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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 4
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ゴブリンの巣穴 2


 何かいきなり険悪な雰囲気になった。



若者4人組は知らんぷりを決め込むようだ。いい判断。正解だ。



幸太郎は、ゴツイ方の4人組をなだめようとした。



モコは不機嫌そうな顔をしているが、まだ黙っている。



すでにエンリイは『だめだこりゃ』という諦めモード。





「まあまあ、落ち着いて下さい。先発の7人が全滅したらしい


じゃないですか。手柄は譲りますから、


ここはお互い力を合わせて・・・」





しかし、ゴツイ方の4人組は幸太郎の話を聞く気が無い。



そもそも、まだ名前すら名乗っていない。



完全に幸太郎たちと仕事をする気が無いのだ。





「うるせえ! えらっそーに、上から目線でしゃべんな!!


何がギルドからの推薦だ! そんなに強いってのか?


俺たちをバカにしてんのか? ああ?」





「あ、いえ、その、ウチのパーティーは


C級冒険者もおりますので・・・」





「ケッ、お前はそのC級冒険者の尻にひっついてるだけのクセに、


仕切ってんじゃねーぞ!?」





エンリイは『幸太郎サンならひっついても歓迎だけど』と



鼻の下を伸ばした妄想をした。



C級冒険者のエンリイにとって、



このような冒険者どうしの衝突は何度も経験している。



まあ『よくあること』だ。



だから、幸太郎の説得が無駄に終わることも、



すでに『知ってる』。





一方、幸太郎は困っていた。せっかくルイーズが一生懸命に



幸太郎たちに頼み込んできたのだ。



あっさり『やーめた』と言えば、ルイーズはがっかりするだろう。





とはいえ、さすがに幸太郎にもゴツイ方の4人組の心情が



わかってきた。つまるところ『嫉妬』である。





飛びぬけた美女2人を連れている幸太郎。



しかも、2人の美女は幸太郎の『奴隷』という立場。



それだけでもムカつくが、オマケに『ギルドからの推薦』ときた。



自分たちは危険な仕事に『やってやる』と手を上げ、



立候補したというのに、幸太郎は



ギルドから『どうか力を貸してください』とお願いされた立場。





(だから最初に女連れという部分で噛みついてきて、


その後に今度はギルドからの推薦という部分に


噛みついてきた・・・。


自分たちが低く扱われたような気がしてるんだろう。


こちらに『C級冒険者がいる』という客観的事実を出しても、


結局、矛先が俺に集中するだけ。


こりゃ、いかんな。


話を聞いてもらえなければ、どーにもならん・・・)





揉め事が、話し合いで解決する方が珍しいだけだ。





「私自身が弱い事は否定しません。


確かに私はモコとエンリイより弱いです。


ですが、私が参加する理由はヒーラーとしての・・・」





幸太郎のセリフは、またしても最後まで言えなかった。





「うるせえ! 出て行け!!」





4人組の1人がそう叫ぶと、腰のホルダーからナイフを抜いて、



幸太郎の顔目掛けて思い切り投げつけた!





「うわっ!?」





幸太郎は、のけぞり、両手でガードする。





・・・しかし、ナイフは幸太郎に当たらなかった。



エンリイだ。



エンリイが幸太郎の顔の前に棍を差し出して、



ナイフを受け止めている。



ナイフは棍に切っ先が刺さって止まっていた。



幸太郎に当たっていたら、かなりの大怪我だっただろう。





そして、エンリイは落ち着いた声でモコを止める。



モコは椅子を蹴って立ち上がり、ゴツイ方の4人組を



睨みつけていた。





「モコ、落ち着きなよ。幸太郎サン、もういいでしょ?


ルイーズへの義理は充分果たしたと思うよ? 出ようよ」





幸太郎も頷いて、モコを止めた。止めなかったら、



4人組のうち、何人か死んでいただろう。



モコは恐ろしい殺気を放っている。





幸太郎は立ちあがり、敗北宣言をした。





「わかりました。私たちの負けです。お言葉通り、


チームを出てゆきますので、ご勘弁を。お騒がせしました」





幸太郎は、ゴツイ方の4人組と、若い方の4人組に、



それぞれ会釈してから会議室を出て行った。





「に、二度と、そのツラ見せんな!」





ゴツイ方は、そう言ったが、少し声が震えていた。



モコの殺気を浴びて、『どちらが捕食者か』が理解できたようだ。








幸太郎は溜息をつきながらカウンターへ向かう。





「エンリイは、最初からわかっていたんだね」





「まあ、あんなの冒険者なら珍しくないよ。同じギルドの


組合員って言っても、詰まるところ商売敵だもん」





「私はアイツら皆殺しにすべきだと思うわ・・・」





モコがまたもバイオレンスな事を言う。



ちゃんと止めないと、



そのうち、この世界の人口が半分くらいに減りそうである。





「落ち着いて、モコ。そのうち慣れるよ。


あんな感じの場面は、この先何度も経験するって。


幸太郎サンも、がんばって説得しなくていーからさ」





「そうだなぁ・・・。確かに、取り付く島もないとは、


あのことだった。あ、ルイーズさん。実はですね・・・」





幸太郎たちは、カウンターでルイーズに一部始終を説明した。





「ええ・・・? ニロギさんたちがそんなことを・・・?」





『ニロギ』はゴツイ方の4人組のリーダーの名前だ。





「はい。まあ、追い出されまして」





「ど、どうしましょう・・・? ようやくチームが編成できたって、


今、上司に報告したところなのに・・・」





「では・・・私たちがやりましょうか? 


『巣穴の発見』だけですよね?


エーリッタとユーライカは明日寝てるでしょうから、


クラリッサとアーデルハイドと一緒に、明日ちょっと探してきますよ」





「し、しかし、3つのパーティーの合同チームという上からの指示で、


ニロギさんたちと、ルークさんたちが会議室で待ってるのに・・・」





「心配には及びません。そちらはそちらでチーム編成を


進めて下さい。私たちは散歩がてら見てきます。


報酬は成功した時だけ、少し出して下さればいいですから」





その時、幸太郎たちの後ろから、割り込んでくる声があった。





「じゃあ、俺たちも連れてって下さい」





それは先ほど会議室で見た、若い方の4人組だった。



もちろん、幸太郎は『鑑定』したので名前を見ている。



面白い・・・そして、なんか懐かしい名前の4人組だった。





「俺はルークです。こっちは順にイサーク、ヨサーク、タゴーサクです」





特に後半2人の名前が郷愁を誘う。ちなみにタゴーサクだけ15歳。



幸太郎も改めて自己紹介した。





「・・・それで、ルークさん、会議室のチームはいいのですか?」





「やだなあ、幸太郎さん。俺たちの方がずっと年下なんですから、


呼び捨てにしてください」





「そーっすよ。その方が俺たちも楽ッス」





イサークが笑った。見るからに中学生くらいだが、



体の筋肉は日本の中学生とは質が違う。



スポーツではなく、戦闘用の体。



顔も実戦経験がある顔つきだ。





「では、お言葉に甘えて・・・。それで、ルーク、会議室の


チームはどうしたんだ?」





「俺たちも辞めることにしたんです。さっきのやり取り見てて、


『こりゃあ、ヤバイぞ』って思いまして」






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