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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 4
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ゴブリンの巣穴 5


 森の中の小さな池、ジェムーンたちと調査に来た時、



ここでゴブリンの足跡を見つけた。





「新しい足跡は無い・・・みたいですね、ご主人様」





「うーん、俺にはよくわかんないなぁ・・・」





とりあえず、全員で付近を調査したが、ゴブリンは



見当たらなかった。





「どうも、今日は留守らしい。さて、次はどこを探そうか?」





モコはエンリイに尋ねた。





「エンリイ、どこへ行くべきだと思う? ここはあなたに任せるわ」





「・・・東・・・かな? 海側はビエイ・ファーム。


ビエイ・ファームの南には、開拓地の村が点在してるけど、


今の所ゴブリンに襲われたという報告は入ってないよね。


巣を構えているなら、まだ拡大中で、


人里から離れているんじゃないかな。


アルカ大森林側は、もう無人の草原や林だから、


そっちの方が可能性は高いと思うよ?」





ここはエンリイの意見に従って東を探索することになった。



前任者たち7人が、どこへ向かって行方不明になったか、など、



想像もつかないのだから。








森から出て、さらに東へ数分程度歩いた時、



前方に奇妙な物が見えた。



前方に新たな森が見えたのだが、



木に何か旗のようなものがかかっており、



風になびいている。





さらに近寄ってみると、それは旗ではなかった。



ボロボロのタオルが木に引っかかって揺れていたのだ。





「幸太郎さん、ありゃ、もしかして行方不明になった7人の


持ち物っスかね?」





イサークが周囲を見回しながら幸太郎に聞いた。





「それにしては、いささかボロ過ぎるようだけど・・・。


とにかく人工物なのは間違いないよな。


ちょっと調べてみようか」





幸太郎たちは近寄ってみる。確かにタオルだ。



風雨にさらされ、汚れてボロボロの状態。



やはり行方不明になった前任者の持ち物というには古すぎる。





「モコ、何か聞こえるか?」





「・・・いいえ、木々のざわめき以外には・・・」





「コウタロウ、とりあえず、この森を調べてみようぜ。


どうせ今の所何も手がかりが無いんだからさ」





クラリッサの言う事は、もっともな話だ。



どうせ今の所あてがない。





近くに大きめの獣道のような森へ入れる道があった。



とりあえずそこから森の中へ入ってゆく。





そして、入ってすぐ、前方の地面に銀貨が落ちているのを発見した。





「幸太郎さん、あれ、もらっていいかい?」





ヨサークが目を輝かせている。



しかし、幸太郎がストップをかけた。





「・・・どう見る? エンリイ、クラリッサ」





「・・・ボクは『誘い』だと思うよ」





「同感。ボロボロのタオルで遠くから人を呼び寄せ、


この銀貨で『ここを人が通った』と見せかけている」





エンリイ、クラリッサの意見は一致。『誘い』だという。





「モコ、周囲に誰かいるか?」





「いいえ、相変わらず、何も聞こえません」





「じゃあ、ゴブリンがいるとすれば、もっと奥か・・・」





とりあえず、前進することになった。銀貨はヨサークが



嬉しそうに拾った。汚れを払い、リュックに放り込む。



その時、アーデルハイドが声を上げた。





「あ! み、見て! 前方の、少し、右の木の上、


何か箱みたいな、物が!」





アーデルハイドが指さす方向に、確かに箱が



木の上に設置してあるのが見えた。



木の箱の中に、何か皿のような陶器が入っているのが見える。



さらに、箱にはロープが結んであった。





「へえ・・・ゴブリンって紐を結ぶことができるのか・・・。


賢いんだな・・・」





幸太郎は奇妙な方向に感心している。





「ちょっと、コウタロウ、変なトコに感心してる場合じゃないよ」





「ご主人様、あれは音が出る罠のようですね」





「ロープに引っ掛かると樹上の箱が落ちて、中の陶器が


割れるってやつだね。ボクがちょっと見てくるよ」





エンリイは慎重に近寄ると、地面を調べた。





「よくできたトラップだよ。足跡が少しあったから


ゴブリンで間違いないね。地面に少し穴を掘って、穴の上に


ロープを渡す、そして落ち葉などで隠すんだ。


誰かが穴を踏んづけるとロープが引っ張られて箱が落ちる。


箱の中には陶器が入っていて、それが落下の衝撃で割れると


こっちの存在がバレるって寸法さ」





戻ってきたエンリイは罠の詳細を全員に説明した。





「じゃあ、巣穴は近いと見ていいのかな?」





「うん、多分、この近辺にあると思う。音が聞こえる範囲に


少なくとも見張りがいるはずだよ」





「アイツら夜行性だから、今のうちに探そうぜ。


巣穴さえ見つけりゃ、任務完了だ」





クラリッサの意見に全員がうなずいた。



太陽があるうちなら罠も見つけやすいし、



夜行性のゴブリンは寝ているはず。



任務は巣穴を見つける事だけだ。ゴブリンと戦う必要は無い。





全員で慎重に進む。ルークたちは最後尾だが、



少し緊張しているようだ。



彼らは孤児院再建のためにも、絶対に死ねないから。





最初の罠を回避してから、わずか1分ほど。今度は木と木の間、



足元の低い位置にロープが張ってあるのが見えた。





「今度はストレートな罠だねぇ。夜ならともかく、


明るいうちに、こんな馬鹿正直な罠に引っ掛かるやつなんて、


いないだろ。所詮、ゴブリンの頭じゃ・・・って、コウタロウ?


あんた何見てんのさ?」





クラリッサはキョトンとした顔で幸太郎を見た。



その幸太郎は目を見開き、真剣な顔で左側、遠くを凝視している。





そして、幸太郎は全員に指示を出した。





「全員、俺を見るな。笑顔を崩すな。モコ、何か聞こえるか?


エンリイ、クラリッサ、アーデルハイド、誰かこっちを見てるか?


ルークたちは後方を見ててくれ」





ルークたちは怪訝な顔をして、幸太郎に質問しようとした。



しかし、それをモコが遮る。





「言う通りに。笑顔を崩さないで。後ろを任せるわよ」





ルークたちもモコの雰囲気にスイッチが入ったらしい。



笑顔を作ると、後方を『楽し気に』見ながら警戒を始めた。





「ご主人様、周囲に誰もいません」





モコが報告。





「こっちを見てるヤツはいないと思うよ。いるとすれば、


よっぽど遠くだね」





エンリイも報告。クラリッサとアーデルハイドも頷いた。



報告を受けた幸太郎は、小さく、だが、きっぱりと宣言した。





「撤退する。作戦変更。俺がこの罠に、わざと引っ掛かる。


・・・笑顔を崩すな。


俺が罠にかかったら、全員で俺を心配するフリをしろ。


とりあえず、さっきの小さな池まで逃げるぞ」





イサークとタゴーサクが『撤退』の言葉に、思わず声を



出しそうになったが、ルークとヨサークが『ジロッ』と



睨んだため、慌てて口を押さえた。





モコとエンリイは平然と笑顔を崩さない。



クラリッサとアーデルハイドも内心驚いてはいるが、



もう幸太郎には全幅の信頼を置いている。








幸太郎は笑顔で先頭に立ち、歩いて行く。



そして、足元に張られたロープにわざと引っ掛かった。





何かが外れる音がすると同時に、幸太郎の右側から



50センチくらいの、ロープで結ばれた丸太が、



振り子のような動きで落下してきた。



丸太には先の尖った小枝が何本も括り付けられていて、



ハリセンボンのようになっている。





幸太郎は頭と胴体を守るため、右腕でガード。直撃!





『グサッグサッ』という音が聞こえ、幸太郎の右腕に



数本の枝が刺さった。血が噴き出す。かなり深い傷だ。






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