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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 5
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創造主の権限で


 幸太郎は感じていた『違和感』のせいで、ずっと悩み、警戒を続けていた。



『いつ、ルール外の攻撃がくるかわからない』・・・と。



それは『ダンジョン・クイーン』と



『悪魔ナイトメア』の意志の違いだったのだ。





あくまで『ルールの範囲内』でしか考えない『ダンジョン・クイーン』





最初から『ルールを意に介さない』考え方をする、『悪魔ナイトメア』・・・。





この両者の意識の違いが幸太郎を混乱させたのだ。



『ちぐはぐで行動に一貫性が無い気がする』と。





「俺は『ダンジョン・クイーン』ってものの正体がおおよそ理解できたよ。


ナイトメアが言った『ある程度フォーマットが決まっている』、


『こんな所からしか入れない』、『改善が必要』・・・。


これらから推測すると、仮に『ダンジョン・クイーン』を魔物とした場合、


ナイトメアの他に『ダンジョン・クイーン』の幼体を生み出す


悪魔がいるのだろう。ナイトメアはその幼体を受け取って、育てたわけだ。


『ダンジョン・クイーン』の幼体は世界を飛び回り、お宝を集め、


魔物をコピーしてデータを集める。そしてダンジョンを生み出すに十分な


用意が整うと、ナイトメアを創造主として、指示された場所に


ダンジョンを作る・・・。


ただ、『ダンジョン・クイーン』の行動と


ナイトメアの言動から察するに、ダンジョンは人を食うことだけを


目的としているわけではないのだろう。


本当の目的は謎のままだが、悪魔は何か別の、本当の目的を持っている」





「作られた存在・・・。決められたルールを破れない存在ってことは・・・。


つまり『隷属の首輪』を付けられた奴隷みたいな存在ってことか?」





「それで合ってると思う。悪魔は『ダンジョン・クイーン』という


魔物を生み出し、それに『ルールを順守する』っていう


強制をかけているようなもんかな」





この世界にはロボットというものが無いので、ちょっと説明しづらい。





「でも、ナイトメアはそのルールに縛られない・・・。


だからコカトリスやカース・ファントム、最後には自らが


飛び入りしてきたってことでしょうか、ご主人様・・・?」





「ああ、コカトリスやカース・ファントム、吸血鬼は、


ナイトメアが用意しておいたダンジョンを守るための護衛だったんだ。


正直、他のダンジョンと違って、どうしてそこまでして、


このダンジョンを守りたかったのかは推測できないけどね。


ともかく、ナイトメアはこのダンジョンを絶対に破壊させたくなかった。


そこで創造主の権限でルール外ではあるが用意していたんだな。


ところが、コカトリスもカース・ファントムも吸血鬼までも突破して、


ついに地下14階まで下りてきたパーティーがいると


『ダンジョン・クイーン』から報告が入る。


ナイトメアは慌てた。


カース・ファントムを倒せる奴がいるとは思わなかったから、


さすがにもう何も用意していない。


それで仕方なく創造主の権限で自分がダンジョンへ入り、


俺たちを直接殺そうとしたってわけさ」





幸太郎はふと、『そんなバックドア作ってなければ



死なずに済んだかもな』と考えた。



裏目に出るということは、大概悲惨な結果になる。








「それにしても・・・幸太郎サンはすごいね・・・。


ダンジョンに入ってから『違和感』を感じて、


ずっとそれについて考え続けていたなんて・・・。


『安全地帯』を毎回、時計塔で封鎖している理由なんて、


まさに驚きの一言に尽きるよ・・・ボクじゃ絶対思いつかないと思う」





「いや、俺が疑り深いだけさ」





幸太郎は苦笑して言った。おっさんは細かい事が気になったりする生物だ。





「確かにこれはエンリイの言う通りだぜ。俺たちは『安全地帯』を


『そーゆーもんだ』って感覚しか持ってなかったからな・・・。


『なぜ安全地帯で襲って来ないのか?』なんて、


深く考えたこともなかったぜ」





「やれやれ、これはギルドへの報告書が、ちょっと分厚くなりそうだな」





グレゴリオはそう言って笑った。





「グレゴリオ殿、俺のことは書かないでくれよ?」





「幸太郎殿は、本当に欲が無いな。ダンジョン破壊に、悪魔の討伐、


これだけのダンジョンについての新しい情報と発見。


中でも悪魔を討伐したなんて、歴史上初めてだろう。


未だかつて聞いたことが無い。


B級昇格の資格充分だし、仮に『B級冒険者の証言だけで、


悪魔を倒した証拠が無い』と言われようとも、


飛び級でC級昇格は確実だろうに」





「俺はアステラ様からの『御用』があるから、


目立たないほうが都合がいいんだよ」





「そうか・・・。まあ、わかった。そこは配慮しておこう。


ギルドへの報告は名前を出さずに適当に誤魔化しておく。


・・・ところで、俺も一つ聞きたいんだが、


ナイトメアが最後に使った、あの真っ黒い闇のようなもの・・・


あれはいったい何だったんだ? 


周囲が完全に黒一色になってしまったが?」





「あれは・・・。鑑定したら『憎悪の暗闇』と表示された。


致命傷を負ったナイトメアが俺たちを道連れにするつもりで使ったようだ。


本来なら、あれに呑まれると、


体も魂もナイトメアの一部になってしまうらしい。


俺たちに憑依するといった意味ではなく、


未来永劫、ナイトメアの一部として存在することになるようだ。


俺たちを吸収して、またどこかに転生する


つもりだったのかもしれないな」





「俺たちを吸収・・・」





グレゴリオもそれ以上言葉が出なかった。










(C)雨男 2023/05/13 ALL RIGHTS RESERVED






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