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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとガイコツの森 2
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エレメンタル・ドミネーター


 幸太郎とて、さすがにこれは驚いた。





(コイツはまずいぞ・・・)





『ファイア・エレメンタル』を鑑定すると、以下のような



説明が記載されていたのだ。








『 ファイア・エレメンタル  (支配下状態)



 HP  なし


 MP  なし 




四大元素の1つ。火の精霊。元素霊。生物ではないので生命力という


概念は無い。形が変化するだけで不滅。存在そのものが


魔力の塊のようなもの。表面温度は人間と同レベルから、


最高で1500度くらいまで上昇させることができる。


現在はマラケシコフのスキル『エレメンタル・ドミネーター』で


状態が固定されている。スキルの効果により、いくら力を行使しても


消耗して小さくなったりはしない。


魔力を帯びた武器以外は、一切効果がなく、素通りするだけ。


また魔力を帯びた武器での攻撃も、一時的に形態がゆらぐだけであり、


死ぬことはない。攻撃は素手だが、掴まれれば、肉体が


炭化するほどの火力がある。水の精霊を召喚できれば有利になるだろう』








(この『火の精霊』を『サイコソード』や


『如意棒』で攻撃しても、すぐに復活するってことか?


とにかくマラケシコフの『エレメンタル・ドミネーター』を


なんとかしない限り、相手にするだけ無駄だな・・・。


しかし、マラケシコフを倒そうとしても、『火の精霊』が邪魔だ。


こちらが出せる水と言えば『飲料水』くらいしか・・・。


他の手を考えなければ)





幸太郎が高速で思考を巡らせていると、信じられない光景が



目に飛び込んできた。





マラケシコフが呼び出した『人の形の火』は、どんどん色がつき、



より人間っぽくなっている。そして、ついには下着のような



『際どいコスチューム』の美女に変身したのだ。





「キシシシ、よく来たな、シャーリー、ベロニカ」





マラケシコフは女体化した『火の精霊』に名前までつけていた。



もちろん、マラケシコフが勝手にそう呼んでいるだけだろう。



呆気にとられる幸太郎。さらにマラケシコフは『シャーリー』と



『ベロニカ』を抱き寄せると、濃厚なキスまでしたのだ。



マラケシコフはキスの後、得意気な顔で幸太郎を見た。





幸太郎は額から汗が流れる。








(コイツは、アホかァァァァァァァァッッッ!!)








終わった。幸太郎たちの勝ち決定。



もう絶対にマラケシコフは幸太郎に勝てない。



ここにいる人狩りたちは、もう全員死亡決定。



幸太郎は思わず叫びそうになったが、声に出すと勝利が逃げる。



相手には『バカ』のままでいてもらわないと。








幸太郎はファルを庇う態度を見せながら、叫ぶ。





「ファルネーゼ様! あの北の丘を越えましょう!


なんとかコナまで逃げるのです!」





「は、はい!」





ファルを庇うように、幸太郎、モコ、エンリイ、ファルは



北方向の丘を目指して走った。南は遮蔽物が無い。西は人狩り。



森に逃げるか、北の低い丘を越えるかの2択だが、



相手が『火の精霊』だと、森が火事になるかもしれない。



それに、幸太郎の作戦は『一度、相手の視界から消える』ことが



必要だ。例え短時間でも、それが出来ればマラケシコフは怖くない。





「追え! ファルネーゼは私の物だ! 多少は傷つけても


構わん! あとで、私が治すからな!」





「『シャーリー』、『ベロニカ』、奴らを追い詰めろ!


男は炭にしろ、女は殺すな! 行け!」





人狩り・・・聖職者・・・どちらでもいいが、欲望のケダモノたちと



『シャーリー』、『ベロニカ』が幸太郎たちの後を追う。





北側の丘はすぐそば、そして低い。幸太郎は追いつかれないように、



『マジックボックス』から『粉カラシ』の袋を取り出し、



追いかけてくる人狩りたちに投げつけた。





人狩りたちの数人は咳き込んだが、他の人狩りたちは



笑いながら追いかけてくる。



『苦し紛れか? 無様だなぁ』などと勝ち誇った様子だ。



もちろん、幸太郎は追いかけてきてもらわないと



困るから、こんな事をしている。








そして、幸太郎たちに続いて、人狩りたちも丘の向こうに消えた。








ゲーガン司祭とマラケシコフは馬車の御者に命じて、



馬車を近くまで呼んだ。



2人ともニヤニヤとした下品な笑いが止まらないようだ。



特にゲーガン司祭は『ファルネーゼ』を



思いのままに出来るということが嬉しくてたまらない。





「あのファルネーゼが、あのファルネーゼが、


裸で私の前にひれ伏すのだ。きっと泣き顔も美しいことだろう。


おお、神よ、感謝いたしますぞ。常日頃の神への貢献が、


このような素晴らしい奇跡を呼んだのだろう。


まずは、ファルネーゼに首輪をつけて・・・」





「お断りいたしますわ。・・・まあ、なんて下品な顔ですこと。


まずは、よだれをお拭きになってはいかがですか?」





ゲーガン司祭とマラケシコフは『ぎょっ』として丘の方を見た。



そこには、ゆっくりと歩いて丘を下ってくる



幸太郎、エンリイ、ファルの姿があった。





「な、なんだあ? いったいどうやって部下どもを・・・、


いや俺のシャーリーとベロニカはどうしたんだ!?」





マラケシコフも驚きの声をあげた。しかし、よく聞くと



丘の向こうから、悲鳴のような声も聞こえてくる。



ゲーガン司祭は丘の向こうに聞こえるように叫んだ。





「おい! お前たち! ここに奴らがいるぞ!


捕まえろ! おい!! どうした! 早く来い!!」





「あー、聞こえないと思いますよ? 彼らは『とっても』


忙しそうでしたから」





『冥界門』を開いたままの幸太郎がのんびりと答える。



マラケシコフは、先程から必死に『シャーリー』と『ベロニカ』を



呼び戻そうとしているようだが、やはり姿を現さない。





幸太郎はマラケシコフに向かって呆れたように言った。





「お前さあ・・・頭悪いだろ・・・」





「なんだとォ!?」





「いや、スマン、いいんだ・・・。どうせ、お前、もうすぐ死ぬし・・・」





マラケシコフが怒りの表情で、何かを叫ぼうとした時に、



マラケシコフの後頭部に『十字手裏剣』が突き刺さった。



さらに、『ラピッド・スピード』を使い、後方から疾風のように



駆け込んできたモコが『サイコソード』でマラケシコフの首を



すっ飛ばした。





マラケシコフは、空中でパクパクと何かを叫ぶような



動きを見せたが、あえなく地面に『ボタリ』と落ちた。



そして1バウンドして、地面を転がったあと、動かなくなった。





「はい、終わりっと。モコ、お疲れ様」






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