少女との短い会話
幸太郎は残り2つの必要条件を満たすことに成功した。それは、
『盗賊の最大の戦利品に近づく』ことと、
『幸太郎の無防備な姿を盗賊にあえて見せる』だった。
これで盗賊から襲われないなら、もうあとは最後まで襲われない。
そう、『幸太郎が裏切って不意打ちをする』まで。
ここで、幸太郎は初めて檻の中の少女を見る機会を得た。
薄暗いが、確かにとても可愛い。しかもケモミミ! ファンタジー!
・・・こっちの世界で初めてケモミミを見るのが檻の中の少女とは・・・。
溜息ついていいですか?
幸太郎は小さくつぶやいた。
「君を助けたい」
聞こえるだろうか?
「!」
檻の中の少女が、ぴくっと耳を動かしてわずかに顔をあげた。
聞こえたようだ。耳がいいらしい。良かった。
これは盗賊には関係ないが、どうしてもあらかじめ
クリアーしておきたかったことだった。
盗賊を倒すことに成功しても、檻を開けた途端に、
この少女と戦闘になったら多分死ぬ。
単に少女が逃げるならまだしも、
6人目の敵になってもらっては困る。
さあ、準備は整いつつある。
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