バカなショートカット
最初、幸太郎は順調な足取りだった。
まあ実際問題なさそうに見えていたから当然である。
しかし、ちょっとした丘を越えたりすると次第に様相は変わっていった。
小さいが深そうな川。3メートルほどだが、登れない斜面。
密集して通れない藪・・・。迂回しなければならないものに
たくさん出くわすはめになった。しかも幸太郎は革靴である。
平坦な道はまだしも、斜面などは緩くても苦労した。グリップしない。
森を出て1時間ほどですでに幸太郎は
『まっすぐ西へ行くべきだった』と後悔した。
遠回りで距離があっても『早い』というのは、
こういう事だったのだ。マヌケ。
しかし、幸太郎は今更引き返せないので進むしかなかった。
途中休憩をはさみながら、意地になって幸太郎は進んだ。
太陽の位置から推測すると、幸太郎は北西・・・というより
西北西へ進んでいるとわかった。幸太郎はすでにショートカットは
諦めて街道へ出ることを優先していた。最初から西へ進んでおけば・・・。
日が暮れるころ。ついに幸太郎は街道へ到達した。
人や馬車の通った跡がある。
おお! ついに生きている人に会えそうだ!
現在位置は全くわからないが、とにかく後は北上するだけだ。メシ!
(C)雨男 2021/11/08 ALL RIGHTS RESERVED




