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第五話 変な奴と僕の憂鬱

 始業式の翌日。新入生は初めて正式に先輩と出会う日。




 本来なら部活動の話や、校内でのイベントなどの──いわゆる未来に思いを馳せるような話が聞ける日なのだが……。




 面真は今日、学校を休むべきか悩んでいた。




 本来は面真の考えの中では『風邪などの病気の時以外は、学校は休むべきではない。サボりなぞ言語道断である』という考え方が深く根付いている。




 その上でこうまで思いつめさせられているのは、明らかに詞詠のせいだった。




 そう、彼女が昨日盛大にやらかしてくれたのだが、面真はその出来事がクラス内でどう扱われているか知らなかったのである。




 先生から事情の説明が為されていればまだいいのだが……昨日、新入生全員が帰ったあとに事情を聞かれたことを考えると、その望みは薄いだろう。




 幸いまだ学校に行くまでには時間がある。最悪の想定はゆっくりとできるはずだ。




 そう考え直して、面真は伸びをする。




「状況の想定をしてから、行くかどうか考えようかな……」




 頭の中に思いつく限りの可能性を列挙する。




 例えばどこかから詞詠のことが伝わって、僕の新入生挨拶の事情は既に知られている。




 例えばクラス内で、詞詠と僕が、『頭のおかしい奴ら』としてまとめて扱われている。




 ここまで考えたあたりで、面真は半分ほど思考を放棄した。




 前者は希望的観測すぎるし、後者はおそらく最悪の想定だろう。




「…………少し考えてみても、嫌だな」




 真面目に日々を過ごすことが目標の面真にとって後者は、そう呟いてしまうくらいには最悪の想定だった。




 朝食も済ませ、学校に行くためのブレザーも着用し、なお迷っているこの時間。この時間を確保するために早起きしたとはいえ、朝からあまり悪い気分にはなりたくなかった。




「どうするのが正しいのかなぁ……」




 面真一人しかいない部屋に、空虚な呟きが溶け消える。




 学校に行くしかないのだが、それに不安を抱く面真としては、取らなければならない正解が見えている分、トロッコ問題よりも難しく思われた。




「あと悩める時間は十分くらいか……」




 壁にかかっている時計に示された時間は七時五十分。




 ちなみに始業は八時半で、面真の家から学校までは十分ほどで着くのだが……そこはそれ、真面目に生きたい人間として、遅刻ギリギリに学校に行くことは良しとしないのであった。




「行くしかないかな……」




 今は家に両親もおらず、普通の生徒なら喜んでズル休みを選択する場面だろう。それでもなお行こうと考える面真の姿勢に、真面目への執着とも言えるものが伺えた。




 渋々ながらも学校に行こうと、部屋の階段を降りる。2階にある面真の部屋から、リビングがある一階に降りようかというところでインターホンが鳴った。




「こんな朝早くに誰だろう……?」




 一瞬制服のまま出ることを躊躇ったが、別に恥じるものでもあるまいと思い直し、相手が誰かも確認せずにドアに向かう。




 ──あとから思えば、この時きちんと誰が来たかを確認しておくべきだったかもしれない。まぁ、ここで願ったからといって、過去が変えられるわけではないが。




 ともあれ面真はドアを開けた。




「おっはよ〜!! 昨日の今日だけど、大丈夫? 元気だった?」




 そこには、先程まで面真の頭を悩ませていた事の──その元凶がいた。

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