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第七話 変な奴と登校時間

 面真の家から学校までは、だいたい徒歩で十分もあれば到着する。




 そんな短い通学路を、面真はなぜかクラスメートと一緒に歩いていた。




 現時点で、面真と付き合いがあるクラスメートなど一人しかいない。──そう、面真の新入生挨拶に乱入した、入学試験学年二位、木南豪詞詠である。




「いや〜、初めて友達と一緒に登校したけど、楽しいね!! 朝からテンションも高くなっちゃうし、おしゃべりの話題も尽きないよ!」




 ちなみに詞詠はこの調子で、一人でずっと喋り続けている。面真はその間ずっと聞き役に徹しているが、さほど苦にはならなかった。




「そうそう、実はさっきも言った通り、私は友達と一緒に登校するのは初めてなんだ!」




「そうなんだ。それは良かったね」




 ここまで無感動に『良かったね』と言える人もなかなかいないだろう。自分でやっておきながら少し笑ってしまう面真だった。




「…………私のハジメテ、奪われちゃったな……」




「誤解しか生まない言い方はやめてくれないかな?!」




 さすがの面真でも、これはツッコまざるをえない。その反応を待っていたのかどうか知らないが、詞詠がニヤニヤと笑っているのも余計に面真の神経を逆なでさせる。




「ほら、そんなに大声出したら周りの人から変な目で見られちゃうよ?」




「う、うぐ……」




 学校一変なやつに言われたくない。その言葉が喉から出かかるが、今回に関しては詞詠の言うことも最もなので黙るしかない。




「────お、おはよう……!」




「ん?」




 急な挨拶に驚いて声のした方を見ると、同じブレザーの制服を纏った女子生徒がいた。どうやら彼女が挨拶をしたらしい。




「おはよう」




「おはよう! 今日もいい天気だね〜!」




 ネクタイの色で別れている学年色で、彼女が一年生ということは判別できている。これで先輩だったら、敬語を使わなきゃいけない場面だったので危ないところだ。




 そんなことを考えていると、挨拶をした女子生徒はその場に静止した──かと思いきや、いきなり早足で、面真たちを置いて歩きだす。




「あ、ちょっと……」




 声をかけようと思ったが時すでに遅し。瞬く間に面真の声が聞こえないところまで行ってしまった。




「面真くんさ……今の、カノジョ?」




「…………どうしてそんな考えになったのか小一時間ほど問い詰めてもいいかな?」




「だって、いきなり知らない人に声かけるはずはないし、面真くんも呼び止めようとしてたから。カノジョさんなのかな〜? って」




 少しムッとした顔で問う詞詠だが、面真からすれば今でもどうしてその考えに至るのか分からない。




 これが女子高生の恋愛脳……というやつだろうか?




「何なら僕も初めて会ったよ? もしかしたら中学でも会ったことがあるのかもしれないけれど、人数が多かったから覚えていないね」




「ふーん……」




 ──でも、そういえば見たことあるような気が……。クラスメートだったかな……?




 そう思いを馳せている間に、詞詠はどんどん先に進んでしまう。




「詞詠が一緒に行きたいって言ったのに置いて行こうとするのは矛盾してない?」




「──これは鬼ごっこ、面真くんが鬼ね。登校までに捕まえられなかったら……罰があります!」




「やらないけど」




「じゃあお先に〜!!」




 そう叫んで、詞詠は先に走っていく。




「だからやらないって……危ないし周りの迷惑だし」




 やっと邪魔者が消えたとばかりに、優雅に歩き始める面真。




 後ろを振り返っても誰もいなかった詞詠が面真のもとに戻ってきたのは、それから一分もしないうちのことだった。

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