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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとダンジョン破壊 5
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闇に呑まれる光


 光が闇を受け止める。



ほんの一瞬だけ、光と闇は拮抗したように見えた。



だが、それは本当に一瞬だけだったのだ。





「うおおおおおおおおお!?」





幸太郎は一気に壁近くまで押し込まれた。



靴は悲鳴を上げ、滑った。靴の底が『ザリザリザリ』と音を立てるが



止まる気配が無い。





「幸太郎殿!」





グレゴリオの前まで押し込まれた幸太郎を、



グレゴリオのデカい手が背中と肩を掴んで受け止める。



そこでやっと止まった。





しかし、『止まった』と言っても、もう本当に壁際だ。



床には幸太郎の指示で壁際に集められたジャンジャック、



モコ、エンリイが並んで横たわっている。まだ意識が戻る気配は無い。





幸太郎は、『破魔の陽光』を2つ同時・・・両手で同時に発動させた。



とても1つだけでは抑えきれないと判断したのだ。



これは少し効果があった。



今まで、まるで自動車と力比べしているような



絶望感だったが、かなり軽くなった。





ただし、軽くなったと言っても、まるで押し返せる気がしない。



幸太郎の額から滝のような汗が流れだした。



グレゴリオに支えてもらっていなければ、



押し負けて壁に叩きつけられていたかもしれない。





「ぬ・・・く、ううう・・・」





幸太郎は必死に押し返そうとしてみた。



だが、どんなに力を入れてみても暗闇は全く下がらない。



重すぎる。



本来、幸太郎に支え切れる重さではないのだ。



現在、まがりなりにも暗闇を食い止めていられるのは、



明らかに『破魔の陽光』を2つ重ねて展開しているせいだろう。





押し合いでは勝てる見込みは無い。しかし、幸太郎にも勝算はあった。



ナイトメアのHPはゼロになっていたからだ。



致命傷・・・もうすぐ死ぬのだけは間違いない。



なんとか、ナイトメアが絶命するまで耐えきれば。





「!?」





幸太郎はぎょっとした。



気がついたのだ。よく見ると光のドームが段々小さくなっている。





(光が・・・『破魔の陽光』の光が・・・削られている!?)





そうだ。幸太郎は最初、『破魔の陽光』の



光の範囲が縮んでいることに気が付いた。



魔法の効果範囲がわずかずつではあるが、狭くなっている。



そして、幸太郎がよく見ると・・・光が端から『削られている』のだ。





『呪いの黒炎』と『破魔の陽光』の光は完全に反発した。





だが、『憎悪の暗闇』は光を・・・光を喰らいだしたのだ。





(そんな・・・そんな・・・。く、喰われていく・・・)





これはある意味仕方ないことかもしれない。



しょせん人間である幸太郎と、悪魔とでは魔力が違いすぎる。



例えるなら人間とブルドーザーが押し合っているようなもの。



しかも、今ナイトメアが使っているのは



もうすぐ絶命する自分の全てを載せた憎しみの塊なのだ。





『人類の上位者』・・・この言葉が再び幸太郎の脳裏に浮かんできた。





すでに幸太郎たちは壁際まで押し込まれ、



暗闇は部屋を埋め尽くしている。



『破魔の陽光』の光、わずか3メートルほどの光の半球体の中だけが、



元のダンジョンの姿をとどめている。



あとはもう、どこを見ても暗闇だけだ。



幸太郎が作った『陽光』もすでにほとんど闇に喰われた。





何も見えない。全てが闇に沈もうとしている。





そして、光はじりじりと小さくなりつつあった。





闇に呑まれていく。



全てが呑まれていく・・・。



闇に呑まれていく。



闇に呑まれていく。





全てが黒く、黒く、黒くなっていく・・・。










(C)雨男 2023/04/30 ALL RIGHTS RESERVED






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