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2-11 自称勇者とお姫さま

《まさかクゥちゃんが【勇者】のスキルを持っていたなんてね~☆》

《あれ? でも【勇者】スキルって異世界の転生者にしか発現しないんじゃなかったっけ?》

《いえ、そんなことはありませんよ。もちろんこの世界の人間にも【勇者】の可能性はあります。発現確率は異世界からの転生者と比べるとものすごく低いですが》

《……えすえすあーる(SSR)じゃなくてゆーあーる(UR)……くらい》

《僕も長いこと生きてるけどこの世界の勇者って初めて見たかもしれない》

《そんなに!?》


 何にせよ、フェルド・イブールが消滅したことからクゥが【勇者】のスキルを持っていることはほぼ確定であり、フィオたちもとても驚いていた。


「さてと……クゥ、これからどうするの?」

「えっと、アタシは……」

「ま、とりあえず疲れたから一度村にでも戻ってから」

「確保っ!!」

「は……?」


 今後のことをクゥと話していたフィオであったが、突如として現れた大勢の鎧の男たちに取り押さえられてしまう。


 その男たちの背後には白銀の鎧に身を包んだ銀髪の女性騎士の姿があった。


「げえーっ!? シルフィス!?」

「フィオ・フローライト、話は城でじっくりと聞かせてもらうわ。そこのあなたも一緒に来るように」

「は、はい」


 フィオを捕らえたのはイスティル王国騎士団の面々。そして、銀髪の女性が(アカ)の知り合いである騎士団長にしてイスティル王国第二王女シルフィス・エル・イスティルであった。


 シルフィスはまだ24歳という若さでありながら、更に王族という身分も関係なく騎士団の団長となった実力者。イスティル最強の騎士とも称されており、【勇者】のスキルさえあれば魔王討伐に最も近いのも彼女ではないかとも噂されている。


《この人がシルフィスってお姫さま?》

《うん、山いっこ吹っ飛ばしたことがもうバレたみたいだね》

《で、これからどうなるの?》

《城で尋問……かな》

《えー》


 シルフィスの号令でイスティル騎士団はフィオとクゥを王都イスティリアの王城へと連行する。もちろんフィオに拒否権などあるはずもなかった。



 王都イスティル。南区。イスティル王国騎士団本部尋問室。


 今回の騒動に対する取り調べのために連れて来られた(アカ)は魔法で椅子に縛りつけられ、目の前のテーブルの上にはこれ見よがしにカツ丼が置かれていた。


 なお、一緒に連行されたクゥはフィオの隣に普通に座らせてもらい、カツ丼を食べているようであった。


「扱いの差っ!」

「黙りなさい、フィオ・フローライト。もとい(アカ)!」


 早速シルフィスによる尋問が開始された。なお、シルフィスはフィオの正体やいくつも人格があることを知っており、特に(アカ)とは腐れ縁の仲であった。


「せ、説明したでしょ!? 魔族が出たから極大爆炎魔法でやっつけただけなんだって」

「だからどうしてそんな魔法を使ったのよ! 下手したら近隣の村にも被害が出てたのよ!?」

「そ、それは……」

「それは?」

「そ、その方がかっこいいから!」

「はい、逮捕ー!」 


 こうして(アカ)の処遇はあっさり決まってしまう。しばらくは騎士団の牢屋に投獄されることになるだろうが、(クロ)以外の他のフィオたちはいつものことのように動じてはいなかった。


《はあ……またですの?》

《……(アカ)がはしゃぐとろくなことにならない》

《あれ? これから捕まるのにみんな驚かないんだね》

《……いつものことだ。お前も直に慣れる》

《そーなんだ。ところでわたしたちはカツ丼食べられないの?》

《こいつもう慣れおったで!》


 (アカ)が暴れる度にシルフィスに捕まるのはもはや恒例行事。フィオもシルフィスもすっかり慣れきっていた。


 そして、(アカ)の一件に片が付くと、シルフィスはカツ丼を食べているクゥの方へと向き直る。


「それで……あなたは何故あのような場所に? クゥ皇女(・・・・)

「クゥ……皇女ぉ!?」

「…………」


 フィオは驚きクゥの方を見るも、クゥは黙って下を向いたままであった。


「この御方はウエスタニア帝国第一皇女クゥ・アイル・ウエスタニア様だ。格好が……その……少しみすぼらしかったので最初は気付きませんでしたが、その猫耳には見覚えがありましたからね」

「そういや、シルフィス(あんた)も一応お姫さまだったっけか。それにウエスタニア……か。なるほど、色々納得だわ」


 ウエスタニア帝国は西のウエスタニア大陸を統治する獣人たちの大帝国。そんな帝国の皇女がこの東のイスティル大陸にいること自体が驚くべきことであるが、もちろんそれには事情がある。


「アタシはもう皇女じゃ……」

《どういうこと?》

《少し前、ウエスタニア帝国でクーデターがあったんですよ。首謀者は帝国第一皇子。つまりは彼女の兄上です。彼は自分の父親を殺し、政敵となりうる妹を国外追放としたそうです》

《妹……それがクゥ》


 フィオたちもウエスタニア帝国でのクーデターのことは知っていたが、それがクゥのことだとは夢にも思わなかった。


 国を追われたクゥは東の大陸に渡り、当てもなくさ迷っている途中で盗賊に形見の指輪を盗まれ、フィオと出会い、今に至るという訳である。


「では、クゥさんとお呼びしましょう。あなたはこれからどうなさるおつもりで?」

「……わからない。国に帰っても兄さんに殺されるだけだし、戻ったところでもう誰も……」

「だったら! うちに来なさい。あたしがあんたを立派な勇者に育ててあげるわ!」

「え……?」

《ええ~!?》


 突然の(アカ)の提案にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。もちろん、他のフィオたちもである。 

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