魂が砕ける
ずずっとお茶をすすると、幸太郎はなんとなく落ち着いた気分になった。
我ながらゲンキンなものだとあきれる。
「理由はほんとに知らないの。こちらの要望をアマテラス先輩に伝えて、
先輩に選んでもらったんだけど・・・。あんたを選んだ理由を聞いたら
『うふふ』ですって」
アステラは楽しそうに笑った。
「はあ・・・まあ、それはいいです」幸太郎は溜息をついて続けた。
「それで、なんでネクロマンサーなんですか? いや、
まずはアマテラス様への要望ってなんだったんですか?」
「それはみんな繋がってる話だから順番に説明するわね。
発端はこちらの世界で困ったことが起きたからなの」
幸太郎はお茶をすすった。
「こっちの世界は科学より魔法。時代はそっちの地球の
中世ヨーロッパみたいな感じが一番近いかしら?
あんたは色々混じってると感じると思うけど。
そっちでは姿を消したエルフやドワーフ、魔物がまだまだいる世界ね」
(おおう!やはり剣と魔法のファンタジーなのか!)幸太郎は鼻をふくらませた。
「お気に召したかしら? でも、そっちの地球でもあったように、こちらも
争いが絶えなくて死というものが身近な時代よ・・・」
アステラはちょっと溜息をついた。かわいい。
「それでね・・・。無残な最期を迎えた人や、非業の死を遂げた人の
魂が地上をさまよっているのよ・・・。魂の世界、冥界に戻ってこないの。
それが増える一方で自然に任せておくわけにはいかなくなってきたのよ・・・」
「普通は放っておくものなんですか?」
「つらいけど、それも本人の勉強のひとつなの。
自ら魂の世界に戻ってくるのもね。地上をさまよっていると、
個人で差はあるけど400年ほどで、魂は分解して数匹の動物や鳥、
ひどいと数百匹の虫なんかに砕けて分かれてしまうわ」
こわ! 幸太郎は寒気がした。
(C)雨男 2021/10/30 ALL RIGHTS RESERVED