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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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雨上がりの休日 2


 幸太郎たちはカーレの南門から街道を南へ走る。



しかし、町から少し離れると、すぐに東の方へと街道を外れた。





「デイブさんとデボラさんと一緒に薬草採集した時の


場所を目指す。一気に行くぞ」





幸太郎は全員にそう宣言した。そして『夜魔の指輪』を装着。





「『コール・ゴースト』!」





幸太郎は次々にゴーストを召喚。ここは『ゴーストブーツ』で



体力を温存しつつ、ショートカットで行くつもりなのだ。





「ご主人様、私は先行して偵察します」





モコが提案した。幸太郎も同意する。





「わかった。ではこの『アザラシゴースト』を俺の真上に


浮かべておく。こっちの現在位置の目印にしてくれ」





「了解です。では・・・『ラピッド・スピード』ッ!!」





奥の手を発動したモコは電光石火のスピードで走ってゆく。



幸太郎は『アザラシゴースト』の背中に小さな羽を生やした。



あんまり大きな形状変更はできない。これで精いっぱい。



とりあえず、何か『羽の生えた生き物』に見せたかっただけだ。





女性陣は『かわいい』とはしゃいだが、そんな場合ではない。



全員に『ゴーストブーツ』を装備して、さらに



『インビジブル』をかけた。これで少なくともゴーストで



浮いてるということだけは隠せる。





全員で地上を滑るように走っていく。丘を登るのも、下るのも



ほとんど体力を使わない。意外だったのは小川の上も



落ちずに宙に浮いたまま通れたことだ。これは幸太郎にも



嬉しい誤算だった。まさかゴーストブーツで水面を



渡ってゆけるとは。気分はイエスキリスト。





「こ、これって、なんか気持ちいいじゃん!」





エーリッタとユーライカは面白がっている。





「あははは、景色が滑っていくようだぜ」





クラリッサとアーデルハイドも大はしゃぎだ。





「気持ちはわかるけど、目的を忘れないようにね!」





エンリイが一応釘をさす。








ゴーストブーツで走り続けて10分程度。



前方からモコが戻ってくる姿が見えた。全員で一旦停止。





「どうだった?」





「おそらく、ですが、2人が留まっていると思われる場所を


特定しました。私たちが教えてもらった『とっておき』の


薬草の群生地のある森です」





幸太郎の質問にモコが答える。



しかし、『特定した』という割には曖昧だ。





「何かあったわけだな?」





「はい。オークの群れが集まっています。数は少なくとも


10体以上。何かを探しているような動きでした」





「デイブさんとデボラさんを探している可能性が高い、か」





「はい、オークに見つかった結果、2人は森に隠れ


動きが取れなくなっているものかと思います」





「よし、オークの群れは殲滅する。どのみちデイブさんとデボラさんを


探すのに邪魔だ。こっちの勝手な都合だが、オークは全員死刑。


では、案内してくれ、モコ」





「了解です。ついてきてください」





モコが先導する。幸太郎たちはわずかに方向を変え、



モコの後をついていった。





エーリッタとユーライカ、クラリッサとアーデルハイドは



モコの走りを見て驚愕した。





『このゴーストブーツよりも早いし、これだけ走って、


全く息が切れてないって、なんて体力・・・』





小狼族、恐るべし。








前方に森が見えてきた。エルフのエーリッタとユーライカが



警告を出した。エルフも小狼族程ではないが聴力はいい。





「確かにオークらしい鳴き声が聞こえるわ!


みんな、注意してね!」





夕日が海へ落ちそうな中、幸太郎の目にも森の中に



人影のようなものが動いているのが見えた。





さらに近づくと、確かに変な声が聞こえる。



『全言語翻訳』を持つ幸太郎には、意味が理解できた。





『サガセ・・・』





『ドコダ・・・』





『男ハ、食エ・・・』





『女ハ、犯セ・・・』





『血ノ匂イダ、近クニ、イルゾ・・・』





幸太郎は意味が解るせいで、不愉快になった。



解らない方が幸せかもしれない。だが、これでオークは森の中の



男女を探しているという情報が得られた。





「間違いない。オークどもは男女を探している。


デイブさんとデボラさんの可能性が高い。


奴らの言葉からすると、怪我をして動けないようだ。


いくぞ! みんな! オークをこちらへ誘き出す」





幸太郎はゴーストブーツを着地させ、解除。



先手はエーリッタとユーライカだ。



2人は弓を引き絞ると、森の端に見えている1体のオークの



頭を射抜いた。完璧なヘッドショット。





オークの倒れる音で、他のオークたちも幸太郎たちの



襲撃に気づく。次々に森の端に姿を見せ始めた。



数がどんどん増えていく。





5体・・・10体・・・15体・・・20体・・・。





かなりの数である。しかも、通常のオークより大きな個体、



『オークチーフ』が3体もいた。



幸太郎はオークを見るのは初めてだが、『オークチーフ』は



明らかに一回り大きい。





「はっ、オークチーフかい? しかも3体か。


こいつらが群れのリーダーってわけだな? あたいに任せな!」





しかし、前に出ようとするクラリッサをモコが止める。





「違う! もっと大きな足音が聞こえるわ!


もう1体、さらに大きい奴がいる!・・・来た!!」





森の奥から、オークチーフよりも、頭1つ大きい個体が



姿を見せた。それを見たエンリイが思わず叫んだ。





「『オークロード』だ!!」





通常のオークは幸太郎と同じくらいの身長。しかし、豚のような頭、



体の厚みも人間よりずっと大きい。



そして、オークチーフの大きさはクラリッサたちと同じくらい。



ところがオークロードは完全に2メートルを越えている。



他のオークが小さく見えるほどの異常な大きさだ。





(『上位種』って奴か・・・)





幸太郎は初めて見るオークロードに驚いた。



しかし、幸太郎に恐怖を抱かせたのは『大きさ』ではなかった。





『ぶひゃひゃひゃ、女が、こんなに、増えたぞ。


今日は、いい日だ。お前たち、こいつらを、囲め。


逃がすな。殺すな。男は食っていい』





オークロードは明らかに他のオークよりも知能が高いのだ。





幸太郎はオークロードの発言にムカついた。



ゴブリンと同じく、人間の嫌な部分を凝縮したような生物。





「モコ、エンリイ、あのオークロードとかいうバカ野郎を


最初に殺す。みんなも準備してくれ」





幸太郎は小声で作戦を伝えた。大声を出すとオークロードに



伝わるかもしれない。





全員が頷き、準備に入る。そして、エンリイが棍を構えて、



ゆっくりとつぶやいた。





「必殺!・・・」










(C)雨男 2024/10/02 ALL RIGHTS RESERVED






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