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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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予期せぬ遭遇 4


 その日の夜、エーリッタとユーライカにも事情を説明し、



『とぼける演技』を練習してもらった。



多分、これで探りを入れられても大丈夫だろう。





エーリッタとユーライカは面白がって練習してくれた。



特に2人の『え・・・?』は特筆もの。



素晴らしい、とぼけっぷりで、幸太郎たちは感心した。



イエスキリストは『ニワトリが鳴く前に私を3回知らないと



言うだろう』とペトロに言ったらしいが、エーリッタとユーライカなら



一撃でしらを切れるはずである。まるで女子高生なみ。








翌日。冒険者ギルドに顔を出すと、併設された食堂で



オーガス教の聖騎士、ジーウェイが朝食を食べていた。



ジーウェイは幸太郎たちを見ると、爽やかに挨拶をしてきた。





「よお、おはよう。幸太郎」





「おはようございます。確か・・・ジーウェイさん、ですよね」





「『さん』はつけなくていいよ。タメ口でいいって。


昨日はロッシュゼフト様の前だったから、堅苦しい言葉遣い


してたけど、俺は元々、ただの平民なんだよ。


ちょっと特殊なスキルを持ってるんで、聖騎士に


スカウトされただけ。まあ、ある目的があるんで聖騎士を


続けているけど、正直、肩が凝って肩が凝って・・・」





「そ、そうなんですか・・・」





幸太郎たちにしてみれば、ちょっと意外な展開だった。





(どうも、聖騎士って言っても、色々いるみたいだな。


昨日のロッシュゼフトは絶対に『敵』だろうけど・・・)





幸太郎、モコ、エンリイ、エーリッタとユーライカは、



ジーウェイと同じテーブルについた。ジーウェイが気軽に



『一緒に食おうぜ』と言ったからだ。



そして、特に断る理由がない。





「では、お言葉に甘えて・・・」





「だーかーら、いいって、そんな堅苦しい言葉は。


せっかく、これだけの美女たちと一緒にメシ食うんだから、


気楽にいこうぜ。敬語使ってるとメシがまずくなるってもんよ。


はははは」





幸太郎は正直面食らっている。完全に予想外。





「えー、では、ご要望通り、敬語は無しってことで。


それで、一体どうしてここに?」





「んー? お前を調べに来たんだよ。お前が強そうだったから、


『ナイトメアハンター』なんじゃないかって思ってさ。


でも、『傭兵掲示板』見たら、お前『ヒーラー』だってな。


さすがに『ヒーラー』では悪魔を倒すのは無理っぽいなあ」





ジーウェイはもぐもぐとパンを食べながら、正直に話しだした。



幸太郎たちは口をあんぐりと開けて声が出ない。





「ん? そんなに意外だったか? お前頭良さそうなのに。


『ナイトメアハンター』なら教会はスカウトするつもりだったんだろう。


まあ、どうもハズレみたいだが・・・。


とりあえず、それはそれとして、幸太郎、お前聖騎士に


なる気は無いか? お前強そうだから、なれそうだぜ?」





「いやいや、俺は弱いって。前に、ここで


他の冒険者に一発でノックアウトされてる。


それに聖騎士になんてなったら、自由が減りそうだよ・・・」





「そーだよな~~~。聖騎士になると色々面倒なんだよな。


なんかミサだの、信者への講話だの、偉い人の警備だの、


俺のガラじゃないんだよ~~~。まったく、こっちは


好きで聖騎士やってるんじゃねーってのにさ」





ジーウェイは溜息をついた。





「じゃあ、いったい、なんで聖騎士をやってるんだ?」





「あーうん、まあ、それはナイショだ」





幸太郎はわからなかったが、その場にいたモコ、エンリイ、



エーリッタとユーライカには『ピン』ときた。





『この人、誰か好きな人がいるんだ。その女性のために


聖騎士をやってる・・・』





女の勘は、時に人知を超える。





「聖騎士になる気はないってのは、上に報告しとく。


上もしつこく勧誘はしないだろ。何しろ、掲示板みたら、幸太郎って


まだ『新人』なんだろ? 実績も特に無いって受付で聞いたし、


偉い人たちは興味を無くすだろうさ」





「そ、そうか・・・そりゃ、願ったり叶ったりだけど」





先に食べていたジーウェイは、ここで席を立った。





「俺はまだ用事があるから先に行くよ。ここは俺がおごる。


好きなだけ食べてくれ。支払いは教会にツケとくからよ」





「いいのか?」





「ああ、いいさ。聖騎士の特権なんて、その程度のもんだよ」





ジーウェイは食堂のウエイトレスに『あのテーブルの支払いは



全部教会にツケといて』と言って、名乗った。



本当におごる気のようだ。



そしてジーウェイは手を振ってギルドの外へ出て行った。



ただ、幸太郎の言った意味は違う。





『エンリイはメチャクチャ食うけど、いいのか?』





という意味だ。もう手遅れ。合掌。








「驚きましたね、ご主人様・・・」





「全くだ。俺たちはあいつらの『ご本尊』の正体を知っているから、


全員敵みたいな感覚だったけど・・・」





「まははほうふへんひってほふはひふぉひょうはひふるもはへ」





「もう、エンリイ、何言ってるか全然わからないわよ」





相変わらずエンリイはハムスターみたいに頬張っている。



エーリッタとユーライカは楽しそうに笑った。





「でも、幸太郎さん、『もう一方』は姿を見せないわね?


聖騎士みたいな人は見当たらない・・・」





エーリッタが周囲に視線を走らせながら言った。





「そーすると・・・『そっち』は敵意を持っている可能性があるな。


『ナイトメアハンター』ではない方を疑っているっぽい」





「ご主人様・・・目障りなら潰しておきましょうか?」





モコが薩摩バイオレンスなことを言い出す。





「待て待て、とりあえずは静観だよ。昨日の『練習』が


役に立つと思う」





結局は昨日決まった予定通り、過剰反応はしないという事に。



ただし、リーブラ教の方は『黒フードのネクロマンサー』か



『荒野の聖者』を疑っている可能性があると判明したのは



大きな収穫と言えた。





これはジーウェイに感謝だ。








朝食を食べ終わると仕事の時間。今日は『鳩師の護衛』という依頼。



簡単なので人気のある仕事である。










(C)雨男 2024/08/03 ALL RIGHTS RESERVED






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