表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 5
987/1045

外堀


「小僧、何やらカーレで大活躍したようじゃの。


あたしの所にも『黒フードのネクロマンサー』が


ゴブリンの巣穴を殲滅したという噂は届いておる」





「アルカ大森林の中部まで噂は広がっているのですか?


そんな大事件じゃなかったと思っていましたが・・・」





「まだまだこの世界とは感覚がズレておるのう。


まあ、詳しい話は小狼族の村で聞かせてもらおうか」





「よし、怪我人、病人の治療は終わったようじゃな、幸太郎殿。


では、参ろうぞ。小狼族の村で今夜は宴を開くと言っておる」





モーリーが幸太郎とバーバ・ヤーガを空間転移で村へと連れて行った。








まだ日が暮れていないのだが、小狼族の村では



すでに宴が始まっていた。



幸太郎はバスキー、ポメラ、パグル長老と会うのは久しぶりだ。



意外なところでは、幸太郎が奴隷から解放した



狸人族の姉妹がいた。料理を・・・というか、うどんを作っている。



彼女たちはギブルスの『アルカ大森林支店第一号の店』を取り仕切っていた。



うどん屋であり、出汁を取るための魚の干物を販売している。



ギブルスの『乾物屋』はアルカ大森林へ輸出していたのだ。





そして、チワがちょこちょこと走ってきて、幸太郎に飛びつく。



幸太郎がチワをだっこすると、



チワは幸太郎に『ぎゅ~~っ』と抱きついた。



チワが幸太郎の肩車の定位置についたところで、



バスキーとポメラがやってきた。





「やあ、幸太郎君。大活躍しているようだな。話はさっき


モコから聞いたよ」





「いえ、こちらこそすいません。お嬢さんを危ない目に


合わせてしまって」





「はっはっは、何を言う。おかげでモコは随分強くなったじゃないか。


先程手合わせしてみて、驚いたよ。これからもガンガン


連れまわしてやってくれ」





なんとモコはバスキーの後ろをとったという。



まあ、結局、一太刀たりとも、当たらなかったのだが。



しかし、ポメラは困った顔で幸太郎に謝ってきた。





「ごめんなさいね、幸太郎さん。モコは剣の腕前しか


上達してないようで、料理や裁縫なんかは、


全然練習してないみたいなの・・・」





「ちょっと、お母さん! 今、そんな話しなくていいでしょ!」





モコが慌ててやってきた。顔が真っ赤。



エンリイやファル、エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイドも笑いながらやってきた。





「さあ、みな揃ったようじゃ! 


日は暮れておらぬが、宴を始めようぞ!」





宴は事実上もう始まっていたが、改めて



パグル長老とクロブー長老が宴の開始を宣言。



幸太郎たちの活躍を酒の肴に、話が盛り上がる。








時間は少し戻って、今日の昼間。



幸太郎が怪我人や病人の治療を始めたころ、すでにモコたちは



ジュリアの空間転移で小狼族の村に到着していた。



モコとポメラが抱き合って再会を喜ぶ。



幸太郎がいないので、



弟のレオも近寄ってモコとの再会を喜んだ。



やっぱりレオは大好きな姉を奪っていった幸太郎が、



イマイチ気に喰わない。





「あらあらまあまあ、義理の娘が6人になっちゃうなんて、


幸太郎さんはモテるのね」





エンリイ、ファル、エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイド。



全員照れている。しかしクラリッサが照れながらも



『まだまだ』と否定した。





「まだ、そこまでいってませんよ。



まずはモコとエンリイ、ファルの



3人がきっちりコウタロウと結婚してからです。



あたいたちは、その後その後。ナイショで進めないと、



コウタロウがびっくりして逃げちゃいます」





エーリッタも同意した。





「幸太郎さんは、かなりオクテだからさー。まだ時間かかりそうよね。


普通の男なら、とっくに結婚しててもおかしくないのに。


なんか常識外れなところ、あるわよね」





『常識外れ』という所で、モコ、エンリイ、ファルはドキッとした。



幸太郎は異世界から来た男だからだ。








かつてギブルスは、幸太郎が持てる妻は3人までだろうとの見解を



イネスに示している。そのギブルスの見立ては別に何も



間違っていない。ギブルスの独断ではあるが、



幸太郎という人間の性格を考慮した結果だ。



そう、幸太郎『だけ』を見た判断。





しかし、当の幸太郎自身は『本当に俺なんかでいいのか?



もっとカッコイイ男が現れたら・・・』とクヨクヨ悩んでいる。



幸太郎は自分に自信が無いし、



そもそもあまり自分を信用していない。





だが、現実は非情だ。





簡単に言うなら、



『世界は幸太郎を中心として回っているわけではない』のだ。



現状、幸太郎はモコとエンリイに対してすら迷っている。



ギブルスは『妻は3人まで』という見立てから、



ファルネーゼを3番目の妻の座に加えるように



モコとエンリイには説得、根回し済み。



だが、エーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドには



『そんなの知った事か』程度の話である。



当たり前だが、彼女たちには彼女たちの気持ちがあり、心がある。



何でも言う事を聞くような、



幸太郎に都合のいい操り人形ではないのだ。



『幸太郎さんの代わりになる男が、どこにいるってんの?』と



全員思っている。



そして、この死が近い異世界では、



『妻たちが共同で夫を所有する』文化があった・・・。





幸太郎の知らぬ間に、着々と外堀は埋まりつつある。








『カーレでの活躍』の話の前に、バスキーが割り込んできた。





「モコ、まずはどれくらい強くなったか見せてくれ。


足の運び、重心の移動、体の芯のブレが無い。


今までとは段違いに強くなったようだな?」





バスキーは嬉しそうだ。ロイコークたちを殺した後、



薬を作りに一度小狼族の村へ戻っている。



その時に『修行をする』とモコが宣言したからだ。



しかも、バスキーの目から見ても、



モコは明らかに以前とは別人と言える強さを身に着けていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ