3-2 泣き虫の小曲《メヌエット》
「それじゃあ、今回の参加者を紹介するわ」
シルフィスは早速とばかりに騎士団の新入団員を連れてくる。
今回は男女二人ずつの計四人。ダンジョン内ではあまり人数が多くても連係が取れないため、少人数でパーティを組んでいるようであった。
「もしかして新入団員全員オイラが順番に引率するじゃん?」
「いえ、あなたに担当してもらうのは今日のこの子たちの班だけよ。他の班は私や他の団員が後日やるから大丈夫よ」
それを聞き、ほっと胸を撫で下ろす橙。騎士団の新入団員が全部で何人いるかは知らないが、それ全員の引率は流石に勘弁だと思っていた。
「まずは班長のアルバート・アクセル」
「はじめまして! アルバート・アクセルっス! よろしくっス!」
「よろしくじゃん」
最初に紹介されたのは元気の良い黒髪の少年。
イスティル王国騎士団共通の銀の鎧を着込み、背中に槍を二本背負っていた。
「次がレイズ・ファラン」
「どうも……レイズです」
「よろしくじゃんねー」
次に紹介されたのはクールな雰囲気な金髪の少年。
同じく鎧を纏ってはいたが、こちらはアルバートとは違い腰に長剣を帯刀していた。
「彼女はアーシェ・メリエール」
「よ、よろしくお願いします!」
「かわ……ごほん、よろしくじゃん」
三人目に紹介されたのは明るい茶髪のかわいらしい少女。
彼女もレイズと同じく剣を腰に差していたが、剣は普通の剣ではなく細剣のようであった。
「最後が……ピア・アーモニアだ」
「よろしく、ピアちゃ……ん?」
最後に紹介されたのは青髪の幼い少女。他の三人がクゥとほぼ同年代の14~16歳くらいであるのに対し、その子だけは明らかに年下……と言うか普通に子供である。
小柄な身体に不釣り合いな巨大な大剣を背負っている姿は非常に目を引いた。
「ちょ、ちょっとシルフィスさん」
「どうしたの?」
どう見ても騎士団の入隊年齢を満たしているようには見えない少女に橙は思わずシルフィスに小声で尋ねる。
「この子、すっごく幼く見えるんだけど」
「ああ、彼女は特例でね。アーモニア前騎士団長のご令孫なんだよ」
「そ、それってコネ入隊ってやつ!?」
「確かに年齢制限だけは特別視したけど、彼女の実力は本物よ。齢10歳にして入団試験はトップの成績、剣の腕前は大人の騎士に引けを取らない天才少女。そして、何よりも彼女は三属性の魔力を持ってるのよ」
「さ、三属性っ!?」
以前、赤が戦った獄炎伯を名乗る魔族は二属性の魔力を持っていたが、ピアという少女はそれよりも多い三属性の魔力を持つという。
それには橙も思わず大声で反応してしまう。
《三属性ってそんなにすごいの?》
《すごいってもんやないで!?》
《まず、普通の人間だと二属性でもすごいことですからね。転生者の中にはごくごく稀に二属性持ちもいますが、現地の人間で、しかも三属性だなんて前代未聞ですよ》
《基本的に魔法は自分の魔力と属性が合っていれば強くなる。もちろん、自分の魔力属性とは違う魔法も使えないことはない。例えば僕は光の魔力だけど、光魔法以外にも他の属性の魔法もいくつか使うことが出来る。だけど、バフが掛かるのは僕の魔力属性と同じ光の魔法だけになる……って感じかな》
《つまり、魔力の属性が三つあれば、三属性の魔法全部にバフが掛かる……それはそれだけで強いですわよ》
《……ほとんどちーと》
《なるへそ……確かにそれはすごいね!》
黒も白たちから説明を受け、三属性持ちの少女のすごさを実感する。
「ピ、ピ、ピ、ピア・アーモニア……で、です」
「改めてよろしくじゃん、ピアちゃん」
「う……」
「う?」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「えっ!?」
改めてピアに挨拶をした橙であったが、握手のために差し出された手を握り返すこともなく、ピアは思わず泣き出してしまう。
「実力は確かなんだけど……彼女はちょっと泣き虫でね」
「ちょっと!? ギャン泣きしてるじゃんよ!?」
《す、すごい泣き声だよ~(焦)》
一向に泣き止まないピアを同僚であるアルバートやレイズ、アーシェがあやしていた。こうして見ると同じ騎士団の仲間というよりは兄妹や姉妹のようである。
「というか、いったいどこに泣く要素あったじゃん?」
「この子、ちょっと人見知りでもあってね。あまり知らない人の前だと泣くのよ」
「それは騎士として大丈夫」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
フィオの心配する言葉を聞いた途端にピアはまた泣き出してしまう。
《この子ほんとに大丈夫かな? いくら三属性の魔力の天才少女って言ってもこんなに泣き虫じゃあ戦えないんじゃあ?》
《確かにそうですわよね。これは思った以上にめんどくさい依頼かもしれませんわね》
《あたし、謹慎中で良かったかも。橙、あたしの代わりにしっかり頼んだわよー》
《……お前は少しは反省しろ》
ともあれ、このメンバーの引率役としてダンジョンに潜らなくてはならない橙。これには他のフィオたちも思わず同情してしまう。




