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ファンタジー編第2話 転生転移チート能力「ダブル異能」

 エミリは(今回もなかなか厄介な転生転移者っぽいけど。どうやってミッション達成させよう)と考えながら、目の前にいる少年少女を注意深く観察した。

 

 その視線に気が付いた少女は自己紹介した。彼女の名はユーカで、この森「ゴブリン山樹海」の近くにある小さな町「ニアフォレスト」の住民という。そして彼女は、先ほど「まずい」と言った意味を説明した。「ゴブリン族と町の住民は、殺し合いを避けるための約定を結んでいます。この約定で、人間はゴブリンに危害を加えてはいけない、ゴブリンは町に近づかないと決められているんです。これまで、約定が破られたことはありません。だからこの先どうなるかは分かりません」。

 

 この時点でゴブリン爆殺からさほど時間が経っていないが、すでに森全体に異常事態が伝わっているようだった。先ほどまで静かだった木々が、今では警告するようにざわめいている。3人は立ち話を切り上げ、ひとまず町に向かうこととした。ユーカの案内で先を急ぐと、1時間ほどで森が終わり、少し先に町が見えた。太陽が高くかなり明るい。「昼間だ」とアオヤマは言った。


 全員が少し落ち着いたとみてエミリは、先ほど不十分だった異世界転生転移やこの世界、異能について話し始めた。

「あなたはハジメ・アオヤマ。日本出身の18歳。通学途中にトラックに轢かれそうになった子どもを助けようとして死んだ。そしてそのままこの世界に飛ばされた、つまり異世界転移者ということになる」。

 

 アオヤマは、落ち込んでいるのか、干からびた爬虫類のような生気の抜けた顔で聞いている。エミリは、ゴブリンを爆殺した時の彼を思い出し、(アオヤマ君、結構気分屋っぽいな)と思いながら続ける。


「この世界には、最初も説明した通り、魔物が存在する。ゴブリンやオークといった下級部族ばかりだが、各部族の首長はそれなりに強大な魔物といえる。多くの都市は、ニアフォレストと同様に、魔物と約定を結ぶことで一定の安全を確保しているようだ」。


 一息ついて話を発展させる。「それからこの世界の生物は、生まれながらにして一つの特殊能力『異能』を持っている。転生転移者も同様に、この世界に来た瞬間に異能が備わる。加えて転生転移者には、2つ目の異能が与えられる。つまり、この世界における転生転移者は、2つの特殊能力を有するということだ。ゆえにダブル異能者と畏怖される」。


「ダブル異能者…だって?」


 アオヤマの顔に少しだけ生気が戻る。

 

 エミリの声に力が増す。「ええ。そして、2つ目の異能の選択は、我ら異世界コンシェルジュに一任されている。さて、今ここで、あなたに異能を授けることとする」。彼女はおもむろに青山の頭に手を当て、少し大きな声で唱えた。「数多の世界の魂を統べる偉大なる存在、転々神リンネよ。この者に特殊能力「危険予知・ヒヤリハット」を授け賜え!」。

 

「ヒヤリハット…だって?」。


 アオヤマは驚いたような顔になった後、少し考えてから抗議した。「えーと、もう少し、良い能力もらえませんか?もっと強そうなのあるでしょ?四大元素を操るとか、魔物を従える力とか、タイムトラベルとか。もちろん、最初は低レベルとかあるんでしょうけど、そんな交通安全みたいな」。

 

 エミリは答える「危険予知・ヒヤリハットで決定だ。異論は認めない」。黙って聞いていたユーカは、3人が出会ってから初めて、少しだけだが頬を綻ばせた「ふふ、ヒヤリハット」。



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