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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとガイコツの森 2
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自白させてみたら


 全員で、もう一度森の中へ戻った。あまり長時間、



人目に付きそうな場所にはいない方がいい。





幸太郎は人狩りたち全員を『行方不明』にするつもりだから。





「『コール・バンパイア』!・・・ブラッドリー、このスケベ司祭に


魅了の邪眼をかけろ」





「かしこまりました、我が主よ。・・・見ろ!」





ブラッドリーの目が赤く妖しく輝いた。これでゲーガン司祭は



3分間言いなりである。








幸太郎はまず、先程からのゲーガン司祭の発言が嘘か真実かを



問いただした。



まあ、聞かなくてもわかっているが、ファルのためだ。





結果は思った通り・・・いや、思った以上にひどかった。





ゲーガン司祭は、『うまくいっていた場合』の予定を、



恍惚の表情でべらべらしゃべった。



もう、とても言葉にしたくない程、



スケベなアイデアが次から次へと飛び出してくる。





これを全部ファルに実行するつもりだったのかと、



幸太郎は青くなってドン引きした。



モコ、エンリイ、ファルも



眉を寄せて気持ち悪そうな顔をしている。





幸太郎はゲーガンの説明を途中で止めさせた。もう、これ以上



聞く必要は無い。『ファルネーゼ様をお助けするため』が



完全な嘘だと証明されただけで、もう充分だ。





話の中で判明したが、やはりゲーガン司祭は獣人である



モコとエンリイを差別していた。



美しさならば、モコ、エンリイ、ファルは



いずれ劣らぬ美しさと言える。



しかし、ゲーガン司祭が『ファルネーゼ』に固執したのは、



亜人、獣人を見下していたからだった。





ジャンバ王国よりも、バルド王国の方がずっと差別がキツイようだ。



いや、正直、ジャンバ王国はそれほど差別を感じない。



これは、そもそも『英雄王』が高貴な身分の出身ではない事が



影響しているのだろう。








『ついで』はさておき、幸太郎は本題に入る。



ゲーガン司祭たちが人狩りの支援者だった証拠が欲しいのだ。





(慎重な奴らだった場合、証拠らしいものは一切無いかも


しれないな・・・)





幸太郎はそんな心配をした。ところが、結果は真逆。



まず、馬車の中に『奴隷の仕入れ・出荷台帳』があった。



なんと襲って奴隷にした人々の名前や性別、年齢、特徴などを記載。



そして、それをいつ、どこの、誰に、いくらで売ったのか、



までを詳しく書き込んであったのだ。





オマケに、『出荷』の許可はゲーガン司祭のサインと押印、



さらに人差し指にインクを着けて指の押印まであった。





幸太郎は馬車から出てきた台帳を見て唖然とした。



なんでこんな念入りにゲーガン司祭の関わった証拠が残っているのか、



不思議で仕方なかったのだ。





幸太郎はゲーガン司祭に質問してみた。その返答に、幸太郎は



さらに唖然とした。開いた口が塞がらない。



理由は全てゲーガン司祭の指示によるものだったからだ。





つまり、人狩りたちがゲーガン司祭に内緒で、



勝手に『誘拐してきた奴隷たち』を売り払ったり



できないようにしていたのだ。



勝手に売り飛ばし、教会の収入が減るのが許せなかった。



気に入った奴隷の女を『味見』する前に、勝手に売り払ったり



することが許せなかった。全ては自分の私腹を肥やすため、



自分の欲望を満たすため、ゲーガン自身の許可が無ければ、



何もできないような仕組みを作っていたのだ。



それで偽造できない『指の押印』まで押してある。



恐るべき欲深さである。





もはや、ゲーガン司祭は人狩りの方が『本業』と言っていい状態。



『司祭』の方は、もはや隠れ蓑・・・いや、『趣味』程度である。





中継都市コナにあるオーガス教の教会。その敷地内に小屋があり、



小屋の中に『地下牢』への入り口があった。



元々は地下教会だか、地下墓だったようだが、今は全て奴隷を



収容する牢屋になっているらしい。かなりの規模である。



ただし、コナの奴隷商人は、このことを全く知らないという。



出来る限り遠くへ出荷し、一応は表向き噂にだけはならないよう



取り繕っていたようだ。





「そうか・・・エルロー辺境伯、グレナン司政官、ゲーガン司祭、


全員がグルになって運営していたから、証拠が残ることに対して


ほとんど警戒してないんだな・・・。


誰も咎める人がいなければ、そんなもんかもしれないなぁ。


こんな詳しい帳簿があって、


しかも大事に持ち歩いているとは・・・。


モコ、エンリイ、ファルをうっきうきで記載する


予定だったんだろう」





幸太郎はため息をついた。





「確かに、『誰かに見つかったら』って考えなければ、


証拠なんて怖くもなんともないかも知れませんね」





モコも呆れた。





「でもさ、一応オーガス教の教会でしょ? 他の司祭とか、


特に聖騎士たちに見つかったらマズイんじゃないの?」





エンリイが疑問を口にしたが、幸太郎は笑って答えた。





「司祭がグルだからね。『聖騎士』がコナに長居する理由を


作らなきゃいいんだよ。他の聖騎士がコナへ来るのは歓迎しておく。


司政官が屋敷に招いて歓待、隔離。そして、


平和で何も無いから、聖騎士はすぐに他の町へ移動してしまう。


聖騎士がいる間だけ誤魔化していればいいのさ。


司政官までもがグルなら大して難しくないだろう。


何しろ、さっきの人狩りたちの大半が聖職者の


ローブを着てたくらいだ。おまけにマラケシコフという、


れっきとした聖騎士が常駐してるんだから、


口裏を合わせるなんて朝飯前だろう。俺みたいに『鑑定』を


持っている奴でもなければ見抜くのは難しいさ」





「でも、誘拐された人々が売られた先で告発すれば、


教会の犯罪は明るみに出るのではありませんか?」





ファルの疑問はもっともな話である。だが、それは



平和な世界、守られている人の発想に過ぎない。



幸太郎は苦笑して諭した。





「残念だけど、それは『できない』んだよ、ファル。


奴隷の身分になり、売り飛ばされた以上、もう『自由』は無いんだ。


味方もいない。もし、買主に『教会に誘拐された』と


訴えた所で、その買った人が教会と戦おうとするだろうか?


しない。


むしろ教会が『いわれなき侮辱』とか怒り出すのを恐れて、


買主は奴隷の口を塞ごうとするだろう。


なおも訴えた場合、その奴隷は殺されるかもしれないね。


奴隷は、『その人でなくてもいい』からだ。


どの道、『隷属の首輪』がある以上逃げられない。


『教会に誘拐された』と訴えることは、


自分の死を招くかもしれない事だ。


命を懸けたイチかバチかの賭けになる。負けたらそこで人生は終わり。


奴隷にされた人は、いつか、どこかで解放されることを願って、


黙ったままだろう」





「そんな・・・そんなの、あまりにも、救いが無い話では


ありませんか・・・」





「この世界から奴隷を無くすのは、難しいね。俺も、妙案は


浮かばないよ。ただ、まあ、だからと言って人狩りたちを


許す気も無い。ここで待ち伏せしていた人狩りたちは、


全員『行方不明』になってもらう。散々好き放題やってきて、


今さら『助けて』なんて、たとえ神が許しても俺は絶対に許さん。


コナのオーガス教の教会にも、


グレナン男爵にも、然るべき報いをくれてやる」





モコ、エンリイ、ファルは強くうなずいた。






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