表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 5
703/1074

大歓声


地上では集まった人々が、ダンジョン入り口のほうを見ながら



黙ったまま立ち尽くしていた。



ダンジョンが崩壊する時の振動はどんどん大きくなっていく。





だが、突如、今までと全く異なる『巨大な振動』が起きた。



さっきまでとは明らかに力の規模が違う。



とてつもなく巨大な『何か』の力。





『一瞬』・・・その巨大な振動は一瞬の事。



巨大な力の正体は、見守る人々の前に大いなる威厳となって姿を現した。





それは光。





光は大地を割り、土砂を巻き上げ、



地の底から星の海へ向かって、輝く柱となり顕現した。





誰もが目を奪われた。それはあまりにも美しい光の柱。



そして、さらに辺り一面が真っ白になるほどの輝きがあふれた後、



何倍もの巨大な銀色の橋となり、大地を巻き上げ、岩を吹き飛ばし、



満月の方へと伸びていった。








それはまるで、今まで地上へ落ちた流星が集まり、


空へ帰っていくかのようだった。





それはまるで、今までの死者の魂が歌いながら


天へ昇っていくかのようだった。





それはまるで、今まで人々の流した涙が宇宙へ還り、


星となるようだった。








ある者はその銀色の橋に人々を慈しむ神の慈悲を見た。





ある者はその銀色の橋にあまねく悪を打ち砕く神威を見た。





ある者はその銀色の橋に果て無き夢への道標を見た。








『美しい』・・・その場にいた人々は、同じ感動を共有した。








最初に我に返ったのはジュリアだった。飛んでくる岩や土が見えたからだ。



ジュリアは右手を天にかざすと、超巨大な魔法障壁を展開。人々を守った。





ギブルスは銀色の橋を見つめたまま、うめくように言葉を絞り出す。





「まさか・・・これは幸太郎の『神虹』か・・・?」





バーバ・ヤーガも一言だけ言うのがやっとだ。





「神の・・・虹・・・。これは『神の魔法』か・・・」








光の柱は細くなり、幻想的な余韻を残しつつ、消えていった。



誰も言葉は無い。いったい何をしゃべればいいのだろう。



誰もがその神秘的な美しさに心奪われた。





『神虹』は宇宙で試し撃ちした時より、ずっと長い時間放たれていた。



幸太郎の祈りのせいかもしれない。だが、それでも時間としては



せいぜい十数秒といったところ。短い時間だった。





しかし、人々はその何倍もの時間、動かなかった。



降ってくる岩や土はジュリアの魔法障壁で防がれているが、



みんないつまでも星空を見つめていた。








土煙が収まってきたころ、ポメラは人の叫ぶ声をかすかに聞いた。





「こ、この声・・・。モコ! ジャンジャックさん、


グレゴリオさん、エンリイさんも・・・みんな無事なんだわ!」





バスキーにも聞こえた。もちろん、誰の声まではとても判別できない。



小狼族は白狼族よりも聴力がいい。バスキーが集まっている全員に



大声で伝えた。





「生きているぞ! 全員生きているぞ!! まだ最下層だが、無事だ!」





その瞬間、爆発したように大歓声があがった。



誰もが、その生存を諦めていただけに、奇跡の大逆転に喜びがあふれた。





皆が大穴の開いたダンジョンの方へ走り出そうとした時、



クロブー長老があわててそれを止めた。





「待て!! 待つのじゃ! 大穴の縁が崩れたら、


今度こそ英雄たちは生き埋めになってしまうぞ! 


今こそ救出の知恵を出し合う時じゃ!!」





その通り。大きな穴は開いている。が。それは下から火山のように



吹き飛ばしただけで穴の縁も、斜面もグズグズに緩んでいる。



ただロープを投げただけでは、登る途中で土砂崩れに飲み込まれて



しまうだろう。





慎重な対応が必要だ。しかし、一方で急ぐ必要もある。



おそらく時間が経てばたつほど、崩れる可能性が増える。



雨など降ろうものなら、まず助からない。





相談が始まった。今度は先ほどと打って変わって、みんな明るい表情だ。



ここで先ほどから何か話し合っていたエドガンとヒガンが



『ずいっ』と前に出て提案した。





「ここは俺たちエドヒガン・ブラザーズに任せてもらおうかい!」










(C)雨男 2023/07/06 ALL RIGHTS RESERVED






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ