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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ
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領主からの依頼 4


 かつてバーバ・ヤーガは、母のバーバ・ババと共に各地を放浪する



流れ者の魔導士だった。彼女はローゼンラント王国に来た時、



エリザベーテと出会う。そして2人は親友になったのだ。



かつて、これほど気の合う人間はいなかった、と言うほどに。





母のバーバ・ババは退魔師のように、各地の怪異を祓うことを



生業としていた。バーバ・ババは、放浪して回るだけでロクに



友人もいない娘を不憫に思った。そして、バーバ・ヤーガを



ローゼンラント王国に預け、1人で次の土地へ旅立ったのだ。





バーバ・ヤーガはその美貌と、常識外れの魔力で、



すぐに周辺国にまでも名声が鳴り響く。





これは幸太郎のいた元の地球でも同じなのだが、



『強い』という噂を聞けば『どうせ大したことない』と



イキり顔でケンカを売ってくる者が必ずいる。



それこそ、ひっきりなしに次から次へと挑戦者が現れた。





当初バーバ・ヤーガは『無駄な争いはしたくない』と戦いを避けていた。



しかし、ケンカを売ってくる者があまりに多いので、



やむなく『手加減』して挑戦を受けることにした。





それが裏目に出たのだ。





手加減してもらったことが理解できず、『やっぱり大したことねえ』と



言い出す者がどんどん出てきた。全員あっさり負けたくせに。





そして『図に乗った』挑戦者が激増した。



バーバ・ヤーガに『俺の女になれ』という者は、まだいい方で、



ついに王族であるエリザベーテにも下品な言葉で



迷惑をかける奴まで湧いてきたのだ。





バーバ・ヤーガは自分が間違っていたことを悟った。



痛みを伴わねば、理解できぬ輩もいるのだ。例え上から目線と



いわれようと、相手の理解できるレベルの話をしないと、



説得や交渉は意味を持たない。





『もはや、情けはかけぬ』





そう宣言したバーバ・ヤーガは、以後、ケンカを売ってくる者を



皆殺しにした。バーバ・ヤーガに挑んだ者は全て、1人の例外も無く死んだ。








「・・・と、こんな経緯で『バーバ・ヤーガと戦った者は


必ず死ぬ』って話が伝説になったの。バーバ・ヤーガと戦った人には


明日は来ない・・・全員『二度と明けない夜に抱かれる』ってね。


それで、彼女は夜の入り口・・・宵闇の先駆け・・・


『黄昏』と呼ばれるようになったのよ。


『黄昏の魔女』と対峙することは、夜の深淵へ足を踏み入れる行い。


『黄昏の魔女』にケンカを売ることは、人生の夕暮れを


迎えるに等しいと恐れられた。


バーバ・ヤーガの名は、魔導士の間では、まさに伝説。


マジックアカデミーでも、幾度となく聞いた名前よ。


『ストーム・ルーラー』ほどではないにせよ、


二つ名を持つ魔導士なんて、滅多にいないもの。


まあ、『自称』ならウジャウジャいるんだけど・・・。


ローゼンラント王国が崩壊した時の混乱の最中、消息不明になったと


いう話で伝説は終わりだった・・・アルカ大森林に住んでいたとはね」





(バーバ・ヤーガさんの『黄昏の魔女』って通り名は、


そんな恐ろしい経緯でつけられたものだったんだ・・・。


怖っわ・・・)





幸太郎は、初めて聞く『通り名の真相』に驚愕した。



まあ、幸太郎も人のことは言えないが。





「でも、これで納得いったわ。あ、あの、実はね、今の回復魔法、


正直言うと、まるで構造が理解できなかったの。常識外れもいいとこの魔法。


幸太郎、あなたスゴイのね。これなら、もしかしてお嬢様の病状も・・・」





「それは、やってみないと分からないです。それと、私も


正直に白状しますと、師匠とドライアード様の魔法実験で


『陽光の癒し』は体に埋め込まれたものなんです。


私も使用できるだけで、構造はさっぱりわかりません。いや、お恥ずかしい」





「魔法を体に埋め込む??? 何それ?


さすが『黄昏の魔女』・・・。


それにドライアードとも親交があるのね。ちょっと見くびってたわ、


ごめん」





「では、幸太郎君の魔法ならお嬢様は治るかもしれないのだな」





フランクも期待を込めた目で幸太郎を見るようになった。





「先ほども申しましたが、それはわかりません」





幸太郎はそう言ったが、『結局のところ無駄に終わる』ことは想像がついていた。



ただし、別の意味で価値がある。幸太郎はそちらの方が知りたい。





「シャオレイさん、呪いについては何かわかりましたか?」





シャオレイは少し溜息をついた後、わかっていることを説明した。





「現状、お手上げね。魔力以外にも得体の知れない力が感じられるって


ことくらいしか、わからないの。『回復魔法』や『治癒の奇跡』が


少し効果があるのは、病状を引き起こしている力の内、


魔力の方を『乱して』いるからだと思う。


だから、わずか数秒で乱れが消えて、元に戻ってしまう。


結局、焼け石に水・・・。呪いの解除方法も見当がつかないわ」





「『結界』や『魔法解除』は試しましたか?」





「『結界』は試してないけど、『魔法解除』はやってみた。


回復魔法と同じ結果に終わったわ。でも、だからこそ


『魔力の方を乱している』という考えに確信が持てた。


『結界』は試していないわ。だって、結界は外部の魔力とか攻撃を


遮断する魔法よ? お嬢様には既に呪いがかかっているのに、


意味なんてあるの?」





幸太郎はパズルのピースが1つ、はまった気がした。










(C)雨男 2023/12/07 ALL RIGHTS RESERVED






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