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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 2
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様子を見よう 10


 ニコラたちは冒険者ギルドが運営している宿屋は



使っていない。ギルドから少し離れた宿をたまり場にしていた。



その宿の食堂で、ニコラのグループの冒険者が集まり、相談・・・



というか、怒りをぶちまけていた。





「明日、俺たちが行って幸太郎たちを全員ブチ殺してやるぜ!」





「少し落ち着けよ、ミョルドー。


幸太郎さえ殺せば、上玉の女2人はそのまま奴隷として手に入るんだ、


もったいないことはするな。売るだけでもかなりの


金額になるはずだ。まずは地獄を見せてやらねばならんがな」





「なぁヨラシフ、デリウスたちは本当にやられちまったのかな?」





「俺もよぉ、あいつらが、あっさりやられるとは思えねぇ。


馬鹿正直な戦いしかできないわけじゃねぇし、


そこそこ腕も立つ。ホントは幸太郎たちじゃなくて、


他の奴にやられたんじゃ・・・」





現在この宿にはニコラのグループの内、冒険者11人がいる。



3人はニコラのパーティー。あとは4人組のパーティーが2つ。



ニコラのグループにいる冒険者は、これで全員だ。



デリウスたちは、もう帰ってこないから。





あとはこの宿の経営者がニコラの仲間だ。表向きは無関係だが、



宿の主人も『弱者をいたぶる』趣味があった。



過去、この宿に宿泊した人間の内、数人は『行方不明』になっている。



宿の主人の趣味の餌食となったのだ。





宿の食堂でたむろするニコラたち。宿の入り口で、



表通りの方をニコラのパーティーメンバー2人が見張っていた。



幸太郎たちが様子を見に来ないか、警戒しているのだ。



ただし、カーレの住人が行き交うだけで、幸太郎たちは



全く姿を見せない。





ニコラは頬杖をつき、黙って表通りの方を見ていたが、



小さく溜息をつくと、仲間たちの会話に割って入った。





「デリウスたちは、もう帰ってこないよ。死んでる。


指輪は死んだデリウスたちから『戦利品』として奪ったんだ。


殺したのは幸太郎たち以外にあり得ない。


幸太郎自身も遠回しに『奴らは死んだ』と僕に言ったよ。


そして、デリウスたちは、死ぬ前に僕らのことをゲロったんだろう。


なっさけない奴らだな。だからこそ、幸太郎はこれ見よがしに


デリウスの指輪を僕らに見せびらかしていたんだよ。


生意気にも『挑発』してきたんだ。会話でもイチイチ癇に障る


言い方をしていた。ムカつく奴だよ、まったく」





「ニコラが言うなら間違いねぇな・・・。


ちくしょう・・・あんな優しくて気のいい奴らを殺すなんて・・・。


残酷過ぎるぜ、神はこの世にいねえのかよ」





「だから俺たちで仇を討ってやらねぇとな」





「『もう、殺してくれ』って言うまで苦しめてやろうぜ」





「明日、幸太郎たちが町を出るようなら、俺たちがやってやる。


きっとデリウスたちは油断しすぎたに違いない。


俺たちが本気を出せば、幸太郎たちなんて


赤子の手をひねるようなもんだぜ」





「で、でもよ、あのノッポはC級だっていうぜ?」





「あ? 俺たちが幸太郎たちより弱いって言いてぇのか?」





「いや、コイツはそういう意味で言ってるんじゃねぇよ。


デリウスたちの二の舞にならねえように


気をつけろって言ってんのさ」





「なんだと! 『二の舞』!? バカにしやがって! 


俺のパーティーはデリウスたちよりも何倍も強いってことを


忘れてんじゃねぇのか!?


なんなら、この場で思い出させてやってもいいんだぜ!?」





「騒ぐな、うるさい・・・」





ニコラがピシャリと言った。それだけで皆が静まり返る。



誰も発言せず、およそ10秒、完全に静寂が支配した。





ニコラは大きく溜息をつくと、『指示』を出した。





「ヨラシフ」





「は、はい」





「ミョルドー」





「お、おう」





「お前たちのパーティー、8人全員で協力して幸太郎たちを捕らえろ。


傷をつけてもいいが、殺すな。僕が直々になぶり殺しにする。


・・・できるな?」





「わかりました」





「ニコラ! それぐらい俺のパーティーだけでも・・・」





ニコラがジロリとミョルドーを睨んだ。





「い、いえ、何でも、ねぇよ。わかった、ヨラシフたちと協力する」





「それでいい。僕に逆らうな。おそらく幸太郎たちは


明日も『休暇』で外出する。誘っているんだよ。


『かかってこい』ってな。伏兵がいるかもしれんから、


ヨラシフは周辺を警戒ながら追跡しろ。伏兵がいるようなら、


一旦引き返せ。その時は仲間を集めた上で、僕も出よう。


索敵を怠るな。相手の数を確認しろ。確実に勝てると思える時だけ


仕掛けろ。わかったな?」





「了解です」





「わかったよ・・・」





「いいか、お前たちは僕のいう事に従っていればいいんだ。


お前たちと違って、僕はいつでも正しいんだから。


余計な欲を出すな。それと、わかっているとは思うが・・・」





ニコラの目が不気味に光る。





「僕を失望させるなよ・・・?」





ヨラシフたち、ミョルドーたち、全員が震えあがって、



声も出なくなった。ただ、無言で頭を下げる。





「じゃあ、捕らえたら連絡を入れろ。伏兵がいる時でも、


必ず連絡を入れなよ? それくらいできるでしょ? 


うん、じゃあ、明日期待してるね。僕はここで待ってるから」





ニコラはあどけなさの残る顔で微笑んだ。










(C)雨男 2024/05/23 ALL RIGHTS RESERVED






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