幸太郎の悲鳴
幸太郎の手から体へ、嫌な感触が突き抜ける。
ミチミチ、ブチブチと何かがちぎれる音が剣から伝わる。
だが、幸太郎は突き刺した剣をさらにねじった。
盗賊の下腹部辺りから大量の血が噴き出す。
盗賊は皮の鎧を着ているが、これなら鎧は無意味。
(間違いなく致命傷!)幸太郎は悲鳴を上げる盗賊を見た。
そして幸太郎は馬車の向こうの3人を確認する。すでにゾンビの2体は
盗賊の1人を押し倒して噛みついていた。
首のあたりから血しぶきがあがっている。
スピードのないゾンビを2体1組であたらせたのは正解だったようだ。
残る2人は顔の周りを乱舞するゴーストにパニックになって
剣を振り回していた。足止めは成功。
(いける! これで盗賊はあと2人! 自分は牽制だけに絞って
ゾンビにメインで攻撃させれば・・・)
そう思って歩き出した瞬間。幸太郎は悲鳴をあげることになった。
幸太郎は左の膝に深く、深く、食い込む剣を見た。
「ぎゃああああああああ!!!」
幸太郎の悲鳴が響きわたる。
これは幸太郎の油断ではない。
単純に幸太郎には『実戦の経験が無い』ことが原因だった。
(C)雨男 2021/11/08 ALL RIGHTS RESERVED




