街道に出れた
幸太郎は街道に出たことが嬉しくて、
日没ではあるが少し歩こうと思った。
強盗が出てもゴーストで驚かせば逃げてゆくのではないか?
という楽観的な考えだ。
はっきり言えば、幸太郎は少々うかれていた。
しかし、完全に日が暮れて夜になると、さすがに危険な気がした。
森よりは断然、月や星で明るいが・・・現代の日本とは比べるべくもない。
幸太郎は街道を少し離れると、時計塔でシェルターを作った。
相変わらず腹ペコだが、あとは街道を北上するだけなのだ。
幸太郎は気分的にすごく楽になった。さっさと寝よう。
幸太郎が硬い時計塔のベッドに横になったとたん、妙な音が聞こえてきた。
それは遠いが、金属どうしが打ち合う音だった。
(これって・・・多分だけど・・・剣と剣が打ち合う音だ!)
幸太郎は上半身を起こして、音の方向をさぐった。
(どうしよう? 俺武器なんて持ってないけど、
いや、持ってても使えないけど、助けにいくか?
え? どうやって? ゾンビを連れていってどうにかなるのか?
相手が多かったら? 魔法を使ってきたら?
そうだ『神虹』で吹き飛ばして、いやいや誰も助からないだろ、
何考えてんだ、落ち着け、おれ。無視したほうが安全だろう、
ザコだぞ、俺・・・)
だが、幸太郎はシェルターを消して走りだした。
かすかに女の子の悲鳴が聞こえたからだ。
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