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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 4
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ゴブリンの巣穴 13


 時間は少し戻って、幸太郎たちが巣穴へ向かった後のルークたち。



最初の内、ルークたちはしっかり周囲を警戒していた。





しかし、5分もすると、『幸太郎さんたち大丈夫かな?』と言い出し、



10分もすると『まさか、やられちゃったんじゃ・・・』と



心配しだした。





「なんだい、なんだい、ボーヤたち、我慢が足りないよ?」





クラリッサが、あきれてボヤく。





「なっさけないわね~。一流の冒険者やハンターは、


待つべき時は待つものなの! 大人しくしてなさい」





エーリッタも呆れた。まあ、ある意味仕方ないのかもしれない。



何せ、ルークたちは日本で言えば中学生くらいなのだから。





「私たちが警戒しとくから、あんたたちは座ってなさい。


なんなら、寝ててもいいわよ?」





ユーライカが少し、からかうように言った。



さすがに『寝ててもいい』と言われ、



ルークたちも自分たちの集中出来てない心を反省した。



大人しく周囲の警戒に専念する。





それからしばらく、何も起きなかった。



ただ、雲が緩やかに流れてゆくだけ。



タゴーサクが1つ、あくびをした。



しかし、その瞬間、エーリッタとユーライカが鋭い警告を発した。





「何か、森の中を走ってくる!」





「複数の方向。進んでる向きはバラバラ・・・


この近くに来るのは・・・2! 


右方向、おそらく、ゴブリンよ!」





エーリッタとユーライカが幸太郎たちが入って行った道の、



さらに右の方向を指さす。



すると、次第に『ガサガサ』という



森の中をかき分けて走ってくる音が、



ルークたちにも聞こえるようになってきた。





そして、森の中からゴブリンが2匹、飛び出してきた。



慌てて走ってきたのか、



2匹とも小さな擦り傷や切り傷ができていた。



そして、エーリッタたちを発見。



ゴブリンたちは下品な笑顔を浮かべた。



こちらにはエーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイド、合計4人の女性がいるからだ。





だが、すぐにゴブリンたちは悲鳴を上げる。



エーリッタとユーライカの矢がゴブリンたちの足や腰に



深々と刺さったからだ。



彼女たちは、いちいちゴブリンの



ペースに付き合う気などさらさらない。



そんなことをしたって、何のメリットも無い。





「そら! ボーヤたち、ボヤボヤしないで止めを刺してきな!」





クラリッサが大きな手で、ルークたちの背中を叩く。





「よ、よし! 任せて下さい! みんな! やるぞ!」





ルークたちが剣を構えて走り出した。



と、言っても、すでにゴブリンは動けない。



大した危険などありはしない。





「やったぞ! 2匹仕留めた!」





「耳だ、耳を持って帰るんだ! 左耳だぞ。


金になるかもしれない!」





ルークたちがゴブリンの耳を切り取ろうとした時、



エーリッタとユーライカから怒鳴り声が飛んだ。





「ちょっと! あんたたち何やってんの! 今度はこっち、


左側よ! 数は3! 


耳なんて、全部終わってからにしなさい!」





森から飛び出してきたゴブリン3匹を、



エーリッタとユーライカが間髪入れずに狙撃する。



命中! 



ゴブリンは全て転倒した。





「さあ! 油断すんじゃないよ、ボーヤたち!


2人1組で、きちんと対処するんだよ!」





クラリッサが檄を飛ばす。幸太郎がいなくても、



クラリッサが隊長をやってくれる。



クラリッサが幸太郎の仲間になった事は、



非常に運がいいと言えるだろう。



C級のエンリイも隊長はやれるだろうが、



今のエンリイは可能なら24時間ぴったり幸太郎に



くっついていたいからダメだ。





・・・モコ? モコは幸太郎の敵を皆殺しにすることしか考えていない。





負傷したゴブリンたちは、持っていたショートソードを



滅茶苦茶に振り回し、抵抗した。



しかし、立てない上に、ルークたちは4人だ。結果は決まっている。





「よっし、あと1匹だ!」





タゴーサクが興奮したように叫んだ。



だが、その時ルークたちは森の中から不穏な音を聞いた。



エーリッタとユーライカも警告を叫ぶ。





「大きいヤツが接近中! 多分、ホブゴブリンよ!


戻って!」





「え!? で、でも、あと1匹、それに耳も・・・」





欲がルークたちの判断を遅らせた。ホブゴブリンはルークたちの



予想を上回る速度で森から飛び出してきた。





ホブゴブリンが棍棒を横薙ぎ! 



ルークはラウンドシールドで受け止めたが、吹っ飛ばされる。



地面を2回転がった。



幸い腕が痺れるくらいで済んだが、代わりにラウンドシールドが



壊れてしまった。





ホブゴブリンの後ろに回り込んだイサークとヨサークが



ショートソードで斬りつけたが、効果が薄い。



2人の剣が壊れてしまったからだ。



イサークは剣が折れた。ヨサークの剣は柄が壊れた。



ルークたちはホブゴブリンと戦うのは初めてだ。



ギルドで図鑑は見たが、これほどとは思っていなかった。



ルークたちが思っていたよりも、



はるかにホブゴブリンは頑丈なのである。



そして、ルークたちの武装は全て中古の安物。



元々長持ちはしない。





「私が!」





ホブゴブリンが飛び出してきたのを見たアーデルハイドは、



即座に走り出していた。



エーリッタとユーライカは弓を構え、フォローの態勢を取る。





しかし、フォローは必要無かった。





ホブゴブリンの棍棒をアーデルハイドはラウンドシールドで受け止める。



そして、走って来た勢いのまま、右肩で強烈な



ショルダーチャージ!





今度はホブゴブリンが吹っ飛び、地面を転がった。



そして、ホブゴブリンが最後に見たのは、アーデルハイドが



金棒を振り上げる姿。ホブゴブリンの頭は変な音をたてて、



潰れたトマトと化した。





「よし! いったん戻りな! 耳は後だよ!」





ルークたちも、慌ててクラリッサの所へ戻る。



何しろ、剣や盾が壊れてしまった。ホブゴブリンのパワーと



頑丈さにも冷や汗をかいている。








「・・・もう、あれから何も来ないね・・・。


エーリッタ、ユーライカ、何か聞こえるかい?」





「うーん、あれっきり、全然何も聞こえないわね・・・」





「森の中も静かなものよ? さっきので最後みたい」





ホブゴブリンの襲来の後は、全く何も現れなかった。





全員で『ふぅ』と一息つく。ルークたちはホブゴブリンに驚いていた。



やはり見ると聞くとでは大違いだと苦笑い。



逆にエーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドは



逃げてきたゴブリンそのものに驚いていた。





(巣穴は壊滅したみたいだけど・・・)





(一匹も来ないと思ってたから、ちょっとびっくり・・・)





(このゴブリンは最初から巣穴の外にいた奴らだろうね)





(『外』に、ホブゴブリン・・・。この、巣穴は、


かなり大きな群れ、かな・・・?)





ルークたちが『もう大丈夫』というクラリッサの声を聞き、



ゴブリンの耳を集め始める。



と、そこへモコが戻ってきた。





「みんな、ちょっと来て。巣穴は見つかった・・・というか、


壊滅したみたいなんだけど・・・」





「壊滅ですか!? 幸太郎さんたちが、倒したんですか!?」





ルークたちの質問にモコは首を振る。





「それが・・・私たちより先に来ていた人がいたみたい。


救出された女性たちが言うには・・・、


なんと『黒フードのネクロマンサー』が単独で巣穴を


壊滅させたみたいなの・・・」





『黒フードのネクロマンサーが!?』





ルークたちが声を揃えて驚愕の声をあげた。






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