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2-7 自称勇者と形見の指輪

「さてと、あなたはここで」

「アタシも一緒に連れてって!」

「は?」


 早速、強大な魔力反応のある場所に向かおうとしたフィオであったが、そんなフィオの腕をぎゅっと掴む少女。どうやら少女もフィオについて行きたいようであった。


《まあ、こんな死体だらけの場所に一人きりってのも不安だよ》

(アカ)、子猫ちゃんも連れてってやろうじゃん?》

《……ねこちゃんもいっしょ》

「仕方ないわね……あんた、名前は?」

「クゥ」

「クゥ……ね。あたしはフィオ。フィオ・フローライト。それじゃあ、クゥ、一緒に行きましょうか」

「う、うん!」


 クゥと名乗った猫耳の少女。フィオはクゥも連れていくことにし、改めて魔族の魔力反応がある場所の方へと向かう。


「……で、クゥは何でこんなところに? 盗賊に何かを奪われたみたいだったけど」

「そうだ! 指輪! お母さんの形見の指輪!」

「なるほど……それでわざわざ」


 クゥという少女の目的も判明した。彼女は盗賊に奪われた指輪を取り戻すために盗賊のアジトを探していたようである。


《形見ってことはクゥのお母さんは亡くなってるんだね……》

《みたいですわね。でなければ指輪一つのために盗賊のアジトになんか乗り込んだりしませんわ》

《ねこちゃんのたからもの》

「んで、その指輪は見つかったの?」

「ううん、まだ……」

「それじゃあ、先にそっちを優先しましょうか」

「えっ?」

「何を考えてるのかさっきから魔族らしき反応は一ヶ所で止まったままで全く動かない。どうせ待っててくれてるなら多少待たせても問題ないでしょ」


 先ほどから【魔力感知】で感じている大きな魔力は同じ所から動いていないことが(アカ)はずっと気になっていた。

 その魔族が同じく【魔力感知】でフィオの魔力を感じ取っていてフィオのことを待っているのか、それとも他に理由があるのかはわからないが、どちらにせよ動きがないのは事実である。



 よって予定変更。


 フィオは先に少女の指輪を探すことにする。


《いいんですの? こんなことしてて》

《ま、(アカ)だから仕方ないよ。困ってる人は放っておけない……それが(アカ)なんだから》

(アカ)ちゃん、カッコいい~☆》

《……さすがゆうしゃ》

《……何にせよ急いだ方がいい。いつまでも待ってくれてるとは限らないからな》

「そうね、そうするわ」


 指輪のありそうな場所にもちろん心当たりはない。だが、これまでいくつもの盗賊団を壊滅させてきた(アカ)にはある程度の目星は付いていた。

 盗賊は奪った宝を一ヶ所に集めて管理していることが多い。つまり宝物庫のような場所に置かれている可能性が最も高い。


「あの……」

「ん?」

「さっきはいきなり襲っちゃってごめんなさい」


 クゥは突然フィオに謝罪する。クゥはフィオのことを盗賊の仲間だと勘違いして襲ったことを少し気にしているようであった。


「確かに盗賊扱いされたのは頭にきたけど……ま、許したげる。あなたにもどうしても引けない事情があったみたいだしね」

「あ、ありがと……フィオ姉さん」

「姉さん!?」

(アカ)、この子に気に入られちゃったみたいだね》

《よかったですわね、フィオ姉さん(・・・・・・)

「う、うるさいわね!」

「……?」


 クゥのことをあっさり許した(アカ)にクゥはすっかり懐いていた。

 そんなこんなでアジトの中を進んでいた二人はようやく目的の部屋へと辿り着く。


「金貨に銀貨、宝石に魔道具まで……よくもまあここまで貯めたわね」

「アタシの指輪! 指輪はっ!?」


 宝物庫のような場所にはこれまで盗賊たちが盗んだ宝が木箱いっぱいに何箱も置かれていた。一応、金貨の箱、宝石の箱、魔道具の箱と奪った財宝の種類分けだけはされていたのだけは幸運だった。


 クゥは自分の指輪を探すため、一心不乱に貴金属類が雑に納められた木箱の中を掻き分ける。

 

「……とりあえず通信魔道具でこれまでの状況をシルフィスの奴に連絡しておいたから」

《シルフィスって?》

(アカ)と仲のいいイスティル王国騎士団の団長ですね。先ほども通信魔道具で連絡していた騎士団の知り合いというのがシルフィス女史のことです》

《しかも騎士団の団長でもありこの国のお姫様でもあるんだぜ?》

《お姫様!?》

《なんか(アカ)とは正義バカ同士気が合うようですわよ》

《そうなんだ、わたしもその人に会ってみたいなー》

《ま、すぐ会えるやろ》


 (アカ)がシルフィスという騎士団長に連絡を入れている間もクゥは形見の指輪を探していた。

 見かねたフィオも一緒になって指輪を探すことにする。


「こんな多くの宝の中から小さな指輪を見つけるなんて大変ね。でも、それだけ大切なものなんでしょ?」

「うん……お母さんが遺してくれた唯一のものだから」

「お母さん……か。これは?」

「違う」

「それじゃあ……これ?」

「あっ!」


 フィオが見つけたいくつかの指輪の中で、赤い宝石の付いたものがクゥの目に止まる。

 どうやらそれが探していた指輪のようで、フィオから指輪を受け取ったクゥは目を輝かせて喜んでいた。


「これだ! お母さんの形見の指輪!」

「見つかってよかったわ」

「本当にありがとう、フィオ姉さん!」 


 クゥの形見の指輪も無事に見つかり、いよいよ本番。二人は気を取り直して、例の魔族が待ち構える場所へと足を運ぶ。

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