直接介入は禁止されてる
「んー・・・すると、アステラ様。あまりに増えすぎた地上の亡者を
冥界に送り返そうという『成仏大作戦』ってことでしょうか?」
「そういうこと! まだ大きな影響が出ないうちに、
こっそり冥界に強制送還しようってことね」
「こっそりなんですか? どうせやるなら『こっそり』じゃなくて
『ごっそり』すればいいのに」
「そういうわけにはいかないのよー・・・。さっきも言ったけど、
神は基本的に直接介入は禁止なのよ」
アステラは溜息をついて、ずずっとお茶を飲んだ。
冷蔵庫の横からポテチのコンソメを出してくる。
「地上はあくまで勉強と修行の場所なの。例えばさー。
あんた夏休みの宿題が出たときに、巻末に全て答えが
載ってたらどうする?」(ぱりぱり)
「全部写します!」(ぽりぽり)
「即答すんのね・・・。まあ、でもそうよね。面倒だもん。
でも、それだと計算力や思考力は身につかないわよね?
それである日突然『正解』が消えたら?」
「え・・・? そりゃ仕方ないから自分でやるしか・・・」
「それは真面目な人たちね。でも必ず一部には宿題そのものを
放棄する人たちが出るわね」
「あー・・・」
「そう。だから神はいちいち正解を見せることは禁止なのよ。
直接介入は基本的に禁止。地上はあくまでも勉強の場所。
絶対神さまはそのために、この物質界には『絶対の正解』を
お創りにならなかった。物質界にあるのは『最適解』と『最善解』だけ」
「なるほど・・・。ん? 絶対神さまなんているんですか?」
「いるわよ? あたしも直接お会いしたことはないんだけれど。
私が直接お会いしたことがあるのは銀河神様までね」
「絶対神さま・・・万能なんですよね? 私の世界には『万能の神はいない』
を証明するジョークがありますよ」
「あら? 面白いわね。聞かせてよ!」
アステラは今度はポテチのうすしおを冷蔵庫の横から取り出してきた。
(C)雨男 2021/10/30 ALL RIGHTS RESERVED