逃げる算段
「そろそろ後始末の後続部隊がやってくる。手短にいこう。
あと俺たちの仕事はエミール殿下とマーガレット様の婚約指輪を
王妃殿下とコルトの馬鹿に届けることだけだ」
「王宮までもどったら袋のネズミじゃねえか?」
「俺もそう思う。だから俺たちは『指輪を届ける』と言ってここを出る。
だが、ダブリンのそばの小さな町で指輪を届ける役目を
『黒い商人』に委託する」
「ああ、俺たちの物資を調達する役目のあの商人か」
「あいつは中身を知らないまま指輪の入った封筒を王妃殿下に届けるだろう。
その時間を使って俺たちはこの国を出る」
「どこへ逃げる? 南西の『ジャンバ王国』か、
南東の『ラーテル魔導連邦』か・・・。
『アルカ大森林』って手もあるが、あそこはダークエルフと亜人しかいねえぞ」
「南東の『ラーテル魔導連邦』だ。『ホーンズ山脈群』の
東側に炎龍のなわばりがあるせいで、事実上、海沿いの街道しか道がない。
だが、逆に回り込まれる心配もない。
追手もこの道しかないからすぐにわかる。
国境さえ越えてしまえばバルド王国は
外交問題になるから手が出ない。あとは大丈夫。
すぐに王国内部では内輪もめが始まってボロボロさ」
「おっし、決まりだ。準備しよう。死体の金も持っていきたいが・・・。
やめたほうがいいな。後始末のやつらに感づかれる恐れがある」
「そうだな。『ろく』、『きゅう』、金品には手を出すな。
今からは一切言葉は無しで準備を始めよう」
(C)雨男 2021/11/07 ALL RIGHTS RESERVED




