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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 2
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『フレンド』登録して欲しい 2


「なるほどー。クランの一歩手前って感じ?


でも、なんで別のパーティーである必要があるの?


あたしたち、別に一緒のパーティーでもいいけど?」





「まあ、普通に考えれば、俺もエーリッタとユーライカの


言う通りだと思うよ。冒険者パーティーが3人組、4人組が多くて、


5人組以上のパーティーが少ないのは報酬の分配で揉めることが


多いからだけど、俺たちはお金に困っていないからね」





「でも、ご主人様は『目立つと困る』っていう事情があるのよ。


C級のエンリイがいるから『そこそこ強い』って見られるのは、


どうしようもないけど、それ以上の注目は出来る限り


減らしておきたいの。


なるべく、他の知らないパーティーと組むことは避けたい所なのよ。


周りにいるのが私たちと、エーリッタとユーライカだけなら


ご主人様が死霊術を使っても平気だし」





「で、ボクが提案したんだ。例え難しい依頼を成功させても、


あくまでそれは『エーリッタ、ユーライカ組』と上手く


連携できた結果である・・・って感じにしようよってさ。


幸太郎さんの実力も隠せるし、『フレンド』登録してる


パーティーがあれば、他のパーティーと組まされることは


激減するはずだから。


もちろん、幸太郎さんが本気を出せば大抵のことはできると思う。


はっきり言えばドラゴンが相手でも、倒せるだろうし。


でも、注目が集まると、今度は誰が見ているかわからない」





「エーリッタとユーライカは知らないだろうけど、


実はバーバ・ヤーガさんは俺を見ただけで


『お前、ネクロマンサーか』って見抜かれたことがあったんだ。


オドが見えるとか何とか言ってた。


まあ、バーバ・ヤーガさんほどの手練れはそうそういないだろうけど、


注意するに越したことは無い。


『お前は黒フードのネクロマンサーではないのか?』


って尋問されるような事態は絶対に困る。


可能性としては低いだろうが、とにかく他のパーティーと組まされる時は


『じゃあ、エーリッタ、ユーライカ組を呼んでくれ』と


言える状況を先に作っておきたいんだ」





「そっか、『魅了』とかでしゃべらされる可能性があるもんね」





「いいや、もっと別の意味で困る。俺には『魅了』は効かないんだよ。


『なんでコイツ魅了も支配も効かないんだ!?』って


騒がれて、念入りに取り調べを受けるだろう」





「ご主人様の能力は戦争の火種にもなりかねませんからね」





幸太郎はエーリッタとユーライカに事情を説明した。



ジャンジャックとグレゴリオとやった『パーティーのシェイクダウン』と



同じ内容を話したのだ。もちろんエーリッタとユーライカは



口をあんぐり開けて驚いている。





「それと、もう2人は協力に『オーケー』してると見て話すけど、


俺たちはカーレに到着早々、こんな事件に巻き込まれてね・・・」





幸太郎は『辺境伯家乗っ取り未遂事件』を話した。



本当は軽々に話していい内容ではないのだが、協力してもらう以上、



情報の共有はしておいた方がいい。



どこで話が食い違うか、解らないからだ。



『その話は知らない』というフリをするにも、



しっかり口裏を合わせておく必要がある。



そして秘密の暴露は『あなたたちを信用している』という



確かな証にもなるから。





エーリッタとユーライカは顔を見合わせてから、溜息をついた。





「うわー・・・もー、聞いといて良かった・・・。


辺境伯の執事が馬車で幸太郎さんたちを迎えに来たとか、


ギルドで話題になってたからさー。人前で根掘り葉掘り


聞いちゃうとこだった・・・」





「私これからは『大神オーガス』と『女神リーブラ』の話は、


さらっと否定するか、スルーしとくわ・・・。


冗談じゃないっての。教会がそんなヤバい奴らだったなんてさ」





話は尽きないが、モコがエーリッタとユーライカに確認を取る。





「念を押すけどエーリッタとユーライカは、私たちへの協力は


『オーケー』ってことでいい?」





エーリッタとユーライカは、二つ返事で承諾した。





「もっちろん! なんでも言ってよね! 幸太郎さんは恩人じゃん!」





「正直、こっちも助かるわ。何せ、言い寄ってくる奴らが


多くてね~・・・」





モコとエンリイが注目を集めているのと同様に、



エーリッタとユーライカにも、ちょっかいをかけてくる男は多い。



まあ、男なんて大体そんなもんだ。





エーリッタとユーライカはカーレの冒険者ギルドに来た時に、



他の冒険者とケンカになり、レイピアを抜く事態になっている。



キャサリン支部長が2階から『咳払い』をしたので、



それ以来何も起きていないが、言い寄ってくる男そのものは後を絶たない。





「モコ、エンリイと一緒にいれば、ちょっかいかけてくる男も


減るってもんでしょ」





2人は明るく笑った。





幸太郎は、そんなエーリッタとユーライカに感心する。





(いい笑顔だ。2人だって、村が戦乱に巻き込まれて、


一時は奴隷にまでされたってのに・・・。強いな。


俺も見習わなくては・・・)





モコ、エンリイ、エーリッタ、ユーライカ。



4人の髪が海からの風で優しく揺れる。



それは1枚の絵画のように美しい光景だった。



前世で女に縁が無かった幸太郎にはまぶしすぎる光景だ。





(もうすぐ目覚まし時計が鳴るんじゃなかろうか)





幸太郎はそんなことを考えた。








「さて、一応、エーリッタとユーライカに協力の見返りの


条件を話しておこうか」





「えー。別にそんなん要らないけど?」





エーリッタとユーライカは、軽ーく言った。





「いやいや、協力してもらう以上、そちらにもメリットが無いとね。


報酬はちゃんと半分こ。そして、協力してもらう時は


経費はこっちで持とう。食費、宿泊代、装備の修理費など、


行動を共にしてる間は全て俺が払う。


『矢』もダークエルフに頼んで作ってもらったんだ」





幸太郎は『マジックボックス』から矢筒を取り出した。





「ドライアード様たちが木を作り、ダークエルフたちが『矢』に


加工してくれた。俺は詳しくないけど、クロブー長老が言うには


『一級品』だそうだよ」





エーリッタとユーライカは1本手に取って眺めた。



横から、前から、後ろから。





「む・・・。見事な出来だわ。木の乾燥も完璧。


素材の木の特性、成長具合まで、完全に理解して


繊細な加工が施してある・・・。


これ、撃ったら回収しないと、もったいない出来栄えね」





「で、これを1000本作ってもらった。


いくらでも、撃ちまくっていいよ」





「「えええええ!? 1000本!?!?」」





「うん、なんかダークエルフたちがノリノリで作ってた。


『聖者様のご要望である!』とか言ってさ。


ドライアード様たちも水と引き換えに、じゃんじゃん木を


生やしてたよ。代金もたんまり払っておいたから心配ない」





「な、なんか幸太郎さんといると、感覚がおかしくなってくるわ・・・」





「この矢、武器屋で売ってるヤツより、命中精度、飛距離、


威力、全部圧倒的に上のはず・・・ね。


もう芸術品の域よ、これ。


こ、これを『撃ちまくっていい』って・・・」





モコとエンリイが鼻息も荒く大威張り。



エーリッタとユーライカは顔を見合わせた後、



おずおずと聞いてきた。





「あ・・・あのさ、幸太郎さん、本当にいいの?」





「なんか、メリットって言うより、私たちばっかり得してるじゃん」





幸太郎は笑って軽く手を振った。





「もちろん、いいんだよ。任務となれば、


お互い命がけの時もあるはずさ。


そんな時に『貸し』だの『借り』だの『損得』だのに気を取られてたら、


死にかねないよ。実戦では邪魔なだけだと思う。


一緒に目的のために力を合わせることが、こっちのメリットだよ。


それで十分お釣りがくる」





「・・・やっぱり幸太郎さんって・・・」





「なんか、あたしたちより、ずっと年上な気がする・・・」





幸太郎は苦笑した。










(C)雨男 2024/05/01 ALL RIGHTS RESERVED






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