐怖症ですが何か?》
《ううん、でもこれも意外な弱点だなあ》
「このくらいの高さで情けないじゃん」
「あ、あなたに言われたくはありません白に照明魔法を解除してもらいますよ?」
「わ、わかったじゃんよ!」
高所恐怖症の青と暗所恐怖症橙。二人のフィオが言い
争いをしている間にもガーゴイルとの戦闘は始まっていた。
「さーて……どこから見ようかなー」




