表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/72

2-10 自称勇者と勇者の一撃

「さて、これ……どう言い訳しようか」

《無駄ですね。そもそもあのような強大な魔法を使わずともあの程度の魔族はもっと弱い魔法や技でも倒せていましたし》

《……お前は獄炎伯を倒した時の再現がやりたかっただけだろう?》

《まあ、あの時みたいに自爆せずにクゥと自分を守ったことは誉めるけどさ……二度とやめてよね?》


 かつて■■■■が獄炎伯を同じ方法で倒した時はほぼ自分の命すら犠牲にした自爆特攻であった。

 相討ちと言えば聞こえはいいが、魔王との戦いを獄炎伯に邪魔された怒りによる暴走のようなものであった。


 前回の反省を生かし、最後まで冷静に防御魔法を使ったことだけは(シロ)も誉めるものの、それ以外の行動には静かな怒りを見せていた。


「ま、言い訳は後で考えるとして……クゥ、帰りましょうか」

「フィ、フィオ姉さん……」


 クゥの方へと向き直り、声をかけた(アカ)であったが、クゥはまだ怯えているようであったため、思わず振り返る。


 かつて獄炎伯を倒したのと同じ魔法で今の獄炎伯を倒した。


 だが、■■■■と(アカ)には決定的な違いがあった。


「……あちゃあ。忘れたわ」

《な、何でっ!?》


 あれだけの大爆炎と大爆発を食らい、その肉体は消滅した。だが、まだ魂までは砕けてはいなかった。


 そこにはかつてフェルド・イブールだったものの魂とも言うべき怨霊(ゴースト)が立っていた。


「はぁはぁ……ま、まさか私をここまで追い詰めるとは……先代様を倒したというのもあながち嘘ではなさそうですね……」

《なんか幽霊っぽくなってるけど!?》

《魂が実体化したんや》

《迂闊でした。先の獄炎伯よりは弱いとはいえ魔王から二つ名が拝命された魔族。魔王の力の一端を分け与えられているんです》

《つまり?》

《魔王の完全耐性ほどじゃないから【勇者】スキルがなくても肉体にダメージは与えられるけど、その魂は【勇者】スキルがないと完全には倒せない……ってことかな》

《えっ!? それじゃあわたしたちには倒せないじゃん!》

《いきなり大ピンチだよ~》


 ■■■■と(アカ)の一番の違いは【勇者】スキルの有無。


 獄炎伯のように二つ名持ちの高位魔族は魔王の力の影響で【勇者】スキルがないとその魂までは消滅させられない。


 【勇者】スキルの無い今の(アカ)──フィオ・フローライト(・・・・・・・・・・)では獄炎伯フェルド・イブールを真の意味では倒せなかった。


《ちなみにあれ倒せないとどうなるの?》

《魔族は肉体が滅びても魂が無事ならいずれ肉体も復活しますわ》

《けど、そうして復活した魔族は今より遥かに力を増すって話やから今のうちに倒しておきたいところなんやけど……》

「あたしたちは誰も【勇者】スキルを持ってない!」


 おそらくフェルドの肉体が復活してもフィオたちとの実力差はまだ十分に開いているためまた倒せはするだろう。

 だが、それは肉体での話であり、魂を砕く術を持たないフィオたちにとっては根本的な解決にはならなかった。


《せめて一撃……一撃でも【勇者】の攻撃を与えられれば、今の奴の魂なら倒せるはずですが……》

《今から誰か【勇者】の知り合いを呼ぶとか? あー、でも今からじゃあとても間に合わないじゃん!》

「くっ……! 何であたしは勇者じゃない!!」

「……どうやらあなたに私の魂は砕けないようですね。ならば!」


 フェルドはフィオが自分を完全には倒せないと知るや否や、霊体となった身体をフィオへと向かわせる。


「しまっ──」

「とりあえず、あなただけはここで確実に殺しておかないと!」

「フィオ姉さんっ!!」


 フェルド・イブールの最後の抵抗。ゴースト系の魔物のように霊体を操ってフィオの身体の自由を奪い、そのまま取り殺すつもりであった。


「ア、ア……アクア・アロー!」

「何をするかと思えば」


 フィオを助けようとクゥは残っていた最後の魔法カードを発動させる。それは水属性初級魔法のアクア・アロー。


 いくら弱体化しているとはいえ、もちろんそんな攻撃などフェルドには通用するはずがなかった。


 避けるまでもない。フェルドにとってもそう思わせるほどに弱い魔法である。


「……がっ!?」


 普通ならそのような弱い魔法でどうにかなる状況ではない。


《こ、これは……!》

《まさか!》


 どうにかなるとするならば【勇者】のスキルを持つ者による攻撃のみ。


 勇者(クゥ)の繰り出したアクア・アローはフェルド・イブールの魂に突き刺さり、そしてそのまま魂を砕く。


「【勇者】スキル……!」

「へ? なんのこと?」


 まだ自分では何が起こったのかわかっていないようであるが、【勇者】のスキルを持つクゥの手により獄炎伯フェルド・イブールは完全に消滅した。


「あはははは! まさか、あなたが勇者だったなんてね」

「な、なんのことかわかんないけと、フィオ姉さんが無事で良かったよ」


 (アカ)は呆然としているクゥを抱き寄せ、その頭をわしゃわしゃとかき撫でる。それには(アカ)に懐いているクゥもどこか嬉しそうであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ