天へ
幸太郎は残りの4人の騎士に呼びかけようとした。
しかし、さっきまでさまよっていた4人の騎士はすでに
エミールとマーガレットの前に集まり膝をついていた。
「エ・・・ミール・・・殿・・・下・・・」
「マーガレット・・・さま・・・」
4人の騎士も平伏して泣いていた。すでに自我は消えかかっているにも関わらず、
彼らは忠誠だけは失っていなかったのだ。
エミールの言葉を聞き、4人の騎士は声をあげて泣いた。
死んでいても、骨だけになっても、人は涙を流すのだ。
魂がある限り。それが、人なのだろう。
エミールとマーガレットが幸太郎に微笑みかけた。
「幸太郎様、お願いいたします」
「承知いたしました。エミール殿下、マーガレット様」
幸太郎は立ち上がるとカルタスに微笑んだ。
カルタスも幸太郎にうなずいた。
「この御恩は、決して忘れません。いつか、必ずや」
「よい旅路を。カルタス殿」
幸太郎が両手を広げる。優しく、慈しむように。
「『レスト・イン・ピース』・・・」
光の輪が広がる。5人の騎士は光に包まれると、
そのまま光の粉のようになって天へ昇っていった。
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