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2-9 自称勇者と雷火の魔人

「まずは様子見……ファイア・アロー!!」


 先に仕掛けたのは(アカ)。繰り出したのはクゥも使ったファイア・アロー。

 ただし、【無詠唱】と【魔力増幅】のは影響もあり、クゥの使ったものよりもはるかに数が多く、そして威力も高い。


「す、すごい……」


 後ろからフィオの戦いを見守っていたクゥも(アカ)のファイア・アローを称賛する他なかった。


 だが──


「今、何かしましたか?」

「なるほど……あたしや獄炎伯(あいつ)と同じか」


 フェルドに炎の矢は全く通用しなかった。それは(アカ)や先代の獄炎伯も持っていた【火炎耐性】によるもの。

 つまり、(アカ)の炎の攻撃はフェルドには通用しないということ。


(アカ)、また代わったろうか?》

《今度は(モモ)ちゃんがやるよ~☆》

《火には水です。私が適任だと思いますが?》

「ありがと……だけど今回はいいわ。こいつはあたしがやるからいいわ」


 属性的には圧倒的不利な中、(アカ)は自身が戦闘を継続する。


「では、こちらも」


 (アカ)フィオの炎の矢をあっさりと防いだフェルドも火の魔力の持ち主。同じように炎の矢を発生させ、赤フィオを襲う。


「……っ!」

「どうやらあなたにも炎は効かないようですね」


 (アカ)の実力を確かめるかのように放ったフェルドの炎の矢も(アカ)の【火炎耐性】の前には効果がなかった。


「お互い、炎は効かないか」

「ええ、ですが魔族は人間のよう魔力の属性が一つだけだとは限りません。このようにね」


 フェルド・イブールは火の魔力の他にもう一つ別の魔力を持っていた。

 

 それは雷。

 

 フェルドは火の矢の同様に雷の矢を発生させて一気に射抜く。


「魔王様より獄炎伯を拝命する前は“雷火の魔人”の二つ名を賜っていたこともあるのですよ。さあ、私の雷を喰らいなさい!」

(アカ)、わたくし以外の雷なんかに負けたりしたら承知しませんわよ!》

「当たり前でしょ。こんなショボい雷なんて」


 【火炎耐性】持ちの(アカ)だがもちろん【雷撃耐性】などは持っていない。

 (アカ)は再度炎の矢を放ち、雷の矢をあっさり相殺させる。


「でも……これでわかったわ」

「あなたが私に勝てないと言うことですか?」

「いいえ、あんたがただの小者だってことよ」

「は……?」


 ほんのわずか攻撃魔法を撃ち合っただけだが、(アカ)は新たな獄炎伯となった男の評価を終える。


 フェルド・イブールはかつて(アカ)がまだ■■■■だった時に戦った先代の獄炎伯とは比べ物にならない程度の実力であった。


「曲がりなりにもあたしを殺した獄炎伯の二つ名……あんたみたいな三流魔族に名乗ってほしくはないわね」

「さ、三流ですと!? この魔界の貴族たる私を三流……だと!」

(アカ)ちゃん煽るね~☆》

《でも、あのリアクションは確かに三流だよねー》

《こものまぞく》

《いいぞいいぞー! もっと言ってやるじゃん!》


 現在の獄炎伯はかつて■■■■が戦った獄炎伯より遥かに弱い。それが(アカ)が下した結論であった。


《実際のところ、昔の獄炎伯とかいう魔族って強かったの?》

《強かったよ。当時の魔王四天王の一角だったし。彼がいなかったら(アカ)は魔王を倒せていたかもしれない》

《そんなに……》

《……だが、奴の後継者とやらは奴ほどの実力は無いようだな》

《……(アカ)もがっかり》


 因縁のある相手の後釜ということで(アカ)も少しは楽しみにしていたのだが、完全に興が削がれてしまう。


 もうこれ以上茶番に付き合うつもりもなくなったため、(アカ)はそろそろ戦いを終わらせようと思い抱く。


「あんたの先代は獄炎伯の名前通り炎しか使わなかったわよ?」

「何を言うかと思えば……敵を殺すのに手段など」

「……ま、それはもういいわ」


 フェルドは雷の矢に続いて、雷の雨を降らせる魔法で攻撃を仕掛けていたが、もうフィオにそんなものは通じなかった。


「ところで、あんたは先代の獄炎伯がどうやって死んだか知ってる?」

「何です、突然」

「炎よ。獄炎伯(あいつ)はあたしの炎で焼き殺した」

「は……!? そんなわけないでしょう! 炎の大魔族……獄炎伯ですよ!? 【火炎耐性】持ちの獄炎伯を炎で……!?」

「じゃあ、試してみましょうか?」


 (アカ)はそう言いながら、かつて■■■■だった時に獄炎伯レド・サラマンディアを滅ぼした魔法の詠唱に移る。


 盗賊のアジトを山ごと吹き飛ばそうとした極大爆炎魔法の詠唱に。


「──裁きの炎よ、大いなる爆炎となりて全ての神の敵を断罪せよ」

《ちょ、その魔法は……!》

「──ジャッジメント・ブレイズノヴァ!!」


 (アカ)は極大爆炎魔法【ジャッジメント・ブレイズノヴァ】で生み出された太陽の如き巨大な炎の球を手のひら大まで圧縮し、そのままフェルドの身体へと叩き込む。

 そして同時に無詠唱で炎の結界魔法を自身とクゥの前に多重展開し、爆炎の衝撃に備えた。


「ぎゃああああっ!! あ、熱いぃ! 熱いぃぃぃっ!!」

「情けないわね。獄炎伯(あいつ)は悲鳴一つあげなかったわよ。ま、そのまま死んだけど」


 その魔法は聖なる炎で敵を焼き尽くす裁きの大爆炎。【火炎耐性】すらをも無効化し、対象が燃え尽きるまで大爆発を起こし続ける(アカ)が使える中で最強クラスの魔法であった。


 そして──


「ファイア・シールド!」


 (アカ)は次の衝撃に備え、更に炎の結界を何重にも重ねがけする。


 フィオが結界を張ると同時にフェルド・イブールを爆心地とした大爆発が起こる。


 もう悲鳴すら聞こえない。


 爆発が止んだ時、そこに立っていたのはフィオとクゥだけ。盗賊のアジトであったダンジョンはおろか、北ペルト山の大部分も大爆炎により消し飛んでいた。


《や・り・す・ぎ! ですわっ!!》

「あー、これってもしかして……後でシルフィスにめちゃくちゃ怒られるやつ?」

《うん、怒られるやつ》

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