ドラゴンタートル 5
しかし、ドラゴンタートルを倒すのに必要な情報は集まった。
チャンスは一度きり。失敗は許されないが、
ギリギリ全戦力を投入して倒せるはずだ。
「臆するな、幸太郎殿! どのみち時間はかけられんのだ!」
「・・・わかった。決着を付けよう!」
「俺が気が付いた時にはドラゴンタートルは『魔石』に
なってるはずだな?」
「ああ、約束する」
幸太郎は全員に伝達する。検証は終わり。情報は得られた。
ドラゴンタートルを倒すことは可能。
準備が整い次第、ドラゴンタートルと決着をつける、と。
幸太郎は『マジックポーション』を3本取り出し、一気に飲んだ。
苦い。ものすごく苦い。だが、これで『陽光』の回復と合わせて
8体のスケルトンを新たに召喚できる。
これは斬り落としたドラゴンタートルの頭を抑えるための軍勢だ。
スケルトンの剣ではちびエンリイほどのリーチは無い。
パワーもちびエンリイに劣るだろう。
おそらく8体のうち何体かは捕まって噛み砕かれてしまうはずだ。
しかし、ゴーストでは『ドラゴニック・バリア』で弾かれる。
ゾンビでは武器を与えてもスピードが足りない。
スケルトンしか無理なのだ。
そして、ジャンジャックの『おそらく首だけでも
ブレスは使えるはず』という予想は正しいだろうと幸太郎も思っている。
何しろ、ちびエンリイが相手をしている、斬り落とされた
ドラゴンタートルの頭は、全く弱る気配がない。
放っておくわけにはいかないのだ。
ドラゴンタートルを倒すときには、合計で3つの頭が転がる計算になる。
そして、モコとエンリイで1本、ジャンジャックが1本、
それぞれ首の再生を妨害し続ける必要があるのだ。
黙っていたら、あっという間に頭が合計5つになるだろう。冗談じゃない。
モコとエンリイが再生を妨害し続けている首は、
ついに、上あご付け根あたりまで出現していた。
モコとエンリイは息の合った連続攻撃で、まるで電動ヤスリのように
肉を削り飛ばしている。
が、再生スピードはもうそれを圧倒的に上回る速さだ。
「モコ、エンリイ、俺と交代だ! 一度幸太郎殿のところへ戻れ!
『陽光の癒し』をかけてもらうんだ!」
グレゴリオがモコ、エンリイと交代した。
グレゴリオなら、再生した頭もハンマー1発で殴り飛ばせる。
エンリイだってC級冒険者だが、
やはり『ドラゴン』を相手にするにはパワーが足りない。
いや、ドラゴンのほうがおかしいのだ。
そして、B級冒険者も十分バケモノだ。
ドラゴンタートルの後方へ戻った幸太郎の所へ、
モコとエンリイが走ってくる。まずは回復しておかなくては。
しかし、一瞬、幸太郎がヒヤリとすることがあった。
ドラゴンタートルの尻尾がモコとエンリイを狙ったのだ。
(しまった! まだそれがあった!)
ムチ・・・というより、まるっきり大木だが、しなる尻尾がうなりを上げる。
モコとエンリイの胸のあたりへ高速で尻尾が飛んでくる。
思わず幸太郎は身をすくめた。
だが、この2人だって充分強いのだ。
モコはふわりと前方宙返り。
エンリイは美しい側方宙返りで尻尾を飛び越え、躱した。
2人とも素晴らしい速さと高度。幸太郎は思わず見とれてしまった。
(2人ともなんて美しい・・・)
しかし感心してる場合ではない。
まずは2人に『陽光の癒し』をかけ、疲労回復させる。
次は本番、ドラゴンタートルを倒すまでは、
もう絶対に手を止めるわけにはいかないからだ。
そして、いよいよ幸太郎は切り札を呼ぶ。
「来い、『冥界門』・・・!」
幸太郎は『冥界門』を通じてカルタスたちに作戦を伝える。
この作戦を実行する上でカルタスたちの力は必要不可欠だ。
特に、最初の要はカルタスの4人の部下だ。検証はしていないが、
幸太郎には容易に予測できることがあった。
それをさせないために、どうしてもこの4人の力が必要になる。
それができないと作戦は実行に移せないのだ。
そして、今行った『検証』で、何が『それ』のトリガーになるかも
明らかになった。間違いなく、2つの頭を両方斬り落とした時だ。
絶対に先回りして、『それ』を潰しておく必要があった。
作戦の伝達は終わった。準備完了。あとは実行するだけだ。
(大丈夫・・・これで倒せるはずだ。大丈夫、大丈夫だ・・・)
幸太郎は必死に自分に言い聞かせた。
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