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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 4
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孤児院を見に行こう


 幸太郎たちが会議室の外へ出ると、



ギブルスが、ひょっこりと姿を見せた。相変わらず耳が早い。





「こんにちは。ギブルスさん。晩御飯でもいかがですか?」





幸太郎から先に声をかけた。





「ひっひっひ、何やら、またも大活躍だったようじゃのう。


ご馳走するぞ、うどんでも食いながら話を聞かせておくれ」





幸太郎たち、エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイドも



一緒にギブルスのうどん屋へ行くことになった。





冒険者ギルドは忙しそうだ。明日の調査隊の編成。護衛の選抜。



キャサリン支部長は正装して、グリーン辺境伯に報告に行くらしい。



各部署の責任者も、奥の職員専用大会議室で、



今後の対応を話し合うとのこと。



そして、幸太郎たちからは見えないが、



おそらく念話で『黒フードのネクロマンサー』出現の情報が



近隣の冒険者ギルドへ伝えられているはず。





ルークたちも金目のものをギルドへ預け、



さっさと孤児院へ帰っていった。



冒険者ギルドは『ロッカー』程度のスペースを有料で貸し出している。



もちろん、お金を追加すれば、複数のスペースを借りることが可能。



これも預けた物は本人以外は取り出せない。



本人が帰ってこなければ、



中身は全てギルドが没収してしまうから。



『ルークに頼まれて取り出しにきました』は一切通じないのである。



持って帰った武器や装飾品を孤児院へ持ち込めば、



泥棒や強盗のターゲットになるだろう。



ルークたちの選択は正解だ。





ルークたちの背中を見送った幸太郎は、



明日、孤児院へ行ってみようと思っていた。








場所は変わってギブルスのうどん屋。奥の従業員用食堂だ。



まずは、今日の『ゴブリンの巣穴探索』の一部始終を話す。



もちろん、『黒フードのネクロマンサー』出撃も話した。



ギブルスも顔が曇る。





「・・・ううむ、まさか、そんな大規模な


ゴブリンの群れが住み着いていたとはのう・・・。


さすがに笑い事ではないわ・・・。


幸太郎の言う通り、ゴブリンどもの目標はビエイ・ファームか、


このカーレだった可能性が高い、


いや、どのような経過を辿ろうと


最後は必ずやって来るはずじゃ」





「あたしたちもさー。最初、幸太郎さんから話を聞いた時は、


大げさな気がしてたんだけど・・・。まさか、あんな


大規模な群れが接近してたなんてね」





「毎度のことっちゃ、毎度のことなんだけどー。


幸太郎さんには、かなわないわ。あははは」





エーリッタとユーライカは『ケラケラ』と笑った。



笑い事じゃないっちゅーに。





「あたいたちは事情を聞いてなかったんだけど、


確かにこれは『黒フードのネクロマンサー』が出撃するべき


事件だったよな。130匹ものゴブリンの群れなんて、


あたいらじゃ、どうにもならないよ」





「わ、私も、そう思う・・・」





クラリッサとアーデルハイドも、しきりにうなずいた。



モコとエンリイは『すごいよね、すごいよね』と喜んでいる。





一応、この後幸太郎から『最下層』の戦いについて、



一通り説明があった。



情報は出来るだけ正確に共有しておくべきなのだ。



中でも『ゴブリンメイジ』に3つの上位種があることは



世間に知られていない情報だった。



何しろ見た目では区別できないから。



そして、この情報は公開できない。



『鑑定』を持っている人間しか知りえない内容なのだ。



何しろ、今まで知られていなかったということは、



これらの上位種に出会った人間は、



ほとんど全滅しているということを意味している。



それはそうだろう。ゴブリンに『サモナー』や



『ネクロマンサー』がいるなど、完全に想定外で、



B級冒険者でもない限り、勝つどころか、逃げることさえ



至難の業だったはずだ。



それに『罠』の設置の仕方など、



並みの冒険者などより、はるかに頭が良い。



そしてB級冒険者などが倒したとしても、



そのゴブリンが『知られていない上位種』とは



見た目で判断がつかないのだ。



ギルドに報告しても『召喚術を使う変種がいた!?』から



『真偽不明』で止まってしまう。



類似した報告例がほぼ無いから。








ゴブリンの巣穴についての話は終わり。情報の共有は完了した。



そして、ギブルスが笑顔で質問する。





「それでユタでの用事は万事うまくいったかの?


なにやら『死にかけた』そうじゃないか。


ひっひっひっひっひ」





情報が早い。どうやらすでに『何があったか』を



イネスから聞いているらしい。



幸太郎としては聞かれたくない話だが、



この後の『血も涙もない作戦』の発端だから、



情報の共有はしておく必要がある。





(俺が死にかけて、モコ、エンリイ、ファルネーゼ様に


温めてもらった事は・・・知られたくないんだけど・・・。


無理、か。すでにギブルスさんが知ってるし。トホホ)





そんなことを言っても、そもそも自業自得だから仕方ない。



魂に亀裂が入って、冷たくなっていく幸太郎を



モコたちが温めてくれたからこそ、



ギリギリ、助けが間に合ったのだ。



しかも、救ってくれたのはムラサキ。



最初から最後まで、女性たちが頑張ってくれただけで、



幸太郎自身は意識が無くて、



ただベッドで死にかけてただけなのである。



幸太郎自身は何もしていない以上、



素直に『ありがとうございました』と言うしかない立場だ。








幸太郎はモコとエンリイに説明を任せた。



そして、幸太郎が死にかけた部分の話になる。



幸太郎は耳まで真っ赤になり、



頭を抱えてテーブルに轟沈。汗が止まらない。





それを見たギブルスは小さく首をふって呟く。





「若い・・・若いのう・・・」





エーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドも、



にまにま笑いながら幸太郎をからかう。





「あたしたちも行けば良かったねー」





「ベッドが狭くなっちゃうから、もっと大きいのが必要ねー」





「そうだな、あたいも助けてもらった恩返しができたのにな」





「今度はついて行こうね、クララ」





幸太郎は恥ずかしくて、真っ赤になって死にそうになっている。



幸太郎は女に免疫が無いのだ。





「はいはい、みんなその辺にしてね」





「そうそう、その時は本当に大変だったんだからね」





モコとエンリイが助け舟を出した。しかし、この2人にしても、



本当の意味では幸太郎の味方ではない。



モコとエンリイは邪悪な笑みを浮かべて内心つぶやく。





『ほっぺにキスしまくったことを知っているのは、


ボクたちだけで充分なのよ・・・』








とりあえず、その話は終わり、続いてオーガス教の聖騎士と



ゲーガン司祭に襲われた話になると、空気は一変した。





「コナのオーガス教の教会が、人狩りの巣窟になっておったのか。


あの近辺は以前から人狩りや盗賊が多い地域ではあったのじゃが・・・。


しかも、常駐していた聖騎士マラケシコフは


オーガスから力を与えられた者、


『オーガスのオモチャ』だったとは。


人狩りが多い事が、聖騎士が常駐する理由のはずだったのに、


まさか、その聖騎士が人狩りの幹部とは、誰も気付くまいて。


これは捨ててはおけんのう」





「あたしたちも人狩りに捕らえられた経験があるけどさ、


こんな大規模で長期間なら・・・


被害者はもっといるんじゃない・・・?」





「人狩りってさ、普段どこにいるのよって思ってたけど、


まさか教会が丸ごと人狩りと人身売買をしていたなんて」





「ムカつく奴らだねえ・・・」





「ゆ、許せない! やっつけようよ!」





皆、怒っている。クラリッサとアーデルハイドは、



今にも武器を取って殴りこみに行きそうな勢いだ。





「まあまあ、もう手は打ったから、みんな落ち着いて」





幸太郎が苦笑してみんなをなだめる。



そして、『血も涙もない』外道な作戦を



すでに進めている事を説明した。





女性陣は全員ドン引き。



もちろん、モコとエンリイはすでに知っているから驚かない。



しかしギブルスさえも、眉をひそめた。



まさに悪魔のような邪悪な計画である。



ただ、ギブルスは止めようとはしない。





「・・・いや、むしろ、これでいいのか。


今後、このような事が起きないようにするために


『抑止力』として働き続けるじゃろう。


オーガス教の信者が大勢死ぬが、


『尊い犠牲』になってもらおうかの」





ギブルスは苦笑しながら、



結局、幸太郎のサイコな計画に賛成した。



確かに『一罰百戒』、神の名で商売する人々に対して



薬にはなるだろう。





『幸太郎さんって、怒らせると怖いなあ・・・』





エーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドは



揃って、そんな感想を持った。








次に、幸太郎はルークたちの『孤児院建て直し』計画に



協力すると明言。全員に協力を求めた。





「ただ単純に俺が金を出しても意味が無い。


そこで、ちょっとイベントをやろうと思ってね。


孤児院にも継続的にお金が稼げるようにしたい。


すまないが、エーリッタ、ユーライカ、


クラリッサ、アーデルハイド、全員しばらく冒険者は休業して、


こっちに参加して欲しいんだ。そして、今回は


ギブルスさんと、ジャンジャック、グレゴリオ殿にも


一枚嚙んでもらおうと思ってる。


ギブルスさんは特に商人ギルドを騙してもらうために


ご協力をお願いします。大丈夫です、


がっぽり儲かる様にいたしますから」





幸太郎は計画とイベントの内容を説明した。





「ひっひっひっひっひ、それは何とも面白そうじゃのう!」





ギブルスは大喜びで協力を快諾した。



女性陣も『楽しそう』とオーケー。



まあ、『血も涙もない』作戦よりは、はるかにいいだろう。





「じゃあ、まずは明日、孤児院を見に行こう」





幸太郎は微笑んだ。全員がドン引きする作戦を立案したとは



思えない明るさ。まさにサイコ。





「おお、そうじゃ。幸太郎、ちょっとダンジョンで倒した


コカトリスの羽毛を見せてくれんか?」





「え? いいですよ。はい」





いきなりのギブルスの要請だが、幸太郎は快諾する。





「うむ。良いものじゃな。ありがとう、もういいぞ」





ギブルスはニンマリと笑ってコカトリスの羽毛を返してきた。



幸太郎はよくわからないが、ギブルスは妙に嬉しそうだった。





「このコカトリスの羽毛について、ちと相談があるんじゃ。


実はな・・・」





ギブルスは幸太郎に事情を説明して、



イベントに組み込んでもらうように頼んできた。



もちろん幸太郎は快諾する。






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