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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 2
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『フレンド』登録して欲しい


 収穫したアサリやハマグリを砂抜きのために、



桶に蓋をして、一時放置。ひたひたの海水と暗い場所の方が



貝は砂を吐きやすい。





幸太郎たちはタープの下でお茶を飲みながら休憩。



海からの潮風が気持ちいい。





「幸太郎さん、その『火の出る鍋』って、


もしかしてダンジョンで手に入れたの?」





「ああ、これはダンジョンの地下13階で手に入れたんだ。


本来の使い方は『暖房、兼、照明器具』なんだけど、


俺たちは『魔法のコンロ』として使ってる。


とっても便利で重宝してるよ」





「ね、ね、幸太郎さん、もしかしてアルカ大森林ダンジョンに現れたっていう


『ナイトメアハンター』ってさ、正体は幸太郎さん?」





「そうだよ。正体というか・・・ジャンジャックとグレゴリオ殿が、


俺の名前を表に出さないために考えた偽名みたいだ」





エーリッタとユーライカは『やっぱり!』と明るく笑った。





「ほら、聞いた? エーリッタ。やっぱり、あたしの


言った通りじゃん!」





「何言ってんのよ、ユーライカ! 元々あたしが言ったんでしょーが!」





「ちょっと、2人とも! それ、誰かに言ってないでしょうね?」





モコが少し怖い顔で言う。





「だいじょーぶ! わかってるって! 宿屋の部屋で2人だけの時にしか


言わないことにしてるから。モコにはさすがに及ばないけど、


あたしたちエルフも耳は良いもん。ちゃんと気を付けてるわ」





「恩人に対して『恩を仇で返す』ようなマネはしないわよ。


私もエーリッタも、そこはちゃーんとわきまえてるって」





「まあ、ちょうど『変なあだ名』の話が出たし、本題に入ろうか。


もう知っての通り、現在俺には『黒フードのネクロマンサー』


『荒野の聖者』『ナイトメアハンター』という3つの名前で


賞金がかかっている。だからなるべく目立ちたくないんだ。


俺は冒険者ギルドに『ヒーラー』として登録したから、


『陽光の癒し』は何とか誤魔化して使えると思うけど、


『死霊術』は現在全く使える状況に無い。


俺とモコとエンリイ『だけ』の時はいいんだが、


周囲に事情を知らない人がいると、


俺は『ろくに戦闘力の無い、ただのヒーラー』を演じ続ける必要がある。


とにかく、何としても疑われないようにしなくてはならない。


もし、任務中に危機的な状況が発生すれば、俺は『死霊術』を


使わざるを得ない。俺はモコとエンリイが死ぬのは絶対に嫌だからな。


が、その結果、俺がネクロマンサーとバレれば、俺たちは


カーレを逃げ出して他の土地へ行くしかないだろう」





ここからエンリイが後を継ぐ。





「でも、逃げた先の町でも、結局同じことが


繰り返されるかもしれないでしょ?


現在、幸太郎サンの目的は『D級のギルドカード』なんだ。


これがあれば、旅先の町でもスムーズに門を通過できるようになる。


そして何より初対面で『ヒーラー』という肩書を疑う人は


完全に、いなくなるはずさ。


正直、幸太郎サンの力はB級を名乗れるくらいはあるよ。


これはB級冒険者のジャンジャックとグレゴリオも同じことを言ってる。


でも、それは『本気を出していいなら』という条件付きの話だからね」





「なるほど・・・。わかってきた。冒険者ギルドに持ち込まれる


依頼は『複数のパーティーが参加する』タイプのものが


結構あるわよね。他のパーティーと組まされる場合を


一番心配してるってことか」





「あ、じゃあ、私とエーリッタに幸太郎さんのパーティーに


入ってくれってことね!」





「ううん、違う。あくまでもボクたちとは別のパーティーで


いて欲しい。その必要があるんだ。別パーティーでの


『協力者』・・・つまり『フレンド』登録を頼みたいのさ」





「『フレンド』登録・・・?」





新米冒険者のエーリッタとユーライカは『クラン』は



知っていたが、『フレンド』は知らなかった。



もちろん幸太郎も聞いたことがない。ただ、幸太郎から



要望を聞いたエンリイが『これがいいと思うよ』と薦めてくれたのだ。





『クラン』は元々『家族や親戚』を含めた『一族』を意味する。



冒険者ギルドでは『3つ以上のパーティーが参加した共同体』



といった意味で使われていた。





対して『フレンド』は『仲良しグループ』程度。





両者の具体的な違いは『自由度』だ。『クラン』は、参加している



パーティーメンバー以外とは基本的に一緒に仕事をしない。



『フレンド』は普段は特に制約は無い。が、もし複数のパーティーが参加する



仕事の時は『フレンド』のパーティーを優先して招く、というもの。





『クラン』は『ギルド内ギルド』と呼ばれるほど、閉鎖的な面がある。



確かに信頼できる『仲間内』でしか仕事をしないため、



他のパーティーから物を盗まれたり、見捨てられたり、



最悪の場合、襲われたりという心配が無い。



これは大きなアドバンテージ。



しかし現実ではなかなかクランの運営は難しい。



一番問題になるのは『分け前の分配』だ。ギルドに入ってくる



依頼は報酬が決まっている。だから当然1人でやれば独占。



2人なら半分。3人なら3等分。クランはそれに加えて参加してる



他のパーティーメンバーが絡んでくる。



ろくに働いていなくても『分け前』の計算には入れなくてはならないのだ。



『一週間に一度、給料日』という形態を取っているクランが多い。



パーティーメンバー全員の給料を稼ぐ必要があるため、



クランはできるだけ報酬の高い依頼を受けようとする。



だが、報酬の高い仕事は難易度も高い。



すると、クラン全体の中で優秀な前衛、後衛、荷物持ちは



常に高額報酬の難しい仕事に『選抜』で駆り出され、



2番手、3番手の人は比較的報酬の低い仕事ばかりすることになる。



それが、『トータルで一番収入が多くなる』からだが、



結局どちらからも色々な理由で『割に合わない』と文句が出てくる。





例えば、もし幸太郎たちがどこかのクランに参加したらどうだろう?



クランのリーダーは優秀なヒーラーで荷物持ちができる幸太郎を、



自分の仕事にどんどん駆り出すだろう。



高額報酬だけでなく、自分の評価アップにも繋がるからだ。



C級、B級を目指せるかもしれない。



だが当然、モコとエンリイはふくれっ面になる。



幸太郎自身も『D級で充分』と思っているのに、



なんでクランリーダーの評価を高めるためにモコとエンリイに



寂しい思いをさせなくてはならないのか、と不満に思う。



結局幸太郎たちはクランを脱退するだろう。必要性が無いから。





クランリーダーは大変だ。余程のカリスマが無いと、



クラン内部がまとまらない。クランが解散する理由のほとんどは



金銭問題だ。





『フレンド』はそのパーティーから誰かを選抜するという事は無い。



『幸太郎のパーティー』、『エーリッタとユーライカ組』という



パーティーの枠組みは絶対に壊さないのだ。



報酬も『2つパーティーがあるから2等分』で済む。










(C)雨男 2024/04/29 ALL RIGHTS RESERVED






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