表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/72

3-3 ダンジョンの行進曲《マーチ》

「それじゃあ、あとよろしく」


 王都イスティルを出て数時間進んだ西の丘陵地帯。そこにイスティル王国騎士団御用達の初心者用ダンジョンが存在していた。

 シルフィスは今回の参加者を例のダンジョンへと案内すると、他に用事があるらしくさっさと帰ってしまう。


「あー、シルフィスさん、もう帰っちゃったじゃんよ」

(ダイダイ)、入らないの?」

「あー……んじゃ、行きますか!」


 クゥやほか騎士団の新人たちもダンジョンに足を踏み入れるのを確認すると、(ダイダイ)も早速ダンジョンへと入っていく。


 なお、ダンジョンと言っても様々な種類がある。自然の洞窟、人が作った遺跡、魔王が生み出した脅威。

 そして、これは女神が人間に試練を与えるために作ったもので、一定間隔で魔物やアイテムなどが自動生成され、中の魔物も外には絶対に出られないという特別仕様なダンジョンであった。

 中でもこのダンジョンはレベルの低い者に合わせて調整された初心者用のダンジョンであり、ある程度のランクの魔物やアイテムしか生成されないというものである。


 つまり、騎士団の新人たちにはうってつけのものでこのダンジョンで新人研修を行うのがイスティル騎士団の毎年の恒例行事となっていた。


《へえ、このダンジョンってハルコさんが作ったやつなんだ》

《たぶん……そう……だと思いますわね》

《たぶん?》

《いえ、このダンジョンは私たちが生まれるずっと前からあるらしいですからね。ハルコさんも自分がどこにどのダンジョンを作ったかなんていちいち覚えていないらしいですし》

《あー、確かにハルコさんなら覚えなさそうだもんねー。ん? あれ? どしたの、(ダイダイ)?》


 ダンジョンについて話していたフィオたちであったが、その最中、(クロ)(ダイダイ)の様子がおかしいことに気付く。

 ダンジョンに入った(ダイダイ)だったが、数歩進んだところで一歩も動かなくなっていたのである。


「く……」

《く?》

「暗いじゃんよー!」

《えっ!?》


 ダンジョンに入ったばかりだというのに(ダイダイ)は震えてしまっていた。


《まさか(ダイダイ)って》

《せや、あいつは暗所恐怖症。つまり暗いところが苦手なんや》

《ええーっ!? それなのになんでダンジョンの引率役なんて引き受けたの!?》


 暗さに怯え、一歩も動こうとしない(ダイダイ)。引率役がこれではクゥを始め、他のメンバーも呆れたり心配したり様々な反応を見せる。

 

《はあ……仕方ないなあ》


 (シロ)は今回は(ダイダイ)に任せるつもりであり表に出るつもりはなかったが、思わず彼と交代することにし、橙色の髪の少年は一瞬で白色の髪の少年へと変化する。


「イルミネイト」


 そして(シロ)はすぐさま照明魔法を唱え、ダンジョンを明るい光で照らしていく。


「あっ、明るくなった!」

「おお! こりゃあ松明要らずだな」

「あ、(シロ)さん」

「クゥ、ごめんね。(ダイダイ)がみっともない姿を見せて」

「ねえ、(ダイダイ)じゃなく(シロ)さんが代わりに引率役やってよ」

「うーん、でもこれは(ダイダイ)が頼まれた仕事だから。それじゃあまたね」


 やはりクゥの態度は(ダイダイ)の時とは態度が違っていた。

 だが、(シロ)も今日はこれ以上は手を貸すつもりがなく、クゥの頼みを申し訳なさそうに断って(ダイダイ)へと身体の所有権を戻す。


「さあ、張り切っていくじゃん♪」

「…………」


 (シロ)の魔法で辺りが明るくなった途端、(ダイダイ)のテンションはあっさりと回復する。その様子をクゥはジト目で見ているのであった。


(ダイダイ)ちゃんもしっかりしてほしいよね~》

《しかし、(ダイダイ)が暗いところが苦手なんて意外だね。(アカ)の犬嫌いも相当だったけど》

《あ、あたしのことはいいでしょ》

《まあ、みんな一つ二つ弱点くらいはありますわよ》

()は何が苦手なの?》

《そんなの言うわけないでしょう!》

《……()はおとこのひとがにがてなんだよ》

(ミドリ)、バラさないでもらえます!?》

《あれ? でも男の(シロ)たちは平気なんだね》

《そりゃあ……もう何百年も一緒にいますし、何より自分自身みたいなものですもの。流石に慣れもしますわよ。あくまで他の男が苦手……って、何を言わせるんですのよ!》


 (アカ)(ダイダイ)()だけでなく他のフィオたちにもそれぞれ弱点や苦手なものは存在する。

 それを聞いた(クロ)は逆に羨ましく思ってもいた。転生してから数日、(クロ)はいまだ自分のことがわかっていなかったのである。


《でもいいよね、わたしは自分が何が苦手かすらわからないから》

《……お前は料理だろう?》

《なにが?》

《……いや、いい》


 自覚があるのか無いのか、(クロ)は料理が苦手という事実を認めようとはしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ