熱い涙
驚いたのは幸太郎自身だった。なんの魔法も発動させた覚えがない。
そもそも『光の玉が2つ自分の体から飛び出した』
これが何を意味するのか、何なのか全くわからなかった。
幸太郎とカルタスがあっけにとられて、その光の玉を眺めていると
その光の玉は人の形になっていった。カルタスが叫ぶ。
「エミール殿下!! マーガレット様!!」
カルタスは直ちに岩から降りると膝をついて平伏した。
「このお二人が!?」
あわてて幸太郎も膝をついた。
エミールは切れ長の目をした気品のある顔立ちをしていた。
マーガレットは少しそばかすのある無邪気な顔立ちをしている。
「エミール殿下、マーガレット様、我々護衛の力が至らず・・・」
カルタスは必死に言葉をつむごうとしたが、声が詰まった。
「よい。カルタスたちが身命を賭して戦ってくれたこと、
私たちはよくわかっている。よくがんばってくれた。感謝している。
本当によくがんばってくれた。大義である」
「な、なんと、なんと、も、もったいない・・・お言葉・・・」
カルタスは泣いていた。ガイコツの目から涙が流れていた。
確かに涙が流れていたのだ。熱い涙が。
(C)雨男 2021/11/07 ALL RIGHTS RESERVED




