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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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足跡調査 2


 先日、狼の大群と戦った場所までやってきた。



西の方に柵が修理中だった場所が見えている。



もちろん、あの後、急ピッチで丸太の柵は補修された。



今はもう完全に封鎖されている。以前と違う所は、



簡易的だが内側に『物見台』が新しく増えている所だ。



やはり警戒を増やしている。





幸太郎たちはその物見台にいる男たちに手を振り、



東の森へ入って行った。





「幸太郎君、ここからは先日の狼の残党が残っているかもしれない。


慎重に行きましょう」





ジェムーンは真剣な顔で警戒を促した。



しかし、その森の中はゴブリンどころか狼もいない。



平和そのもの。





「では、いよいよ南下します。みなさん、本番はここからですよ」





草原、林、森・・・。警戒しながら1時間以上歩いただろうか。



森の中に小さな池が見えた。全員が緊張する。もちろん、幸太郎もだ。



池・・・つまり水源がある。ゴブリンもオークも生物である以上、



当然だが水を飲む。このような人目に付かず、さらに水源が



ある場所にはゴブリンやオークが集まりやすい。








そっと池に近づき、水辺を調査する。そして見つけた。



小さな人型の足跡を。





「この足跡・・・大きさと形からするとゴブリンか・・・」





ジェムーンが小声でつぶやく。





「足跡がたくさんありますね。何匹くらいかわかりますか?」





幸太郎も小声だ。





「いや、さすがにそこまでは・・・。うーん、足跡をたどって、


もう少し調べましょう。ただし、危険があるようでしたら、


即、撤退します。今日は調査が目的で、情報をギルドに


持ち帰ることが大事です」





「了解です」





全員で、極力音をたてないように足跡をたどった。



そして、3分ほど歩いた時、モコが幸太郎の袖を『くいっ』と



小さく引っ張った。幸太郎は黙って小さくうなずく。



そして、さらに少し進むと、モコが幸太郎の腕を掴んで引き留めた。





「投石です!」





モコが叫んだ。ジェムーンたちはその声に反応し、素早く盾を構えた。





ゴッ ガンッ ゴン ガチッ ドスッ





それは樹上からの投石だった。幸太郎もラウンドシールドを構えるが、



全てモコが幸太郎への投石を盾で弾き飛ばす。





「くそっ! 上だ!」





ジェムーンたちが木の上を見上げる。





「後ろからも来ます!」





モコが叫んだ。幸太郎たちの後方、池のある方向から



4匹のゴブリンが姿を見せた。



全員ショートソードやハンドアクスを持っている。



殺した人間の武器を奪ったのだろう。





「後方はこちらで対処します。ジェムーンさんたちは前方を!」





「わかった! 気を付けて!」





ジェムーンたちは前方を、幸太郎たちは後方に対処することになった。





(へぇー、これが『ゴブリン』かぁ。


噂には色々聞いてるが、初めて見るな。


身長はモコと大して変わらないが・・・コイツは・・・)





幸太郎はゴブリンを見て、非常に不愉快な気分になった。



それはゴブリンの顔を見たせいだ。ゴブリンの顔は



『嫌な顔』をしていた。醜いとかでなく、『性根の悪い顔』だ。



はっきり言うなら、幸太郎は『自分の醜い面を鏡に映しているような』



気分だった。





(嫌な顔だな。が、まずは『鑑定』っと・・・)





幸太郎は『鑑定』の結果を見て、さらに嫌な気分になった。





(妖魔の一種・・・『もう1つの人類の姿』だって???


くそっ、見た目だけで不愉快な気分になるのはそのせいか!


通常の個体に邪気や邪霊が集まると『上位種』が生まれる、か。


うげえ、『ほとんどの大型哺乳類に子供を産ませることができる』って、


なんつーキモイ能力持ってやがるんだ・・・)





『鑑定』の結果を見た幸太郎は、1つの結論に至った。





(生かしておいても、いい事は1つもなさそうだ・・・)





幸太郎はモコに命じた。





「殺していい。いや、生かしておいていい存在じゃないな」





「了解です」





モコは接近してくる4体のゴブリンに挑んだ。



・・・というか、ただの殲滅だ。





モコは投げナイフで真ん中の1体を殺す。そして、数が少ない方の



ゴブリンを小太刀で殺し、殺したゴブリンを、残った2体の方へ



蹴り飛ばした。吹っ飛んできた仲間の死体が直撃したゴブリンたちは、



そのまま、何が起きたかわからないまま死んだ。



モコが一瞬で背後に回り、首を切り落としたからだ。





ダンジョンで嫌というほど戦ってきたモコに、ゴブリン4体は



数が少なすぎる。4体殺すのに6秒程度。





「終わりました」





モコは平然と答えた。ダンジョン破壊を成し遂げたメンバーには



『弱すぎる』相手でしかない。





「よし。前方はどうかな・・・?」





前方はまだ戦っていた。樹上にいたゴブリンは6体。



すでに骸となったゴブリンが3体だから、残りは3体だ。



苦戦というほどでもないが、ジェムーンの動きだけが悪かった。



どうやら、最初の投石が足に当たったようだ。





モコが足元の石を拾い、前方のゴブリンに投げつけた。



石は見事に命中。その好機を逃さず、ジェムーン達もゴブリンを



切り裂く。これで前方も片付いた。合計10体が全滅。





幸太郎が杖をジェムーンの足に向け、『色は匂えど散りぬるを・・・』



と唱える。これで投石の打撲は完治。



ジェムーンたちは幸太郎の美しい魔法に驚いた。





「ふう、幸太郎君ありがとう。いい魔法ですね。


しかし、この状況はマズイですね。10体のゴブリン。


その中の6体が樹上で『待ち伏せ』、4体が後ろからの


挟み撃ち・・・。高い知恵を持っています。


これは、ゴブリンが群れをなし、さらに


『上位種』が生まれた可能性が高いと思います。


幸太郎君、モコ君、調査はここで終了です。急いで帰りましょう。


このことをギルドに報告しなくてはなりません」





幸太郎、モコも異論はない。ジェムーンはゴブリンの耳を



切り落として、持ち帰る様に指示した。



耳を見ればゴブリンだとわかるらしい。





「さあ、帰りましょう。来た道を引き返しますよ!」










(C)雨男 2024/09/18 ALL RIGHTS RESERVED






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