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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ
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 翌日、昼頃まで幸太郎たちは河原でのんびりしていた。



幸太郎は趣味の釣りをする。



釣り道具はダークエルフの村で売っていた。





幸太郎は釣りをするときはトレードマークの『がまかつ』の帽子を



被っていたが、異世界には持ってきていない。





この世界の釣り具はまだまだ未発達。



『感じしびれるダイワの釣り具~』なんて高級なものはないのだ。



ふつうの延べ竿、虫の繭から作った糸。シンプルである。





「ふふふ、『ハゼ釣りみっちゃん』と呼ばれた俺の実力を見せてやろう」





幸太郎は基本的にはハゼやキス、カサゴ、アジばかり釣ってる男だった。



ブラックバスなどハイカラなものには手を出さない。地味。





「きたきたあ!」





「私もヒット!」





「・・・」





3人で釣りを始めたが、モコとエンリイの方が圧倒的にうまい。



モコは勘が良い。まるで水の中が見えているような竿さばき。



エンリイは魔猿族の特性、体の柔らかさを発揮している。



魚の反撃を竿だけでなく体全体で吸収している。



2人とも大したものだ。





幸太郎?・・・幸太郎は普通の日本人だ。ちょぼちょぼと釣っている。



まあ、それでも楽しいものだ。釣りさえ憶えていれば、



人生はどこでも楽しくなる。





(それにしても・・・鯉よ・・・お前、やっぱり


こっちの世界にもいたんか・・・なんか懐かしいわ・・・)





昼まで3人は釣りを楽しむ。釣った魚は全てリリースした。



食べる目的ではなかったからだ。



食料なら『マジックボックス』にまだまだ山ほど残っている。








昼食が済んだところで行動開始。目指すはカーレだ。








カーレ北門に到着。通行料はユタと同じく1人金貨1枚。



考えてみれば、通行料はかなり高額と言える。



これは町の安全のために必要な政策なのだろう。



怪しい人間は簡単には出入りできないように



わざとハードルを高くしているのだ。



日本だったら『人道的に問題がある』とか非難されるかもしれない。



だが、ここは日本ではない。





盗賊などが簡単に出入りできるようだと、市民の安全も守れないし、



犯罪が多発すれば町の警備隊のコストがかさむ。



例えば喰い詰め者などが集まる地域で犯罪が多発すると、



その地域からまともな人たちが『脱出』してしまう。



すると、その地域はさらに治安が悪化し、次第に警備隊が



うかつに手を出せなくなっていく。



そしてどんどん病巣のように犯罪多発地域が広がり、



まともな人々は町そのものを捨て、安全な町・国へ逃げていくだろう。



税収が激減した町は、もう対抗できるだけの体力が無い。



いずれは『全身を乗っ取られる』ことになるのは目に見えている。



その時になって『こんなハズでは』と嘆いても手遅れだ。



現にアメリカなどへ行くと、町全体を隔離してあって、



町へ入るのに検問所を通過する必要がある所はあるのだ。



幸太郎はハワイで実際に見たことがある。





そうなりたくないと言っても、最初から軍備を増やし、税金を上げれば、



市民の怒りは領主や外からやって来る人々へ向けられる事になる。



結局、この世界では『高い通行料』程度が妥協点ということなのだろう。



もちろん通行料を払えば全員通過できるわけでもなく、



門番が『怪しい』と思えば、独断で『通行を禁止』できる。



これは別に横暴でもなんでもない。



なぜなら、何かあった時には自分が剣を抜き、



命を懸けて戦う義務があるのだから。



『その戦いで自分が死んだら』・・・?



それは『通すんじゃなかった。自分がバカだった』と、



あの世で悔やむしかない。



文句は生きてるうちにしか言えないのだ。



『何か起きてから』の対処はコストばかり高くて採算が合わない。



『未然に防ぐ』ほうが圧倒的に安い。



何より・・・死んだ人間は戻って来ないのだ。





政治と戦争は地続きの部分がある。嘘が必要な場面があることと、



『それをしたら、ソイツは死ぬ』とわかっていても、



政治として決断しなくてはならない時があることだ。



そもそも戦争自体が外交の一形態だから仕方ない。



『何を守るために戦っているか?』を



明確に、そして冷酷に認識する必要がある。



『嫌われる』『文句を言われる』などというのは、



その『無邪気な観客』が生きてたらね・・・という程度の話でしかない。



『無邪気な観客』は自分の首から盛大に血が噴き出し始めた時に、



初めて『俺は観客なのに! 話が違うじゃないか!』と思うだろう。



だが、結局、無邪気な観客は『私が間違ってました』と



口に出して言ってくれることは無い。



話したくとも冷たくなっているだろうから。








幸太郎と違って、エンリイの通行料は銀貨1枚だった。



これはC級ギルドカードの威力である。信用が全然違う。





幸太郎たちは番兵にギブルスの店を聞いて、そこへ向かった。





ギブルスの店はカーレでも複数ある。



一番近い香辛料の店に行ってみた。



すると、アルカ大森林でファルネーゼ、イネスの警護についていた



武装メイドさんがいた。見た目は普通のメイドさん。





「少々お待ちください」





そう言い残すと、メイドさんはどこかへ。そして、ギブルスが走って来た。





「よーう、幸太郎! 準備はできたようじゃの? ひっひ。


今、ミーバイをユタへ走らせた。馬じゃから大して時間はかからん。


もう冒険者ギルドへ依頼を出してもいいぞ」





「いえ、まずはロイコークたちの動向を」





「おお、そうじゃったな。都合のいい事に、ロイコークたちは


今日、聖騎士として教会の集まりに行っておる。町からは出ておらん」





「それは手短に済みそうですね。


じゃあ、ロイコークたちが河原へ来るのは


意外と早めになりますかね?」





「いや、それはやはり夕方じゃろうて。


奴らも冒険者が追ってくるのは困るからのう。


夕方になってから、大急ぎでピートス川の川辺を


探して走ってくるはずじゃ。焚火でもしておれば、


あっちが見つけてくれるじゃろ」





「わかりました。では準備万端、罠を張って待ちますよ。


いろいろお手を煩わせて申し訳ありません。恩に着ます」





「ひっひっひ、何を言っておる。あれほど、いろいろ珍しいものが見れて、


さらに珍しい葉っぱまで大量に手に入ったのじゃ。


恩に着るのはこっちじゃろう。気にするでない」





「ありがとうございます。では、早速行ってきます。


・・・ではエンリイ、ここからは頼むよ」





「おっけー。任せてよ幸太郎サン!」





幸太郎たちはギブルスに手を振って、冒険者ギルドへ向かった。



冒険者ギルドでロイコークたちの首に賞金を懸けるためだ。








ギブルスの店を出る前に、エンリイは棍を戦闘用の長さにした。



どうも、『武力がある』ことを見せる必要があるらしい。





エンリイを先頭に冒険者ギルドへ入る。



中には食堂が併設されており、何組かの冒険者パーティーがいた。





やはり、何人かはジロリと幸太郎たちを見る。そして





『へえ~、すっげえいい女じゃねえか。しかも2人だぜ』



『あんな、ひょろっちい男にゃあ、もったいねえ、くっくっく』





などとつぶやくのが聞こえる。



と言うか、聞こえるように言っているのだろう。



だが、エンリイが棍を『どんっ!』と床へ打ち付けると静かになった。



『同業者』だと理解したらしい。





(なるほど。口で説明するよか早い・・・)










(C)雨男 2023/08/26 ALL RIGHTS RESERVED






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