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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 5
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顕現


 それは、かつて幸太郎が初めてモコと出会った時に見たもの。



誰かが、霊界の側から門を開こうとしているのだ。





(カルタス達か???)





幸太郎が、そう思った瞬間、頭の中に声が直接聞こえてきた。





「聞こえますか? 幸太郎様。我らは左鬼と右鬼です。


今、冥界から『交信』を使い、話しかけています」





「左鬼さんと右鬼さんですか!? 確か・・・」





「はい、一度、地獄の裁判所前でお会いしております。


もっとも、言葉を交わすのは、これが初めてです」





そして、左鬼と右鬼は急いで幸太郎へ告げた。





「詳しい説明は後です。『冥界門』を開いて下さい。


そこにいる地獄の亡者を、連れ戻しにいきます!」





「わ、わかりました!」





事情はわからない。だが、『助かるかも』と幸太郎は思った。



『冥界門』を開くことに異議などあろうはずもない。



幸太郎はモコたちがカース・ファントムに喰われるのだけは、



何としても避けたかったからだ。





幸太郎は、改めて自分がモコたちを



好きになってることに気が付いた。








「開け! 『冥界門』!!」








幸太郎が叫ぶと、幸太郎の胸から緑色の光が空中へ飛び出した。



その光は広がって、2つの輪を作り、その中を光が走って



八芒星を描いた。





その八芒星が血のように真っ赤になり、開いてゆく。





この光景を見たカース・ファントムは驚きの声をあげた。





「な、なんだと!? それは・・・それは『冥界門』か!!


くそっ、とんだ食わせ者め!」





カース・ファントムは『病苦の瘴気』を中止して、



上空へ逃げようとした。しかし、その時、澄んだ音色が



辺りに響き渡る。





『シャリーーーン・・・』





『冥界門』から誰かの左手が飛び出していた。



いや、人間の手ではない。



大きく、岩のような鬼の手だ。



その左手には『神楽鈴』に似た、



たくさんの鈴が付いた棒が握られていた。





上空へ逃れようとしていたカース・ファントムは、



いきなり『何か』にぶつかった。



それは光のドーム。



『理力結界』に似ているが、大きさが全然違う。



ドームの中には、幸太郎とカース・ファントムだけ。





「な、なんだ、これは!? くそっ、こんなもの・・・」





カース・ファントムは必死に光のドームを打ち破ろうと、攻撃した。



だが、爪も、『病苦の瘴気』も、『呪いの黒炎』も、



全てが跳ね返される。





幸太郎の脳内に、再び『交信』で左鬼が話しかけてきた。





「幸太郎様、我らは元より冥界の者。


命も肉体も持たない我々は


物質界では、これで限界。


これ以上の力が振るえないのです。


この結界も長くは維持できません。どうか、我らに、


幸太郎様の力を貸して頂きたい」





「わかりました。具体的には何をすればいいのですか?」





「ただ、一言・・・『仏身変化<ぶっしんへんげ>』と


唱えてください」





「了解です・・・『仏身変化』!!」





幸太郎が、そう唱えた瞬間・・・



幸太郎の意識は左鬼と右鬼の意識と接続され、混ざった。





幸太郎は、目を閉じ、『破魔の陽光』を中断し、合掌した。



すると、開いた『冥界門』から、大きな鬼が2人飛び出してくる。



左鬼と右鬼だ。



そして彼らも合掌すると、大きな体は煙となった。



左鬼と右鬼の煙は渦を巻き、幸太郎の体へと吸い込まれていく。





幸太郎は左鬼、右鬼の意識と共に祈った。





『力が欲しい。みんなを守る力、


地獄の邪霊を打ち破る力が。


どうか我らに破邪の力を与え給え・・・』





幸太郎の体が白い光を帯びた。



そして額に『神虹』の時のような光輪が輝く。



その光輪は次第に強烈な光を放ち始め、



ついにダンジョン最下層の時のような十六本の光条が伸び、



辺りを光で満たした。





後方で見ていたバーバ・ヤーガが驚きの声を上げた。





「これは! なんと凄まじい霊力!!


・・・来る!


天より降り給うぞ。これは『高次元の神霊』じゃ!!」





そして左鬼と右鬼を吸収した幸太郎の姿に変化が起きたのだ。





幸太郎の体から鎧が浮き上がり、髪が長く伸びてゆく。



幸太郎の背中から4本の腕が生えてきた。



それは左鬼と右鬼の腕。



左右2本の腕がそれぞれ『破邪の剣』を持ち、



残る右手が『羂索(捕縛縄)』、



残る左手が先ほどの『鈴』を持っていた。





幸太郎の顔の横に左鬼と右鬼の顔が浮き上がる。



額の光輪が大きくなり、少し後方へ下ると、



そのまま輝く『後光』となった。



そして、最後に幸太郎の額から大きな角が1本、生え、強く輝いた。





もはや意識は幸太郎ではない。そして左鬼と右鬼でもなかった。



魂と霊体の次元階層移行現象が発生。



生者でもなく、死者でもない、



次元境界線を自由に超越できる存在へと変貌したのだ。





そして天に轟き、大地を揺るがす、大音声が響き渡った。








『  顕現!! 三面金剛鬼神!!  』








幸太郎の顔が唱える。





「ふるへゆらゆら」





左鬼の顔が唱える。





「ふるへゆらゆら」





右鬼の顔も唱える。





「ふるへゆらゆら」





合掌したままの幸太郎は・・・いや、金剛鬼神は



カース・ファントムへ告げる。





「観念するがよい。ここに我が顕現した以上、


もはや逃れることはできぬ。


その醜い魂を地獄へ送り返してくれよう」





カース・ファントムは、明らかに怯えていた。



慌てて周囲を見回しているが、



『鈴』が作り出した光の結界は



ほころび1つもありはしない。





「う、うう・・・うう・・・ウオオオオオ!!!」





カース・ファントムは、『鈴』の破壊を試みた。



『呪いの黒炎』を金剛鬼神へ数十発乱射する。



しかし、2本の『破邪の剣』が全て、いとも簡単に切り裂く。



切り裂かれた『呪いの黒炎』は、全て霧散。消滅した。





「き、消えろっ、消えろぉぉーーーー!!」





今度はカース・ファントムの全身が黒く輝き、



真っ黒い炎が竜巻となって金剛鬼神へ襲い掛かる。



『黒炎の奔流』だ。





しかし、金剛鬼神は悠然と破邪の剣を十字に組み、叫んだ。





「喝ッ!!」





ただの一喝。ただ、それだけで黒い炎の竜巻は霧散した。



金剛鬼神は、ただの気合だけで、かき消したのだ。



そのあまりの実力差にカース・ファントムは



恐れおののいた。





「い、いやだ! 地獄へは戻らぬ!!」





カース・ファントムは、全身から



『病苦の瘴気』を全力で噴き上げた。



それはもはや、台風と言っていいほどの狂った暴風。



今度は光の結界を瘴気で満たし、



内側からパンクさせようとしたのだ。





ところが、カース・ファントムが『病苦の瘴気』を



全力で放出しているのに、一向に瘴気が濃くならない。



むしろ、どんどん薄くなり、清浄な空気になっていく。





カース・ファントムは、周囲を見回し、



思い通りにならない事に



明らかに驚きの表情を浮かべた。





その理由は簡単。幸太郎の左右にある、



左鬼と右鬼の顔が大きく口を開き、



ものすごい勢いで瘴気を吸い込んでいたのだ。





幸太郎の目が、カース・ファントムを睨む。



金剛鬼神は怒りのこもった声で叫んだ。





「愚か者めっ! そんな児戯が我に通じるとでも思ったか!


もはや、いかなる悪の力をもってしても、


この体を傷つけるに能わず!


その増上慢を打ち砕いてくれるわ!!」






私も、ちょっとゴールデンウイーク休みをいただきます。


一週間くらいの予定。

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