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3-1 お調子者の前奏曲《プレリュード》

「オーイーラーはーフィオー♪ オイラは九人で一人♪ 一人は九人でオイラなーのーさー♪」


 王都イスティル。東区広場噴水前。テンガロンハットを被り、橙色のジャージを着た橙色の髪の少年はギターをかき鳴らして歌っていた。

 美しいギターの音色に初めは立ち止まって聞く人も多かったが、彼の歌を聞くとすぐさま散っていく。


《相変わらず微妙な歌ですわね》

《というかわたしのことはー? 九人じゃなくて十人でしょー?》

「悪い悪い。これは(クロ)が加入する前に作った『フィオのうた』だからなー。今度詞を書き直すじゃん」

《……かきなおすほどのしじゃない》

《……というか、今日は騎士団に呼ばれてただろう?》

「あっ、そうだった!」


 今日、表に出ているのは(ダイダイ)(ダイダイ)は──というよりフィオ・フローライトは騎士団長のシルフィスに召集を受けていた。


「あ、(ダイダイ)

「お、クゥちゃん。一緒に騎士団の所に行くじゃんよ♪」

「……(アカ)姉さんは?」

「あいつは謹慎中じゃん。しばらくは表には出てこないじゃんよ」

「はぁ……」


 途中、フィオの家に居候となっている元皇女で勇者見習いの猫耳メイド服少女クゥと遭遇する。


 (アカ)の弟子として勇者見習いとなったクゥはメイド服を気に入り、普段から着用するまでになっており、ジャージ姿の少年とメイド姿の少女というおかしな組み合わせに街の視線も集まっていた。


 クゥもフィオ同様に騎士団の本部に呼ばれているので一緒に向かおうと思った(ダイダイ)であったが、フィオの中でも特に(アカ)に懐いていたクゥの態度は彼女の時とは全く違う素っ気ないものであった。


 なお、クゥはフィオたちの秘密を聞いており、一番懐いていて師匠でもある(アカ)のことは『(アカ)姉さん』、他のフィオたちは『さん』付けで呼ぶようになったのだが、何故か(ダイダイ)だけは『(ダイダイ)』と呼び捨てであった。

 

《お前、クゥになんかしたんか?》

《わかった~! 何かえっちなことしようとしたんでしょ~?》

「し、知らないじゃん! オイラは何もしてないじゃんよ!」

《……おちょうしものの(ダイダイ)だからなめられるのはしかたない……よ》

「えー?」


 単にお調子者で軟派者な(ダイダイ)の性格から来るものであろうが、舐められがちな彼はほんの少ーーーしだけ気を落とす。



「来たわね」

「シルフィスさん、今日もお美しいじゃん!」


 王都イスティル南区。イスティル王国騎士団本部。そこではすでに団長のシルフィス・エル・イスティルが待ち構えていた。

 (ダイダイ)はいつものように銀髪の美女に賛辞の言葉を贈るが、シルフィスはやって来たのが(ダイダイ)だったことに多少驚いていた。


「……(アカ)はどうしたの?」

(アカ)は謹慎中じゃん。こないだやらかしたからしばらくは大人しくしててもらおうって話になって」


 先日の北ペルト山消滅事件。そのことで逮捕投獄された(アカ)はその責任を取ってしばらくは謹慎処分としてフィオ・フローライトの表には出てこないということになっていた。


「じゃあ、(シロ)(アオ)(アイ)は? ()(ミドリ)(ムラサキ)(モモ)、新しく入った(クロ)でもいいけど」

「いるけど……今日はオイラが表に出る日じゃんよ」

「そう」

「なんだよー。オイラじゃ不安だとでもいうのかよー」

「不安」

「ええー」


 クゥ同様にシルフィスもお調子者の(ダイダイ)にあまり良い印象を持ってはいなかった。それでも彼もフィオ・フローライトであることには変わりないため、改めて今回呼んだ理由を話す。


(アカ)がやらかしたのは先刻承知だけど、あいつの釈放に便宜を図った代わりにとある頼みを(アカ)にやってもらおうと思っていたのよ」

「でもオイラは(ダイダイ)じゃん」

「あなたたちは九人で一人……今は十人で一人か。ともかく同じフィオ・フローライトには変わりないだろうから(アカ)の代わりにあなたにやってもらう」

「えー!?」


 要するに(アカ)の尻拭い。それがたまたま今日表に出ていた(ダイダイ)が貧乏くじを引いてしまったという訳である。


「誰か変わってじゃんよー!」

《嫌ですわよ》

《僕も今日はいいかな》

《じゃ、じゃああたしが》

(アカ)ちゃんはダメだよ~。しばらく謹慎なんだから~》

《……諦めろ、今日はお前の担当だ》


 他のフィオたちに代わりを頼もうとするも誰も代わってはくれず、今回の依頼は(ダイダイ)が請け負うことになってしまう。


「……で、何をやればいいじゃん?」

「新人騎士の引率」

「引率? つまりガキのお守りってこと?」

「言い方は悪いけど……まあ、そういうこと」


 イスティル王国騎士団は新入団員に戦いに慣れるために簡単なダンジョンに挑んでもらうという慣習があった。もちろん新人だけに行かせるわけにもいかないため、引率役が必要なのだが、シルフィスはその役をフィオに任せようとしていたのである。


「もしかしてクゥちゃんも一緒に呼んだのは」

「ええ、勇者を目指すクゥ皇女……もといクゥさんにも経験が必要かと思い、新人たちと一緒にダンジョンに挑んでもらおうかと。もちろん、他の騎士団員にはクゥさんの正体は秘密で」

「ダンジョン……ですか。わかりました、アタシも行きます!」


 クゥもやる気のようでシルフィスの申し出を受け入れる。


《ダンジョンかあ……面白そう! わたしが代わろうか?》

「えっ? マジ!?」

《ダンジョンと言っても初心者用のダンジョンで我々には物足りないですよ? それに今回は単なる引率役。基本的には見守るだけとなりますが?》

《じゃあいいや》

「えー!」


 ダンジョンに興味を持っていた(クロ)も自分が活躍出来ないと知るとあっさり辞退し、結局は(ダイダイ)が引率任務を担うことになってしまう。

 

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