異世界コンシェルジュ編第1話 転生転移依頼あり
「やっと厄介案件のカタが付いたわー」
序列第4位中位天使(4位中天使)のエミリは、リンネ転生転移事務所(転々事務所)に戻ると、そう言って自分のデスクに突っ伏した。
エミリは、溌剌とした性格の若手女天使だ。アクションはいちいち大袈裟で、動いたり話したりするたびに、大きな目と後ろで結んだセミロングの黒髪が連動する。今も思い切り目を瞑り、髪をうなだれた犬のシッポのように垂れさせて、これでもかと言うほど苦労をアピールしている。重ねて嘆く「うげっ、ひどい案件だったよ」。
隣のデスクに座っていた4位中位天使のセラはほほえみながら、「お疲れ様。そんなに大変だったの?」と返した。セラはエミリと同じ序列だが、エミリの教育係を努めた先輩ににあたる。彼女は知的で落ち着いた雰囲気があり、上位天使にも一目置かれている存在だ。また、たぐいまれなる美貌の持ち主で、整った目鼻立ちや、ふわりとした黄金色の長髪には、誰もが魅了されてしまう。
転々事務所では10人ほどの天使が仕事をしていたが、エミリの愚痴に反応したのはセラだけ。エミリは待ってましたとばかりに語りだす。
「それがこの前の転生者、鬼畜系?いや猟奇系っていうのかな?つまりヤッベー奴だったわけよ。殺された恋人の手首を形見のペンダントをするような奴でさ。ミッション最期の戦いでは、その形見を囮に敵地に侵入したんだよ。その後は、カモフラージュのためにゴキブリ型ゴブリンの臓物をとりだし……」
「いやそこまで生々しく話さなくていいから」、話しがヒートアップしてきた所で、セラが苦笑いしながら遮る。そして2人はクスクスと笑った。
転々事務所は、異世界などへの転生転移を司る神「リンネ」に仕えるの天使の拠点となる場所だ。ここに配属されている天使の階級は序列1位から3位の上位天使、4位から6位の中位天使で、異世界コンシェルジュと呼ばれている。
業務は、転生転移者が飛ばされた世界の案内と、転生転移者に与えられたミッションへの協力。時にはそのミッションに沿って、戦闘や政治などに加わることもあるため、花形ポジションである一方、激務として知られている。
リンネが管轄する世界は100以上存在する。何らかの事情で元の世界を離れた転生転移者は、リンネと1位上位天使により、次に行く世界が決められる。転々事務所の天使は、その決定に基づいて依頼を受け、転生転移者の案内を行う。各転生転移者の事情や各世界の仕組みは多種多様だ。
まだ笑っているエミリの肩に虹色の伝書鳩が止まった。新たな異世界コンシェルジュの依頼が届いのだった。