関係の構築
「私は東に数時間の森に研究所を持っているネクロマンサーです」
幸太郎はゆっくり話し出した。できるだけ長い時間盗賊と話す必要がある。
「そうです。例のエミール王子暗殺があった森ですよ。
あの森のガイコツの騎士は私の自信作です」
「うげ、お前、あの森に住んでいるのか!
しかも、あの噂のガイコツどもはお前の作品だと?」
幸太郎は自分の推測が当たっていたことを知った。
やはりエミール王子暗殺の一件で、
あの森には人が寄り付かなくなっていたのだ。
事情をよく知らない者は『王子を護衛ごと殺す盗賊がでる森』
事情に気が付いている者には『下手に関わると巻き込まれる森』として。
そして、全く何も知らない者には『亡霊が歩く森』。
幸太郎は心の中でエミールとカルタスにお詫びした。
(殿下、カルタス殿、勝手に名前使ってこめんなさい)
「ええ、あのガイコツの騎士はエミール王子の護衛だった
5人の死体から作ったのです。見ましたか?
いかがですか? 美しいでしょう?」
幸太郎は得意気な顔をした。
「いや、見てねえよ。そんな気持ち悪いもん
わざわざ見に行く馬鹿はいねえって」
盗賊たちは露骨に嫌そうな顔をした。
作戦がまた一つ成功した。『質問』して、相手が『返答』する。
対等な関係の構築。
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