第六十九話 ドラコとアサオ(俺は今回出番ないぜT^T)
ジン達がドラゴン王国に向かって飛んでから3時間後。
とある城のベランダに、空から二人の人物から降りてきた。
「ようやく帰ったの」
手にアサオを持ったドラコだ。
「お帰りなさいませドラコ様」
「ん、帰ったの」
ベランダ付近で仕事をしていた、同じドラゴンのメイドが頭を下げて声を掛けてきたので、いつものように答えるドラコ。
「では仕事に戻ります」
メイドはドラコが猫のように首根っこを掴んで手に持っているアサオについては何も聞かず、ぺこりと頭を下げて仕事を続ける。
「……いつもありがとうなの」
無表情だけど少し寂しそうにベランダを後にして、アサオを手に持ったまま自室に戻る。
ドラコの部屋は高級マンションの一室くらいの広さがあった。床も天井も全部大理石でできているが、ドラコの尻尾が当たるだけで豆腐のようにすぐ崩れるので、壁や柱などのあちこちがぼろぼろだ。
「アサオ、ずっと止めていてごめんなさいなの、今動かしてあげるの」
四つん這いの状態で城からピクリとも動かないアサオを大理石の床の上に置くドラコ。
「時よ、動くの」
ドラコの目が赤く光る。
どうやらアサオはずっと時間を止められていたようだ。
「……終わったの」
たった数秒でドラコの目から赤い光が消えた。
と、同時に反応はすぐ起こった。今までピクリとも動かず黙っていたアサオの体にピシリとヒビが入り、ガラスのようにパリンと表面を覆っていた何かが割れた。
「うわっ!?
……いたたたた、なんだここは」
動いてすぐ、ドサリと床の上に崩れ落ちたアサオ。
ドラコは「ほぅっ」と息を吐いて名前を呼ぶ。
「アサオ」
「ひぃっ! ど、ドラコ!」
ドラコが声をかけただけで、アサオはすぐに来た時と同じく四つん這いで床に伏せて、じーーっとドラコの顔を見たまま、尻尾や全身の毛を逆立て、耳をぺたっと閉じていた。
「フシャァァァァァ!!」
「アサオ?」
ドラコが一歩前に進む。
「!? 国王にこれ以上近寄るな!」
アサオが猫パンチをドラコの足元スレスレに放ち、全力で威嚇した。
「……わかったの」
警戒されていると知ったドラコは、少し落ち込みながら背を向けて距離を広げていく。
「はぁ、困ったの」
部屋の隅で頬に手を置き、困った様子のドラコ。
ちなみにアサオ視点でドラコの顔はずっと無表情のままだ。
ドラコは「うーん」と考えながら部屋を見渡す。
すると、机の上にあったある物が目に入ってきた。
「そうだ、アレがあったの」
早足でトコトコ歩いて、ドラコはいつもメイドが淹れて部屋に置いてくれる紅茶ポットを手に取る。
いつも無糖で紅茶を飲むため、ポットと一緒に砂糖はついておらず、テーブルの上にはカップと皿が一つだけ置かれていた。
「ふふん、これでアサオの警戒も解かれるの」
無表情だが、ドラコの声が少しだけ明るくなる。
「このカップは使わないの、アサオとお揃いのにするの」
互いに同じカップで紅茶を飲んで、アサオに落ち着いてもらおうと考えたドラコは、すぐ近くの棚から同じ形で模様の色だけ赤と青で違う二つのカップを手に取る。
「ばっちりなの、お揃いなの」
無表情だが心はうきうきした状態で紅茶を注ぎ、こぼさないようにゆっくりアサオへと持っていくドラコ。
「アサオ、これを飲むの」
と言って、ゆっくり、慎重に国王の近くに紅茶の入った赤い模様のカップを置いた。
だがそんな些細な行動でも、国王はますます警戒を強めた。
「フシャァァァァァ、国王に毒入り紅茶を飲ませる気か!」
「違うの、ドラコはアサオに紅茶を飲んで欲しいだけなの」
顔を横に振って否定するが、常に無表情なドラコはアサオにとって何を考えているのか分からず、
「飲んでたまるか!」
「あっ」
体を伸ばして放ったアサオの猫パンチによってカップは割れ、紅茶は床に全部こぼれた。
「残念……なの」
無表情だが、内心落ち込むドラコ。
アサオの警戒心を解くまで、まだ時間がかかりそうだ。
最近ひえる。
そんな日はおでん食べるか( ̄▽ ̄)




