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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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足跡調査 3


 来た道を、幸太郎たちは引き返す。池のそばでは、念のため慎重に



辺りを伺いながら進んだが、結局ゴブリンは現れなかった。



幸太郎が辺りを見回してから小さくつぶやいた。





「他にはいないようですね・・・」





「そのようだね。しかし、10匹のゴブリン。挟み撃ち、


樹上からの投石。おそらく、近くに『巣』ができている


可能性がある。幸太郎君、モコ君、君たちはゴブリンの巣に


出会ったことはありますか?」





もちろん幸太郎にそんな経験は無い。モコもそんなものに



出くわしたことは無かった。





「いいえ、私たちは、まだ見たことはありません」





「そうですか。それは運がいいと言えるかもしれません。


私たちも巣の入り口付近までしか入ったことはありませんが、


手ごわさは桁違いですよ。統率している『ゴブリンメイジ』や


『ホブゴブリン』は、かなり悪知恵が働きます」





「そんなに恐ろしい相手なんですか・・・」








水源である池のそばを脱出した幸太郎たちは、



全員『ふぅっ』と一息ついた。



そして、ジェムーンが微笑んで幸太郎たちに言った。





「もう、安心です。あとは安全とわかっていますからね。


ここまでの森や草原にゴブリンはいませんでした。


お疲れ様です。さあ、ゆっくり帰りましょう」





幸太郎たちも笑顔でうなずいた。








ジェムーンたちを先頭に、幸太郎たちは来た道を引き返して歩く。



狼や熊も現れず、帰途は平穏そのもの。



そして、途中の森と森の間にある、



やや開けた草原の真ん中に差し掛かった時、



ジェムーンが急に立ち止まって、幸太郎たちを止めた。





「しっ!・・・ちょっと、ここで待っていてください。


今・・・前方で何かが動くのが見えたような気がします」





「大丈夫ですか? こちらのモコを偵察に出してみましょうか?」





「いいえ、それには及びませんよ。


逆に、あなたたちは、ここを動かないで下さい。


もし、前方に獣や敵がいた場合、私たちは


ここまで急いで引き返します。見通しのきく、ここで


迎え撃った方が有利だと思います」





「なるほど、わかりました。では、私とモコはここで


ジェムーンさんたちを待つことにします」





「お願いします。絶対にここを動かないで下さいね。


では、私たちは前方の森を少し見てきます・・・」





そう言って、ジェムーンたちは剣を抜き、周囲を警戒しながら



森の中へ入っていった。





幸太郎はモコの目を見た。モコも幸太郎の目を見てうなずく。





そして数分経った頃。変化が現れた。周囲の森から、



次々に人影が現れる。



彼らは、どう見ても真面目に働いている人間には見えなかった。



合計で20人いる。



彼らは草原の中央にいた幸太郎とモコを完全に取り囲んだ。



いや、正確にはジェムーンたちが消えた、前方の森だけは



誰も現れていない。





幸太郎たちが身構えて、前方の森の方へ逃げようとした時、



森からジェムーンたちが現れた。





「ジェムーンさん! 良かった! 逃げましょう!」





しかし、ジェムーンたちは微笑んだまま、緊張感が無い。



それどころか幸太郎たちに武器を向け、



行く手を塞ぐように広がった。





「いや、申し訳ないね。幸太郎くぅ~~~ん。


本当に、本当に、申し訳ない。君たちはね、ここで


『行方不明』になっちゃうんだよ~~~?」





「『行方不明』・・・? まさか! ジェムーンさん、


私たちを裏切るつもりなのですか!?」





「ごめんねぇ~~~? 心から申し訳ないって思ってはいるんだよ。


本当だよ? まあ、察しはついてるとは思うけど、この人たちは


『人狩り』の皆さんなんだ」





「人狩り!! では、狙いはモコか!」





幸太郎は周囲の人狩りを見回した。彼らは、ニタニタと



気持ち悪い笑みを浮かべて、モコを嘗め回すように見ている。





「ご、ご主人様・・・」





モコは怯えて幸太郎の腕にしがみついた。





「くっ、ジェムーンさん! あなたはこんな奴らに味方するのですか!?


見損ないましたよ!」





ジェムーンたちも薄ら笑いを浮かべて、態度を一変させた。





「別に突然味方するってわけじゃないさ。私たちは『最初から』


彼らの味方なんだよ。私たちは確かに冒険者で間違いない。


でも、いい獲物がいた時だけ、彼らに協力しているってわけさ。


何と言うか、持ちつ持たれつ・・・まあ、割のいい


『副業』ってとこかな? 冒険者だけやってても、


金持ちになるのは難しいし、C級に上がるのは、もっと難しい。


馬鹿正直に任務をやってるのは愚か者だけってことだな」





(そうか・・・それでジェムーンを『鑑定』しても、


『人狩り』ではなく、ただ『ファイター』としか


表示されなかったのか・・・。一応本業は『冒険者』だったわけだな)





幸太郎は改めて『鑑定』が万能ではないことを思い知った。





「ま、悪く思うな。そっちのモコはかなりの高額で売れそうなんでね。


そう悪い話でもないだろ? こんな危険な冒険者なんて


やってるよりも、貴族のオモチャとして飼われる方が


衣食住の心配は無いんだからさ。ボロボロになって捨てられるまでは


いい暮らしができるだろ。それに、幸太郎、お前も売ることになったから


安心しろ。当初の予定では、お前はここで死ぬことになっていたんだ。


でもよ、お前『ヒーラー』として使えるからな。


それに『マジックボックス』も持っている。


俺が人狩りを説得して、売ることに方針転換させたんだ。


大した値は付かないだろうから、説得には苦労したんだよ~~~?


そこは死ぬまで感謝して欲しいね。なんたって命の恩人なんだから」





ジェムーンたちと、人狩りたちはゲラゲラと笑った。





「さぁて、状況が理解できたかな? じゃあ、降伏・・・。


って顔じゃないな。胸が痛むが仕方ない。ちょっと痛い目に


あってもらおうか? ああ、心苦しいなぁ~~~」





人狩り20人に、ジェムーンたちが3人。全員が武器を構え、



下品に笑い出した。










(C)雨男 2024/09/20 ALL RIGHTS RESERVED






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