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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ
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領主からの依頼 20


 『鴉』は慎重に小屋へ接近する。



周囲に人影は見られない。物音は小屋の中からしかしない。





(しかし・・・部下以外の誰かの気配がする・・・の、だが・・・)





すでに日は沈み、辺りは闇が覆いだした。誰かが弓で狙撃しようと



していても、もう見にくくて狙いはつかないだろう。



『鴉』はそう考えてはいたが、なお一層慎重に近づく。



小屋の中からは、相変わらずくぐもった声と物音がしていた。





(さて、どうする・・・? 戸を蹴破るか・・・? 


それとも、ノックして何も知らないふりを装うか・・・?)





だが、『鴉』は突然、ゾッとする寒気を感じた。



木々の梢の中からエンリイが音もなく急降下で襲ってきたのだ。





ガキッ!





『鴉』は剣でエンリイの棍を切り払った。さらに、地面を



転がりながらエンリイの蹴りを膝で受け止める。



視線がぶつかり、お互いに弾かれるように距離をとってにらみ合った。





「ヒュ~、やるね。びっくりだ。


ボクの存在に直前まで気づいてなかったのに、


見事な反応だよ。棍も蹴りも、両方防がれるとは思わなかった」





「こちらも驚いたよ。気配は感じていたが、これほど近くまで


接近を許すとは。兵士・・・ではないな。冒険者か?


しかもC級以上とみた」





エンリイはわざとしゃべっている。それが『合図』だからだ。





その声を聞いて、幸太郎とモコが小屋の戸を開け、出てきた。



ゆっくりと。





「よう、あんたがコイツらの親玉かい?」





幸太郎が親指で小屋の中を指し、のんびりと質問する。



しかし、くぐもった声はするが部下たちの姿は見えない。



『鴉』は少し迷ったが、逃げずに答えることにした。



待ち伏せされていた以上、今さら無関係を装ったところで無意味だ。



そして幸太郎に緊張感が無かったことに加え、何よりも情報が欲しい。





「そうだ。お前らは誰だ? 手下どもは生きているのか?」





「俺たちは冒険者だよ。なんか、あんたの手下どもがいきなり


襲ってきやがってな。なかなか手ごわかったが返り討ちにした。


あんたの躾が悪いせいだぜ? んで、『お前たちは誰だ?』って


聞いたら『お前たちでは、あの人には勝てん』とか言って、


1人が舌を噛み切りやがった。


1人死んだから、生きてるのは3人だよ。


さっぱり意味がわからんかったが、なんかちょっと興味が湧いてな。


親分が帰ってくるのを、ここで待ってたのさ」





『鴉』は眉を寄せた。幸太郎が嘘をついているのはわかる。



だが、どこまでが嘘で、どこが真実かが判然としない。





(いで立ち、雰囲気から『騎士』や『兵士』ではない。


『冒険者』というのは真実だろう。


しかし、『いきなり襲い掛かった』というのは嘘としか思えない。


自分の部下はそんな馬鹿ではない・・・。


しかし一方で『舌を嚙み切った』と言っている。


部下が捕まったらどんな行動をするか


『見たことがある』ような言い方だ)





『鴉』はさらに眉をひそめた。





(嫌な相手だな・・・)





『鴉』は幸太郎に対し、襲ってきた長身の女以上の



警戒が必要と判断した。



何より、これだけしゃべっているのに、肝心な部分、



『グリーン辺境伯に雇われているのか、無関係か』が



靄がかかったようにはっきりしない。



幸太郎は要の部分を隠したまま、虚実織り交ぜて



スラスラ話しているのだ。とんだサイコ野郎である。





「俺は幸太郎。あんたの名は?」





幸太郎の質問に『鴉』は一瞬、強い反応を示す。



幸太郎には強く印象に残った。





「コウタロウ・・・か。残念だが、お前たちに名乗る名は無い。


周囲からは『鴉』とだけ呼ばれている。それで勘弁してくれ。


正直なところ、俺はお前が恐ろしい。話しているだけで


お前のペースに巻き込まれそうだ。


・・・お前たち・・・相当強いのだろう?


もう、お互いの事情は知らぬままでよかろう。


かわいそうだが、ここで死んでもらう」





『鴉』は首飾りを取りはずし、掲げた。





「我が声に応えよ! 闇からの来訪者よ!」





首飾りの宝石が妖しく輝く。すると、『鴉』の隣の地面から



長身の男が浮き上がってきた。幸太郎が『鑑定』を使用する。





(間違いない、こいつが『イビル・アイズ』だ・・・。


HPは42、MPは195、悪魔の眷属か。


ええ? 元は人間だったって? これで・・・?)





『イビル・アイズ』は身長2メートル50センチくらい。



ひょろっとした瘦身の男のように見えるが・・・顔がない。



手足もアンバランスに長く、気味が悪い。



顔の真ん中に3つ大きな目が並んでいる。



全て『邪眼』の力を有する。



どの邪眼の効果も恐ろしいが、一番危険なのは『即死』だろう。



事前に情報を得ていなければ、チート級の能力を持っていない限り、



絶対に負ける。





(なんかスレンダーマンとビホルダーを足して2で割ったような


奴だなあ・・・。もやしみたいに細い・・・。


まあ、作戦通りなら問題ない相手だ・・・)





幸太郎は作戦を続行する。もちろん、エンリイの奇襲で倒せていれば



良かったが、高望みは危険だ。



幸太郎は予定通り険しい表情を浮かべ、叫んだ。





「なんだと・・・? まさか!? 


そいつは『イビル・アイズ』か!?


いかん! 2人とも下がれ! 小屋の中へ逃げろ!」










(C)雨男 2024/01/08 ALL RIGHTS RESERVED






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