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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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予期せぬ遭遇 3


 こちらはリーブラ教の聖騎士、サーラインとロザリア。



すでに川を下り、ユタへと向かっていた。ロザリアが



サーラインへと話している。





「ロッシュゼフトたちの様子から察するに、あの場所へ


『ナイトメアハンター』が現れた様子はありません。


空振りという事でしょう」





サーラインは頷く。





「しかし、収穫無しに終わったわけではありません。


先ほどの冒険者たち・・・中でも特に、あの男は異彩を放っていました。


ただ者ではないでしょう。かなりの強者です。


調べてみる価値はありそうに思えました」





「そうだな、私も同感だ。あの男は後衛タイプだが、


かなりの強者だろう。言葉遣いも貴族並みだ。


高い教育を受けている。我々が、わざとケンカを演じてみたが、


まるで怯えていなかった。頭も良い」





ロザリアは少し怪訝な顔をした。





「・・・そんな頭の良さそうなそぶりは見えませんでしたが・・・」





サーラインは微笑んだ。





「いいや、あの男は頭が良い。我々のケンカが『わざと』だと


見抜いていたし、その上で『怯えたフリをすると、わざとらしいかも』、


と考え、何もしなかったのだよ。大したものだ。侮れん。


彼が連れていた獣人の奴隷2人も、まったく恐れてはいないようだった。


大した肝の座りようだ。並みの冒険者ではなかろう。


おそらく『隷属の首輪』は精神支配魔法への対抗策・・・といった所か。


彼らはB級冒険者なのかもな」





「そうですか・・・。なるほど。では、私は先にカーレと


ユタの冒険者ギルドを両方調べてから、バルド王国内の


調査に戻りましょう」





「『黒フードのネクロマンサー』と『荒野の聖者』の調査は


進みそうか?」





「いえ、現状、何も手がかりが無く・・・。ただ、さっきの男を見て、


探るべきは貴族ではなく、冒険者かもしれないと思いました。


特に先ほどの男は1度詳しく調べておきます」





「うむ・・・。そもそも貴族の長男、次男以外は冒険者に


身をやつす者もいると聞く。神出鬼没という意味では


冒険者こそ、条件にあてはまるかもな」





サーラインとロザリアは会話と情報交換をしながら、



ユタの門へ入って行った。彼らの目的は、当初、



あの場所で張り込みを続けているオーガス教の聖騎士たちが、



『ナイトメアハンター』について何か情報を掴んでいないか、



調査することだった。



しかし、幸太郎の雑魚とは違う雰囲気に興味を持ち、



少し『試す』ことにしたわけである。








一方、幸太郎たち。





「いやあ~、面倒な奴らと出会ってしまったなぁ。


ここへ様子を見に来たのは失敗だったか」





「私は聖騎士と話をしたのは初めてでした。


強そうでしたね」





「モコ、聖騎士っていうなら、ロイコークたちだって、


一応聖騎士でしょ」





「あんな馬鹿どもは聖騎士なんかじゃないわ」





「まあ・・・モコのいう事も、エンリイのいう事も間違ってないよ。


これはちょっと重要な話だ。


ロイコークは一応、立場としては聖騎士だったけど、


『鑑定』すると『オーガスの玩具』って表示されてた。


でも、さっきの奴らは全員『聖騎士』って表示されてたんだ。


つまり、実力で聖騎士になっているのさ。


誰かから能力を授かったわけでないのに、ロイコークたちと


同じく強大な戦闘力を持っていると見るべきだな。


侮れない」





「・・・ご主人様、聖騎士たちは、私たちの正体に


気付くと思いますか・・・?」





「わからない。直接俺たちの正体に繋がるような証拠は


無い・・・と思う。アルカ大森林には俺の正体を知ってる人は


多いけど、あそこはドライアード様たちがいるから、


手が出ないだろう。ユタならファルネーゼ様とイネスさんだが、


新領主を尋問するわけにもいくまい。


残るはカーレだけだが・・・」





「こ、幸太郎サン、大丈夫かな? ボクたち大きな事件に


関わっちゃってるけど・・・」





「う~~~ん、今のとこ『荒野の聖者』だけが、グリーン辺境伯家に


バレてる状況だけど・・・。ユタと同じく辺境伯家の人たちに


尋問するわけにはいかないだろう。それに一応、俺たちは


エメラルド様の命を救った『恩人』ってことになってる。


探りをいれても、さらっと、とぼけてくれると思うよ。


ギルドに調査を入れても『腕のいいヒーラー』どまりで、


正解にはたどり着かないはずだ」





「でも、油断は禁物ですね。前に『とぼける練習』はしましたが、


そのうち、おさらいしときましょう」





「エーリッタとユーライカにも練習してもらおうかな。


まあ、一番知られるわけにいかないのは、俺が『異世界人』って


ことだけどね。これはモコとエンリイの助けが必要だよ。


これからもよろしく頼む」





「はいっ!!」





「どこまでもついていくよ!」





モコの尻尾が『もさこら、もさこら』と揺れる。



エンリイの尻尾が『うにゃうにゃ』と揺れる。



2人のしっぽがかわいい。








カーレに帰ると、ギブルスの店に直行。ギブルスに相談してみた。



ギブルスは『まあ、下手に動かん方がええじゃろ』と言った。



幸太郎は、もう1つ。聖騎士が言った『アウシタン』についても



聞いてみた。





「オーガス教の聖騎士を、人々は『ローディスト』、


リーブラ教の聖騎士を『アウシタン』と呼ぶんじゃ。


どちらも通称で教会はそんな名前では呼ばんがの。


リーブラ教の聖騎士は、最終的に人の器を超越して、女神リーブラに


お仕えする・・・という事を目標にしておる。それで、


『人の器を外れる』という所から『アウシタン』と呼ばれるように


なったのじゃ。逆にオーガス教の聖騎士は、オーガスの


指し示す道をひたすらに進むことを自分に課しておる。


それで『道を進む者』という所から『ローディスト』と


呼ばれるようになったわけじゃよ。


まあ、何せ、ただ『聖騎士』というと、どっちの宗教の


聖騎士かわからんのでのう。どっちも名称の変更など


断じて認めんし、譲りもせん。それで、人々の間に


そんな『俗称』が生まれたのじゃ。ひっひっひ」





「『アウシタン』と『ローディスト』・・・。


それぞれの宗教の聖騎士の俗称ですか・・・。


表向きはともかく、お互い仲が悪いことだけは間違いないようですね。


こっちの世界でもやっぱり寛容な宗教って無いのかなぁ」





「ひっひ、まあ、お互い『我こそは神の代理人』を謳って


おるでのう。1ミリたりとも譲りはせんよ。


わしらにしてみれば馬鹿馬鹿しくて固執する必要はなくとも、


あ奴らは至って真剣じゃ。妥協など絶対にありえん」





元の地球でも、この異世界でも、結局宗教というものは



譲り合うことは無いらしい。



キリスト教もカトリックとプロテスタントで争った。



イスラム教もシーア派だのスンニ派だのと争っている。



『中東和平』という言葉は、ユダヤ教、キリスト教、



イスラム教で共通して使っているが、



『では』



と言って中身をみると、『じゃあ、エルサレムは俺のものな』



である。あの確執は世界の誰が介入しても解消できないだろう。



誰かが介入して解決できるなら、過去2000年の間に、



誰かが成功していたはずだ。



確執を解消する方法は大きく3つあるが、1つを除けば実現不可能。



結局、宗教はお互いを拒絶しあうのだ。神の名のもとに。








聖騎士についての対応をしばらく話し合ったが、



結局『過剰反応しない』に落ち着いた。



ただ、ギブルスは『わしが、ちょっと根回ししておこう』と



請け合ってくれた。味方というものは、本当にありがたい。










(C)雨男 2024/08/01 ALL RIGHTS RESERVED






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