表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 4
975/1045

ゴブリンの巣穴 12


 モコとエンリイは、幸太郎と別行動になった後、



まずは徹底的に道中のゴブリンを殲滅した。



モコは『ソナー』を全開にし、索敵。死にかけでも念入りに止めを刺す。



特に『脱出口』は後で幸太郎が使う。モコは自ら穴へ入り、



外に出るまで隈なく調べた。



エンリイも最初の入り口から外へ出ると、



元から巣穴の外にいたと思われるゴブリンを発見。



その中にホブゴブリンが1匹いたが、



『如意棒』で念入りにミンチにする。





「巣穴の救援に戻ってきたゴブリンは・・・これで最後かな?」





そこへ『脱出口』から外へ出たモコが走って来た。





「どう? モコ。 他にゴブリンはいた?」





「大丈夫。『脱出口』からこっちには1匹もいないわ。


でも、巣穴の陥落を知ったゴブリンが逃げてゆくような


音は森から聞こえたわ。最初から外に何匹かいたみたいね」





「エーリッタたちの方へも、行ったかな」





「さすがに、森の中ではどこへ行ったかまでは、聞こえないわ。


でも、あの4人なら大丈夫でしょ」





モコはルークたちは戦力に数えていない。ひどい。





「じゃあ、あとは幸太郎サンが戻ってくるのを待つだけだね」





モコとエンリイは、来た時の道をたどり、森の中から



巣穴の入り口の様子をうかがった。








待つこと、ほんの3分程度。囚われていた女性4人を



お姫様だっこでゾンビが抱えてきたのが見えた。





ゾンビたちは女性たちを優しく地上に降ろすと、



胸に手を当て、深々とお辞儀する。



そして、巣穴の中へと戻って行った。





「さすがだね、幸太郎サン。早い早い」





「当然よ。ゴブリンごときがご主人様に盾突くなんて


1000年早いわよ」





モコが大威張り。





「あとは幸太郎サンが脱出口から出てくるだけ。


ルークたちは大人しくしてるかな?」





「今の所何も聞こえてこないから、大丈夫だと思うわ」





モコとエンリイは、『脱出口』の出口の方角を注視した。








幸太郎は『脱出口』から外へ出ると、急いで着替え。



仮面を外し、黒フードと共に『マジックボックス』へ放り込む。



そして、来た時に着ていた服と靴に戻した。





(急げ、急げ・・・)





そして、次は森の縁を走って、モコとエンリイが待機してる



場所へ急ぐ。モコとエンリイが手を振るのが見えた。





「お待たせ。ふぅ、ふぅ、様子はどう?」





「お疲れ様でした。周囲にゴブリンは1匹もいません」





「幸太郎サン、あの女性たちはなんで座ったままなの?」





「・・・アキレス腱を切られていたんだ。歩けないんだよ・・・」





モコとエンリイの顔が曇る。同じ女性同士、幸太郎よりも、



その辛さが容易に想像できるのだろう。





「任せろ。全部きれいさっぱり、跡形もなく治す」





モコとエンリイは嬉しそうな顔をした。2人のしっぽを見れば、



本当に喜んでいることがわかる。





「・・・よし、息も整ってきた。じゃあ頼むよ、


モコ、エンリイ」





「了解です」





「オッケー」








モコとエンリイは、森からそっと姿を現し、いかにも



『今来たとこ』という感じで周囲を見る。



そして、『あっ』と声を出し、



自分たちが『今』到着したことを知らせる。



女性たちも、モコとエンリイの方を見た。





モコとエンリイは、周囲を慎重に警戒しながら女性たちに近寄る。





「私たちはカーレの冒険者です。このゴブリンどもの死体は?


もしかして皆さんは囚われていたのですか?」





「はい。私たちはゴブリンに捕まっていました。


『黒フードのネクロマンサー』様が、私たちを救って下さったのです」





「「『黒フードのネクロマンサー』!?」」





モコとエンリイは、驚いた演技をする。さらに、慌てて



周囲に小太刀や棍を向け、警戒した。もちろん、演技。





「『黒フードのネクロマンサー』様に


賞金がかかっているという話は聞きました。


ですが、あの方は、そんな悪人の誹りを受けるような


人ではありません。あの方は、あの方は・・・、


私たちのために、本気で涙を流して下さったのです。


あの方は、神が私たちを憐れんで地上に遣わされた、


天使に違いありません」





モコとエンリイは、幸太郎が褒められて、思わず顔が



ニヤけそうになる。



しかし、それをやったら作戦が台無しだ。



なんとか我慢した。



そして、『頃合い』だと、幸太郎を呼び寄せる。





幸太郎は恐る恐るといった感じで、周囲を警戒しながら



女性たちの所へやってきた。





「ひどい傷だ・・・ゴブリンにやられたのですか?」





女性たちは無言でうなずく。本当は異性にこんな醜い姿を



見せたくはないのだろう。額や頬の傷を見られるだけでも



死にたくなるはずだ。





「・・・私は『ヒーラー』です。みなさんの傷を、


出来る限り治してみます」





「でも・・・私たちの傷は、もう・・・」





「諦めるのは、まだ早計です。こう見えて、私は


『黄昏の魔女』バーバ・ヤーガの弟子なのです。


私の魔法は師匠のオリジナルで、薬と併用することによって、


効果が増幅するのです。みなさんの傷も、治るかもしれません」





幸太郎はそう言うと、『マジックボックス』から油の入った壺と、



丸薬の入った小さな壺を取り出す。





「こちらの油は小狼族に伝わる秘伝の薬。そして、こっちは


ドライアード様が特別に調合なされた『森の秘薬』です。


2つの薬の相乗効果を利用してみます。少なくとも、


顔の傷は治るはずです」





救出された女性たちは、半信半疑という顔をしていたが、



『顔の傷が治る』と聞いて試してみることにした。





まずは丸薬を飲んでもらう。もちろん、これは小狼族の



子供たちが面白がって作った、ヨモギとドクダミの団子だ。



主成分はほとんど小麦粉。



塩と砂糖で少し味がついてて飲みやすい。





そして、『ガマガマフロッグの油』をモコとエンリイに



塗ってもらう。準備完了。



そして、幸太郎は唱える・・・








『神の魔法』を!








淡い黄金の光が傷を癒す。そして、それを見ていた女性たちが



歓声をあげた。





「傷が・・・消えてゆく!! 治ってる! すごい!」





「これがドライアードの秘薬の効果・・・?」





「私にも! 私にもお願いします!!」





『陽光の癒し』の効果により、女性の顔の傷は完璧に治った。



まるで『最初から傷なんてありませんでした』と言わんばかりに。





顔の傷が消えた女性は、歓喜の涙を流した。



ゆでたまごのようにつるつるになった顔を、何度も撫でている。





「さあ、続いて治しますよ。ドライアード様の薬の効果が



あるうちに、一気に完治させます」





救出された女性たちは、どんどん傷が消えてゆく。



腕も、背中も、お腹も、足も。



そして、切られたアキレス腱までも完璧に治した。



女性たちはシーツを纏ったまま、立ち上がり、



恐る恐る歩いてみた。





「ああ・・・また歩ける日が来るなんて・・・。


これは夢・・・? それとも奇跡・・・?」





幸太郎は微笑んで、それを否定した。





「夢ではありません。奇跡でもありません。


師匠の作った特殊な回復魔法、そして


小狼族の秘伝の薬と、ドライアード様の秘薬があればこその


確かな現実です。でも、治って良かった」





そして、幸太郎は救出された女性たちにお願いをする。





「それと、1つお願いがあります。


みなさんの傷が治ったことは内緒にして下さい。


実は、もうドライアード様の秘薬が残っていないのです。


あと残り2個ですね。


これはドライアード様しか作れない薬ですから、


お金を出せば手に入るといった性格の物ではありません。


ですから、『私の傷も治して欲しい』という人が大勢現れても、


もう治せません。本当に最後の、奥の手でした。


みなさんは『最初から怪我なんてしてなかった』と


いうことにして下さい。いいですね?」





救出された女性たちは笑顔でうなずいた。



心の傷まで治ったわけではない。



しかし、今は全ての体の傷が過去になったことを喜んでいる。



そう、せめて、それくらいは喜んでもいいはずだ。








幸太郎はモコに頼んで、エーリッタたちを呼びに行ってもらった。



もう、ルークたちが来ても大丈夫。



いや、最後の仕上げにルークたちに来てもらわないと困るのだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ