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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 3
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予期せぬ遭遇 2


 幸太郎たちは、途中から完全に『蚊帳の外』だった。



目の前でオーガス教の聖騎士と、リーブラ教の聖騎士の



言い争いがケンカ寸前になる所を見せられたのだ。





(・・・という『茶番劇』をわざわざ見せるとはねぇ。


こっちを試しているようだな・・・高く評価して頂いて、


ありがたくて涙がでるよ・・・)





もちろん、全てが『出来レース』というわけではないだろう。



ロイコークたちのくだりは、完全に一触即発の気配にまで



緊張が高まっていた。





(オーガス教の聖騎士とリーブラ教の聖騎士が、


仲が悪いという事だけは間違いなさそうだったけど)





幸太郎はそんなことを考えた。








オーガス教の若い聖騎士が、幸太郎たちに頭を下げた。





「申し訳ありませんね。聖騎士にあってはならない醜態を


お見せしてしまいました。聖騎士は人々の模範とならねばいけないのに。


あっと、申し遅れました。私はオーガス教聖騎士の1人、


ジーウェイです。こちらの方はロッシュゼフトと申します」





年配の聖騎士が穏やかな笑みのまま、会釈した。





「いやはや、お恥ずかしいところを。まあ、彼らを許してやって下さい。


あなた方が『アウシタン』と呼んでいるように、


彼らは『最終的に人間という器の外へ出て、女神リーブラにお仕えする』


という事を目標としておりますでな。我らオーガス教と比べると、


どうしても・・・何というか・・・傲慢な言動が目立つのです・・・」





幸太郎は慎重に対応することにした。





「いえ、こちらこそ、お恥ずかしい所を。


聖騎士様方の迫力に、すっかり腰が抜けてしまい、


見ている事しかできませんでした。


どうか、お許しください」





謙虚な態度に出た幸太郎にロッシュゼフトは、少し気を良くしたらしい。





「寛容と謙虚はオーガス教の教えとするところ。


幸太郎さん、と申しましたな。幸太郎さんの心は光の神である


大神オーガスへと真っすぐ進んでおられるようだ。


きっと、大神オーガスは幸太郎さんを見ておられるでしょう」





(確かに、どっかで見てるだろうけどな。『オモチャ』として)





幸太郎は内心、舌を出す。ロッシュゼフトはここで話を



最初の地点へ戻してきた。





「それで、幸太郎さんは悪魔の眷属ニコラと


『ナイトメアハンター』の戦いの場を見に来られたのですか?」





「はい、その通りです。ただの興味本位ですが、


きっと激しい戦いの痕跡が残っているだろうと思いまして。


町の警備隊の人たちから『何もないぞ』とは言われたのですが・・・。


いや、これはホントに拍子抜けでした。


ところで、聖騎士様たちは、どうしてここへ?」





「私たちは悪魔の眷属の魂が地上に残らぬよう、


浄霊に来ているのです。まだ、わずかに悪魔の魂の痕跡・・・


残滓が残っているのですよ。まあ、これは修行しないと見えないので、


聞き流してください。そして、ここへ見物に来た人々が


その悪の魂に取り込まれないよう、警戒も兼ねています」





「そうでしたか。それはなんと尊い行いを。僭越ですが、人々に代わり、


深く感謝いたします」





しかし、幸太郎は本当はこう思っている。





(うそつけ! この詐欺師どもが! もう、何にも


残ってねーよ!!)





今度は幸太郎は内心、毒づいた。幸太郎の『霊感』をオンにしても、



もう誰の魂も残っていない。ただ、それを言うわけにはいかない。





「では、我々はここで失礼いたします。聖騎士様がたの


お仕事が滞りなく進むように、大神オーガスへ祈っております」





そう言って幸太郎たちは頭を下げ、ロッシュゼフトとジーウェイに



手を振って川沿いに帰途へ着いた。








幸太郎たちの姿が小さくなると、ロッシュゼフトが鷹揚な態度で



ジーウェイに話しかけた。





「・・・どう思った?」





ジーウェイは畏まって答える。





「『ナイトメアハンター』かどうかはわかりませんが・・・。


かなりの強者ですね。私たちのケンカの際にも、怯えず、


しっかり情報収集しているように感じました。


一応、彼は調べてみるだけの価値はあるかと」





「そうだな・・・。それに、冒険者風情と侮っていたが、


冒険者でも、あれだけしっかりと敬語が使える者がいるのだな。


あの男が高い教育を受けていることは疑いない。


考えてみれば、冒険者には貴族の3男以下が時々いると聞く。


『黒フードのネクロマンサー』は貴族階級らしいという話だが、


むしろ調べるべきは冒険者の方かもしれん」





「盲点だったやもしれませんね。私はこの近辺の


冒険者ギルドを調べてみましょう。交代でこの場所を


見張っていましたが、最後に収穫がありましたね」





「ここへ来るのは、取るに足りない雑魚ばかりで、


もう、これ以上この場所を見張っていても仕方ないと思っていたが、


全くの無駄というわけではなかったな。


『ナイトメアハンター』が現れなかったのは残念だが、


『黒フードのネクロマンサー』については、


教主様へ報告を入れておこう、『冒険者も調査すべき』とな。


ジーウェイ、この近辺の調査の方は任せる」





「承知いたしました」





「それにしても、あの幸太郎という男・・・。不思議なやつよ。


先程、話している最中に、まるで同年代と話しているような


錯覚を起こした。こんな感覚は未だかつて味わったことが無い・・・」





ロッシュゼフトとジーウェイはここでの調査を終了することにした。



彼らは他の聖騎士と交代で『ナイトメアハンター』が



再び様子を見に来るのではないか、と張り込みをしていたのだ。





その推測は当たっていた。幸太郎は異臭発生の後、



この場所を見ていない。蠅の竜巻の後、ここがどうなったのかは、



そのうち少し確認しておきたいと思っていたのだ。



ニコラはもちろん、ニコラのグループメンバーが



ちゃんと成仏してるのか、幸太郎は少しだけ気になっていた。



幸太郎の『本業』はあくまでも成仏行脚の方だから。










(C)雨男 2024/07/30 ALL RIGHTS RESERVED






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