表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
922/1045

足跡調査


「これはご丁寧なあいさつ、ありがとうございます。


幸太郎、モコ、エンリイです。・・・それで、ジェムーンさん、


明日行動を共にする・・・とは?」





幸太郎の質問にルイーズが答えた。





「明日、幸太郎さんとモコさんは、ジェムーンさんのパーティーと共に、


『魔物の足跡調査』へ行ってもらいます。


先日、幸太郎さんがビエイ・ファームで狼の群れと遭遇した話の


続きみたいなものですね。ビエイ・ファーム周辺を調べて、


ゴブリンやオークなどの足跡が無いかを調べる依頼が


商人ギルドから入りました」





「そう言えば、ブリンクマンさんも、ファームの人と


色々話合っていましたね」





「そこで、ジェムーンさんたちが、その依頼を引き受けることに


なったのですが、『調査だけだから、もし予定の空いてる新人がいれば


経験を積ませるために連れていってもいい』と言って下さったのですよ」





「なるほど、そういうことでしたか。では、明日は足跡調査ですね」





幸太郎はジェムーンたちを見た。ジェムーンたちは全員、清潔感のある、



整った外見をしていた。顔も優し気で、美男子の部類に入る。



もしかしたら貴族の3男以下の出身かもしれない。



ジェムーンは冒険者としては珍しく宝石のついた首飾りをしていた。



当たり前だが、装飾品など戦闘では『不利』以外の何物でもない。



元の地球では格闘家などが試合でも



ピアスやネックレスなどをしている場合もある。



だが、もし『負けたら死亡』という状況だったらどうだろうか?



誰もが、ほんのわずかでも自分が負ける要素を減らそうとするはずだ。



例え、おまじないや、お守りの意味であったとしても、



それは『生き残った』時だけしか意味を成さない。



格闘家などで装飾品を着けている選手は



『相手の優しさを心から信じている』から外さないのだ。



無論、元の地球ならそれでいい。何かあってもレフェリーも



セコンドもちゃんと止めてくれる。それは試合であり興行だから。



しかし、この異世界に『レフェリー』なんて気の利いたものはいない。



戦いも実戦ばかり。戦いとなれば、大抵どちらかが命日となる。





異世界は理想郷ではないのだ。





普通、冒険者は『死にかねない』から装飾品は嫌う。身に着けない。



着けていても、表には見せない。例外があるとすれば『灯火』の指輪や



『身代わりの指輪』くらいだろうか。



幸太郎は異世界に来て日が浅い。それでもジェムーンの



首飾りには少し驚いた。もしかすると彼の自信の表れかもしれない。



『鴉』のように、宝石がマジックアイテムと言うなら話は別だが、



どうもそんな気配は無い。



『鑑定』しても『サファイヤの首飾り』としか



表示されなかった。それはただ、キラキラ光るだけ。





「幸太郎君、明日はよろしく頼みます。そんな心配するような


ことはありませんよ。基本的に足跡を探して歩き回るだけですから。


私たちもいますし、戦闘になるような事は無いはずです」





そう言って、にっこり笑ったジェムーンは幸太郎に握手を求めてきた。



その手を幸太郎も笑顔で握り返す。





「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。


新人で経験不足ですが、足を引っ張らないように頑張ります」





「では、また明日。朝食を食べたらビエイ・ファームへ


出発しましょう」





ジェムーンは爽やかな笑顔で手を振り、ギルドを出て行った。



幸太郎も笑顔で手を振る。





「なんか、あんまり冒険者らしくない人たちでしたね、


ご主人様」





「エンリイ、やっぱり、ああいうタイプは珍しいのかな?」





「多分、貴族の末子あたりの出身だと思うけど・・・。


まあ、確かに珍しいタイプだよね。


ヨッカイドウでは、割と見かけたタイプだけどさ」





「そうか・・・。貴族の可能性が高いか」





「大丈夫だよ、幸太郎サン。元が貴族でも、冒険者には


関係ないって。冒険者は仕事ができるか、できないかだけだからね」





「はは、そうだな。よし、モコ、明日は足を引っ張らないように


がんばろう」





「はいっ。がんばりましょう!」





幸太郎たちもルイーズに手を振り、向かいの宿屋へ戻って行った。








翌日、幸太郎とモコが準備を終えると、ジェムーンたちが



ギルドへ現れた。





「おはようございます。幸太郎君、モコ君。準備はいいですか?


朝食も?・・・そうですか、準備もいいようですし、


早速出発いたしましょう」





「はい。今日はよろしくご指導、お願いします」





「足手まといにならないように、気を付けます」





幸太郎とモコはぺこりと頭を下げ、ジェムーンたちの後ろを



ついて歩くことにした。





幸太郎たちと、ジェムーンのパーティーはビエイ・ファームへ向けて



カーレの門を出た。








ビエイ・ファームが前方に見えてきた。昔からある古い場所は



防壁になっており、新しく開拓した場所は丸木の杭の柵。





「では、そろそろ街道を外れましょう。ついてきてください。


まずは、手始めに、あの林辺りから調べるとしましょうか」





幸太郎たちは街道を外れ、ビエイ・ファームを右手に見ながら、



小さな林へ向かった。





「・・・ふむ。特に何も見当たりませんね。土の柔らかい部分も、


獣道にも、怪しい所はありません。幸太郎君、モコ君、


そちらはどうですか? 何か人型の足跡はありませんか?」





「いえ、こちらも犬か狼の足跡があるくらいです」





幸太郎は杖を片手に歩きながら、ジェムーンに報告した。



幸太郎は杖とラウンドシールド、革の鎧という装備だ。





「そうですか。では、もっと南へ行ってみましょう。


先日狼の群れが襲ってきたという場所から、さらに南の方に


重点を置いて調べるべきかもしれません」





「わかりました。ゴブリンやオークは、まだこの近辺には


いないようですね。急ぎましょう」





幸太郎たちは、先日、狼の大群が襲ってきた場所から、



さらに南を目指すことにした。










(C)雨男 2024/09/16 ALL RIGHTS RESERVED






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ