エミールの感謝
エミールは幸太郎に向き合うと感謝を伝えた。
「幸太郎様、この度は私の部下たちを救っていただき、
誠にありがとうございます。
私とマーガレットはずっとカルタスたちを待っていたのです。
しかし、声も届かず、手も触れることができず、
見ていることしかできませんでした」
「いえ、私はまだ何もしてはおりません。
殿下に感謝していただくようなことは・・・恐れ多いことです」
確かに幸太郎は、まだ『成仏』を使っていない。話を聞いていただけだ。
「幸太郎様は確かにカルタスたちを救ったのです。
カルタスたちは自責の念と後悔に囚われ、
誰の言葉も届かなくなっておりました。
そして今、彼らの心を縛っていた鎖は幸太郎様と話すことで解けたのです。
だから、私とマーガレットの姿がカルタスたちに
見えるようになったのですよ」
幸太郎は驚いた。カルタスは自我を持っていたが、
やはり他の4人と同じく後悔の中に閉じこもっていたのだ。
だから同じ霊体であるエミールとマーガレットの声が届かなかった。
しかし、幸太郎はネクロマンサーの『交信』を使ったので、
チャンネルを合わせるようにカルタスに話しかけることができたのだ。
「左様でしたか・・・。お役に立ててなによりです、殿下。
どうか、ランドール卿たちを、殿下のもとへ送ることをお許しください」
『成仏』を使う時がきた。
(C)雨男 2021/11/07 ALL RIGHTS RESERVED




